VUCA時代に、なぜEPMが求められるのか

不確実性に強い予実管理体制の構築へ

  • 2026-02-16

VUCA時代の経営課題とは

1. 激しい変動性への対応

環境変化のスピードが増し、市場動向や顧客ニーズの予測が難しくなっています。固定的な計画だけでは対応が遅れ、機会損失やリスクの増大につながるため、柔軟な計画運用と迅速な意思決定が必要です。

2. 予測困難な不確実性への対応

事業部門や地域で情報が個別管理されると、全社的な現状把握が困難になります。情報の分散は集計・分析工数を増やし、意思決定を遅延させるため、データ統合やリアルタイムな可視化の仕組みが必要です。

3. 複雑な相互依存性の把握

単一の計画ではリスクをカバーしきれないことが増えています。経営ドライバーや外部環境を踏まえた複数シナリオの検討など、それぞれに応じた対応策の準備が不可欠です。

4. 曖昧な情報環境での意思決定

企業では過去実績の分析に加え、AIなどの先進技術を用いた業績予測や施策効果検証が求められます。高度な分析基盤と人材育成によって、先手を打った経営判断を支援する体制が必要です。

EPMとは

EPM(Enterprise Performance Management)は、戦略立案から予算編成、フォーキャスト、実績管理、財務連結、業績分析に至る一連のプロセスを統合し、組織全体の意思決定を支援する仕組みです。財務だけでなく事業部門、営業、SCM(サプライチェーンマネジメント)、人事などのデータや指標を共通モデルと経営ドライバーで結び付け、計画と実行の整合性を確保します。クラウド型プラットフォーム、ドライバーベースのモデリング、シナリオ分析、ダッシュボードによる可視化を活用し、リアルタイム性と柔軟性を高めることで、迅速かつ根拠ある経営判断を可能にします(図表2)。

従来の課題

これまでは部門ごとの業務やシステムの分断によりデータがサイロ化し、全社的な現状把握が難しくなる傾向にありました。また、各データは拠点や担当者の表計算ファイルで管理されることが多く、手動のダウンロードや転記・加工が繰り返されることで作業負荷が増大し、計算結果の品質担保や分析可能な粒度にも制約が生じます。加えて、年次予算中心の固定的な計画では市場変化への対応が遅れてしまい、ヒューマンエラーやバージョン管理の不備で監査性や説明性も低下します。その結果、経営に資する深掘り分析や施策検討に十分な時間を割けない状況が生まれます。

図表2:予算/実績管理の課題とEPM導入による効果

EPM導入の4つの段階と期待される効果

図表3:EPM導入における4レベル

レベル1:現状の把握

複数の表計算ファイルに依存し、作業負荷・スピード・データ精度に課題がある段階です。まず課題の可視化と現行業務の整理が重要です。

レベル2:効率化

EPM上に各部署の計画データを一元管理し、データ収集と加工を自動化します。データの自動収集、計算・検証ロジックの標準化・自動化、明細レベルまでの集約により、事業計画業務の工数について、おおむね3割前後の削減が期待されます。担当者は集計作業から解放され、予実差異分析や施策検討に集中できるようになります。

レベル3:高度化

為替、金利、原材料価格、需要量などの経営ドライバーを変数とした複数シナリオと感応度分析を行い、シナリオごとの影響額や要因分析を迅速に算出します。想定アクションの検討まで行うことで、意思決定の質と速度が向上します。

レベル4:AI活用・自動化

短期フォーキャストや着地見込みをAIで自動予測し、人的リソースを施策検討・実行支援に集中させます。業績予測の自動化や施策効果検証の高度化により、先手を打った経営判断と実行力の強化が期待されます。

これらの段階はスモールスタートで段階的に展開するのが効果的です。単にツールを導入するだけでなく、データ入力・加工プロセスの最適化や業務フローの見直しを併せて進めることで、早期に実務効果を得られます。

なぜ今EPMが求められるのか

VUCA時代では、環境変化の速度と不確実性が高まる中で「迅速かつ根拠ある意思決定」を継続的に行う基盤が必要です。EPMは分散したデータを一元化し、ドライバーベースのモデルで経営ドライバーを変数化させることで、複数シナリオの試算や感応度分析を短時間で実行できます。経営陣は財務三表や主要KPI、ROIC等への影響を即時に把握し、最適な資源配分や施策判断が可能になります。

また、EPMは手作業の表計算によるバケツリレーを解消し、データ収集・加工・集計を自動化して作業工数とヒューマンエラーを大幅に削減します。短期フォーキャストの自動化やAIによる業績予測と組み合わせることで、成り行き(自動予測)と意思入れ(経営判断)を分離運用でき、人的リソースを施策検討や実行支援に集中させることにつながります。結果として、先手を打った経営判断、リスク管理、資源最適化が可能になり、変化の激しい環境下でも持続的なパフォーマンス改善が期待できます。

以上の理由から、VUCA時代に競争優位を維持・強化するには、EPMを中核とした経営管理基盤の整備が不可欠です。導入は段階的に行い、業務プロセスの整理やデータガバナンスと合わせて進めることで、早期に実務効果を得ることができるでしょう。

執筆者

市川 秀樹

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

于 子洋

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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