スマートモビリティ総合研究所

なぜ産業アーキテクチャの考え方が必要なのか

  • 2025-09-10

背景となるモビリティ産業の変化

GXとDXの進展

現在、日本のモビリティ産業ではGX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)がそれぞれに進んでいます(図表1)。
GXは気候変動への対応などの社会的な要請を背景として、サステナビリティ・環境向上を目的とした変革です。具体的には、ZEV(Zero-Emission Vehicle)化や資源循環・ライフサイクルCN(Carbon Neutral)化などが含まれます。
DXはAI・デジタル技術を活用し、安全安心や利便性向上などのユーザーニーズ変化に対応したモビリティの提供を目的とした変革です。具体的には、クルマのSDV(Software Defined Vehicle)化や自動運転技術の開発・サービス化などが含まれます。

図表1:スマートモビリティ社会

スマートモビリティ社会[1] 

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GX・DXの先にあるスマートモビリティ社会で起こること

モビリティ領域のGX・DXが統合的に進むことで、産業の枠を超えた変革が期待され、この変革(モビリティ トランスフォーメーション:MX)を通してスマートモビリティ社会が実現されます。

スマートモビリティ社会では、モビリティの価値の比重は、クルマとしてのハードウェア自体の価値からシステム統合された体験価値へと広がっていきます。そうした流れの中でモビリティ産業は拡大し、新しいビジネスモデル、新しい競争が起こることも予想されます。

より高度なスマートモビリティ社会を実現するために

より高度なスマートモビリティ社会の実現に向けた課題

ではモビリティの価値が変化する中で、モビリティ産業で戦う各企業はどのように対応すべきでしょうか。
現在は各産業、各企業が個別に試行錯誤してモビリティ関連の製品・サービスを開発する傾向が強く、個々の製品・サービスが価値提供のミッションを達成することにフォーカスしています。このアプローチでは消費者に対し、統合され一貫性のある価値提供が難しいだけでなく、製品・サービスを効率的に生み出し、高度化し、スケール化していくことも困難になります。

個別最適から全体最適へ

こうした課題に対しては、産業全体で効率化・最適化を図ることが重要です。
例えば、米国や中国では、モビリティ産業の変革が先行しており、機能分化により新しい製品・サービスが急速に効率的に開発されています。必要なファンクションごとに業界をリードする企業が生まれ、これらを軸にコラボレーションが加速しているのです。例えば、半導体メーカーがAI/画像処理技術を生かしてインテリジェントドライブの開発環境を提供することで、その実装が加速しています。業界をまたいだコラボレーションも広がり、さらなる価値創出の実現につながります。
またインテリジェントコックピットにおいても、技術力に優れた企業の機能をプラットフォームとして産業内で共有することで、産業全体での効率的な開発を実現するとともに、クルマだけでなくスマ-トフォンなど他のIoT機器との共有によって、顧客価値を高めるケースも増えています。
これらの例に見られるように、産業全体で各企業がそれぞれ差別化された戦略ポジションを検討・実行すること、またそれを可能にする環境構築が今後の産業変革において重要となります。

産業アーキテクチャという考え方の重要性

日本のモビリティ産業アーキテクチャ

社会や消費者ニーズの変化に機敏に対応し付加価値を継続的に高めていくためには、個別の製品・サービスだけにフォーカスするのではなく、それを支える産業全体としての統合的な開発環境や価値提供基盤により、その開発や提供の効率化と高度化が求められます。そして、日本のモビリティ産業でこうした改革を実現するためには、その意識付けや環境構築が必要となります。
具体的には、モビリティのソフトウェア化へ柔軟に対応し、機能分化が進む中で各企業独自の戦略ポジショニングを取ると同時に、他のプレイヤーと密に連携してエコシステムを形成し、高度な製品・サービスを継続的かつスピーディに生み出していくことのできる環境の構築が求められます。そのためには各企業・事業に必要なファンクションとその提供主体を整理し、共通のプラットフォームのようなものを構想し実装していくことも不可欠です。
こうした動きの中では、将来の産業アーキテクチャをデザインし、多くのステークホルダーと構想・共有し、俯瞰して産業を捉えることが必要になります。その意味で、産業アーキテクチャデザインは今後の産業改革において重要性が高まっていくと考えられます。

産業アーキテクチャとは

産業アーキテクチャとは、目指す社会像に向けて産業間での連携や最適化を可能にするための全体像であり、将来の社会全体の見取り図としての役割があります。
社会やユーザーの要望・課題を解決するという「ミッション」を担う各サービスと、そのミッションを実現するための「ファンクション」、そしてミッション・ファンクションを支える「オペレーティングモデル」という3つの要素で整理すると、産業アーキテクチャは図表2のように表現できます。
日本のモビリティ領域における産業アーキテクチャは、ミッション、ファンクション、オペレーティングモデルのそれぞれで変化しつつありますが、各プレイヤーは今後のあるべき産業アーキテクチャの姿を見据えた戦略立案や事業推進をしていく必要があります。

PwCコンサルティングは、より豊かなスマートモビリティ社会が効率的に実現できるよう、支援していきます。

図表2:産業アーキテクチャ

スマートモビリティ社会[1] 

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執筆者

川原 英司

スペシャルアドバイザー, PwCコンサルティング合同会社

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小河 絵里香

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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小野木 洸介

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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丸山 晃靖

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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