{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.text}}
2025年2月26日に公表された「コーポレート・サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD:Corporate Sustainability Due Diligence Directive)」の簡素化を含むオムニバス法案は、12月9日のEU議会およびEU理事会の代表者間の暫定合意を経て、EU議会およびEU理事会が承認するにいたりました。この結果、2024年7月に発効したCSDDD1は、その適用が開始される前(当初は、2027年7月適用開始予定)に改正されることになります。今後、法文については、EUの官報で公開される見込みです。
今回の改正のポイントは以下のとおりです。適用開始の延期により準備期間に多少の余裕が生まれますが、他方、デューディリジェンスの法的枠組みに対して大きな修正はなく、CSDDDに対応し、デューディリジェンスの実施体制の整備、リスクアセスメントの実施を事前に進めておく必要性に変化はありません。
①適用企業対象の限定
②リスクアセスメント手法の明確化・簡素化
③適用開始時期の延期
図表1:改正の主なポイント
次節で上記の3点について企業に求められる対応を解説します。なお、上記ポイントを含む改正の詳細は、以下のとおりです。
図表2:改正の詳細
今回の改正で適用対象企業の基準3が、従業員1,000名超かつ全世界売上高4億5,000万ユーロ超から従業員5,000名超かつ全世界売上高15億ユーロ超に引き上げられました。これにより、当初の要件と比較して、EU域内の対象企業数が74.2%減少(6,272社→1,616社)し、日本国内の対象企業数が、57.7%減少(111社→47社)することになります4。このように直接、CSDDDの適用を受ける企業は大企業が中心となり、大幅に減少します。
しかし、取引先に対する契約上の保証(デューディリジェンスの実施を含む企業の行動規範の遵守などを取引先に求める義務)については大きな改正はされていないため、適用対象ではなくとも、直接対象となっている取引先からデューディリジェンスを求められることが十分に予想され、デューディリジェンス実施の必要性は、特に変わりません。
当初の要件では、リスクアセスメントとして、まず、バリューチェーンのマッピングが求められていました。マッピングについては定義がなされていなかったため、バリューチェーンをどのような情報をもとにどのような範囲・深度で明らかにしていくのかが明確でなく、また、直接の取引先を超えたバリューチェーンを明らかにすることは実務的にも困難と見られていました。今回の改正によりマッピングの概念は削除され、スコーピングという新しい考えが導入されました。これは、入手可能な情報からバリューチェーンにおける高リスク分野を特定するという考えであり、これによって高リスク分野と特定されたものについて、詳細アセスメント(in-depth assessment)を実施することとなります(図表3参照)。ただ、当初のオムニバス法案に含まれていた、詳細アセスメントの対象を自社のほか直接取引先に限定するといった提案は、最終的に採用されていません。したがって、高リスク分野については、直接取引先を超えたバリューチェーンについてもアセスメントが必要になります。その実施方法については規定されておらず、2027年7月に公表予定のガイダンス等を参考にしながら取り組みを進めることとなる見込みです。
なお、今回の改正により、従業員5,000名未満の取引先に対する情報提供の依頼については、他の手段で入手できない場合に限り依頼できるとされています。これにより、大企業が取引先に負担をかけて一方的に情報収集し、アセスメントの形式を整えるということがより難しくなり、大企業が自ら取引先に働きかけ、取引先によるデューディリジェンスを支援していくことになると思われます。
図表3:リスクアセスメントの実施イメージ
今回の改正により、適用開始時期が2029年7月になりました。当初のCSDDDは2027年7月に適用開始だったため、適用開始が2年間遅れることになり、CSDDD対応のための準備期間が延びることとなります。他方、CSDDDの大枠には変更がなく(図表4参照)、CSDDD対応のためには社内の各部門の連携を考えた体制構築が必要なうえ、取引先、労働組合など社外のステークホルダーの協力も必要となります。適用開始の延期によって多少の時間的な余裕が生まれるとはいえ、早期に準備を進めていく必要があります。
図表4:CSDDDの制度枠組み
CSDDDの適用開始は2年間延期されることとなりましたが、バリューチェーンを含めた企業の事業における人権や環境リスクに対する投資家や消費者の関心は依然として高く、取引先の事業を含めたバリューチェーンから生じる深刻な人権侵害や環境汚染は、ダイベストメント、不買運動にもつながりかねません。CSDDD適用の延期にかかわらず、デューディリジェンスの取り組み自体は引き続き進める必要があります。
改正されたCSDDDはよりリスクが高い分野に対して優先的にデューディリジェンスを実施するよう求めており、これは上述の投資家等の要請にも沿うものです。CSDDDの要件を踏まえてデューディリジェンスを進めることで、CSDDD対応だけでなく、投資家等への説明責任をも果たすものになると考えられます。
PwCは企業のこうした取り組みを支援するため、人権および環境デューディリジェンスの現状を把握し、CSDDDの要件対応に必要な対策の進捗を評価する簡易診断サービスを提供します。
企業が保有・公開している情報からCSDDDで求められるデューディリジェンスに関連する箇所を特定し、課題や改善点をまとめた簡易診断レポートを作成します。既存の社内文書や開示資料のレビューを通じて診断を行うため、約2〜3週間ほどで迅速な診断が提供可能です。
詳細はこちら
1 2024年7月に発効した当初のCSDDDについては、https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/business-and-human-rights/csddd-eu.htmlを参照ください。
2 法文では、バリューチェーンをchain of activitiesという語句で説明していますが、これはバリューチェーンの最下流(廃棄)を除いたバリューチェーンのほぼ全体を指しています。
3 図表2記載のロイヤルティ基準を除く。
4 適用対象基準のうちロイヤルティ基準は考慮に入れていません。企業情報データベースであるOrbis、SPEEDAを活用した分析となります。非上場企業や地域別の売上を公開していない企業は分析対象になっていません。また、最新の売上データ(2026年1月)および為替(1ユーロ=180円を想定)に基づき分析しており、2025年5月公表の「CSDDD適用への備え」(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2025/assets/pdf/csddd.pdf)の記載企業数とは異なることに留意ください。
{{item.text}}
{{item.text}}