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2022-08-26
国・地域の住民・産業にとって不可欠なエッセンシャルな事業でありながら、縮小均衡局面に入った事業に焦点を当て、その再成長のあり方について検討する連載「エッセンシャルビジネスの再興支援」では、これまで縮小均衡局面にある事業が取るべき打ち手について、多角的な視点から検討してきました。その中で、これら取り組みを自前の人材・設備・資金力で推進することに限界があり、自前主義から脱却することの重要性を示してきました。
本連載の最終回となる本稿では、多岐にわたるプレイヤーが連帯し、事業の中長期的な持続を支える構造をつくる「エコシステム経営」の思想に到達することの重要性について論じます。
縮小均衡局面にある業界では、なぜ自前主義にこだわるケースが多いのでしょうか。
まず、このような業界には、低利益を耐え忍び、顧客に貢献することを是とし、単に営利企業として利益追求することや、変化することを非とする傾向が見られます。こうした業界の風潮が顧客の期待値を固定化させ、この風潮に一層拍車がかかるという悪循環が生じています。
また、業界全体が低利益であることが標準化し、それが長年続くと、それが当たり前といった諦念の感情も生まれてきます。課題を放置してきたことへの自衛意識や、長年の諦念は経営層にまで浸透し、変革機運に対しての抵抗勢力となります。
何も変えないのであれば、自前で全て事足りてしまうのです。またそうしたカルチャーは、当該業界の課題解決に寄与し得る異業種プレイヤーを遠ざけてしまいます。
この風潮を変えるためには、企業はもとより、業界全体の考え方を変えていく必要があります。
例えば、古い業界には大抵の場合、業界団体が存在し、加盟企業に対して公平に恩恵をもたらすこと目的に活動しています。
そうした中で、業界が変革すべき局面にあることを業界団体に認知してもらい、加盟企業の変革を支援してもらうことが有効となります。支援の具体的なサービスラインナップとしては、研修の実施やガイドラインの整備の他、企業の課題に応じて支援機関を紹介することなどが想定できます。
このような活動を通じて業界全体の変革意欲が外部の団体に伝わると、サービス提供者が集まり始めます。例えば近年で言えば、美容・理容業界や木材業界といった、いわゆる「レガシー業界」を対象にDX支援を行うベンチャー企業に注目が集まっています。また大手通信ハイテク各社も中小企業や地方の地場産業のDXに商機を見出し、サービス提供体制を拡大しつつあります。金融機関は金利の低下と地域産業の縮小を受け、資金利益以外の収益獲得手段としてコンサルティングや事業承継などの事業にチャンスを見出しています。
業界が変革機運を示すことは、商機を模索する異業種プレイヤーを呼び寄せるのです。
縮小均衡局面の業界に蔓延する諦念を払拭するためには、縮小均衡局面にある事業が努力するだけでなく、川上・川下の企業、特に顧客側の企業が考えを改めることが重要です。
川下の顧客(企業)では近年、原材料調達から小売までのバリューチェーン全体を可視化し、環境問題や社会課題の解決に寄与することが求められています。また貧困のない公正な社会の実現と搾取撲滅の観点から、フェアトレードの考え方が世界規模で拡がりを見せています。
国内に目を向けると、近年は設備の老朽化から火事や事故が発生し、それに伴ってサプライチェーンが停止するといった事態が相次いでいます。その原因の1つには、値上げ・変化・投資を一切許容しないという、川下の顧客の厳格な姿勢があったと推察されます。
バリューチェーンがサステナブルであるためには、公正な取引がつながり、各社が営利企業として必要な利益を確保し、事業成長に向けてM&Aを行ったり、設備や人材に投資したりすることでアップデートし続けている状態であるべきだと考えられます。実際に半導体業界などではサステナブルなバリューチェーンを構築するため、低利益に陥っていた調達先に対し、一部の川下の顧客側企業が歩み寄るような事例が見られるようになってきました。
近年ではESGやSDGsの観点からバリューチェーンを可視化する動きが見られます。さらにその先には「バリューチェーンの公正性」の確保に向けた情報開示があるべきと考えます。「公正なバリューチェーンを構築できている企業こそが中長期的に存続し続ける」という価値観が、川下の顧客企業の姿勢を変容させ、また縮小均衡をもたらした前提をも変容させ、成長マインドをもたらすのではないでしょうか。
縮小均衡局面にある事業の多くは、国・地域の住民・産業に不可欠なエッセンシャルな事業です。しかしながらその多くは低利益に苦しみながらも、エッセンシャルであることを誇りとして、現状に耐え続けている状態にあります。これらの事業が以下の各段階を踏むことで持続可能な経営を実現し、私たちの生活を今後も支え続けてくれることを願ってやみません。
また、そのためには、私たちにもこれらの事業を忘れられた存在として放置するのではなく、光を当て続けることが求められます。
①当該事業の現在立ち位置評価
当該事業の企業価値に対する貢献度合いを正しく理解すること
②中長期的に取り得るポジショニングの明確化
当該事業の中長期的な方向性を見極め、戦略を確立すること
③マネジメント思想の転換・未来傾斜型経営の確立
中長期的視点をもって経営判断を行える経営体制を構築すること
④自社内の徹底改革
他プレイヤーと連携し、聖域なく自社の徹底的改革を進めること
⑤新たな成長機会への参画
新たな事業機会を模索し続けること
⑥業界再編の主導
業界を再編することで交渉力の強化を図ること
⑦共同・協業体制の構築
自前主義から脱却し、同業間・異業種・取引先との協調関係を構築すること
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