{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.text}}
ゲーム、アニメ、漫画など、日本発のコンテンツは世界から高い評価を受けています。政府も2033年までにコンテンツ産業の海外売上高20兆円を目指すという目標を掲げており、日本のコンテンツ産業は新たな成長ステージを迎えているといえるでしょう。
コンテンツ産業の海外展開は、エンタテイメント企業だけのテーマではありません。通信、商社、金融、テクノロジー、流通など、異業種の企業がそれぞれの強みを持ち寄り、「生態系(エコシステム)」として海外に展開していくことが、日本ならではの勝ち筋になる可能性があります。では、その実現に向けて、官民はどのように連携し、どのような投資や仕組みを構築していくべきなのでしょうか。
経済産業省でコンテンツ産業政策を担う文化創造産業課長の梶直弘氏と、PwCコンサルティング合同会社でエンタテイメント&メディア領域を担当する岩崎明彦が、日本のコンテンツ産業の成長シナリオと官民・異業種連携の可能性について語り合います。
参加者
経済産業省 商務・サービスグループ ⽂化創造産業課⻑
梶 直弘 氏
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
岩崎 明彦
※所属法人名や肩書きについては掲載当時の情報です。本文中敬称略
(左から)梶 直弘氏、岩崎 明彦
岩崎:
日本には世界で高い評価を受けるIP(作品やキャラクターなどの知的財産)が数多くありますが、それを産業としてさらに成長させていくためには、海外市場を前提とした事業設計が欠かせません。梶さんは、今の日本のコンテンツ産業がどのような状況にあると見ていますか。
梶:
日本の強みは、ものづくりならぬ「ものがたり」力だと思っています。現に、世界のIP売上トップ25のうち、10は日本のIPです。海外のコンテンツ産業関係者と話していても、その点は改めて強く感じます。映画についても、漫画や小説などの原作をもとにアニメや実写で映像化することが多い点が、日本の特徴として欧州の調査機関からも指摘されました。ただ、これまで日本のコンテンツ産業は、主に国内市場の大きさに支えられてきた側面があるため、海外市場を前提に事業を設計するという発想がないジャンルもあるように思います。ゲームでは、海外売上を大きく見込んで経営している企業がありますし、アニメもここ最近は海外売上が国内売上を上回るようになってきました。一方で、実写や音楽では、まだ国内市場中心の感覚が強い印象があります。
岩崎:
海外展開を進めるうえで、投資も欠かせませんね。
梶:
日本ではコンテンツ産業に対する政府支援の規模が海外に比べて小さく、実写やアニメの製作費も米国と比べて桁違いといえるほど少ないのが現状です。海外展開の強化は、国内向けのコンテンツ産業振興を弱めることではありません。むしろその逆で、海外市場を取り込むことで産業全体を大きくしていくという発想が必要です。その意味でも、行政と企業がともに、海外市場を前提にしたマインドセットへと変わっていくことが重要だと思います。
経済産業省 商務・サービスグループ ⽂化創造産業課⻑ 梶 直弘 ⽒
岩崎:
政府は、2033年までにコンテンツ産業の海外売上高20兆円という目標を掲げています。その実現に向けて、今後どのような方針で産業投資を進めていく必要があるとお考えですか。
梶:
まず申し上げたいのは、「規模か戦略か、どちらが重要か」ということではなく、「規模も戦略も、両方重要」だということです。もちろん、どこに、どのように投資するのかという戦略は非常に重要です。ただ、それ以前に、そもそもの投資規模が十分なのかという問いを避けて通ることはできません。
日本のコンテンツ産業に対する政府支援の規模や民間の製作費は、欧米と比べると著しく小さいと言わざるを得ません。世界市場で戦っていくのであれば、官民ともに、より大規模に、長期的に、そして戦略的に投資していく必要があります。
海外では、コンテンツ産業に対する公的支援の規模が日本とは大きく異なります。例えば、ヨーロッパでは映画制作の47%が公的資金によって支えられている1そうです。フランスでは、海外製作品に対する総量規制と合わせて、計測できる範囲だけでも1200億円規模の大きな支援が行われています。アメリカでは、州政府が中心となって、映像分野に対して6000億円規模の大幅な減税措置があります2。アメリカは民間だけで頑張るというイメージも強い国ですが、映像産業に対しては相当な政策的支援を行っているわけです。
もちろん、単に金額を大きくすればよいという話ではありません。コンテンツ産業を本当に成長産業として位置づけるのであれば、どこに投資するのかという戦略も必要です。
岩崎:
作品ジャンルだけでなく、川上から川下までのバリューチェーン全体を見ることも大切ではないかと感じています。
梶:
その通りです。作品を生み出す人やツールといった川上、作品の製作に関わる川中、ファンに作品を届ける流通とともに、グッズ、イベント、体験につなげていく川下まで、バリューチェーン全体を見ていく必要があります。
例えば、強いIPがあっても、それを海外で展開するための製作体制、人材、デジタル基盤、流通網、現地でのマーケティング、ファンとの接点が十分でなければ、産業として大きく伸ばすことはできません。どこにボトルネックがあるのか、どこに投資すれば成長につながるのかを見極めるためには、川上から川下までを一体として捉えることが欠かせません。
日本のコンテンツ産業は、これまで国内市場の大きさに支えられて発展してきました。海外市場は、あくまでもそこからの追加領域というイメージだった方も少なからずいらっしゃると思います。だからこそ、国内市場だけで成立してきた成功体験から一歩踏み出し、世界市場を前提にした「最初から世界」の事業設計へと変わっていく必要があります。どのIPを、どのバリューチェーンで、どのように伸ばしていくのか。その見取り図を持ったうえで、規模を伴う投資を進めていくことが重要だと思います。製造業やスタートアップでよく言われるこうした論点が、コンテンツ産業にも迫ってきているということです。
岩崎:
つまり、これからの産業投資では、「どのジャンルを支援するか」だけではなく、「どの機能を強化するか」という視点も必要になるということですね。
梶:
そうです。ジャンルごとに見るだけではなく、バリューチェーン上のどの機能を強化するのかを考える必要があります。人材なのか、制作基盤なのか、流通なのか、ファンとの接点なのか。そこを分解して見ていかなければ、民間投資だけでなく政策支援も十分な効果を発揮しにくくなるのではないかと考えています。
日本にはすでに強いIPを創ってきた実績があります。重要なのは、その強みを世界市場でより大きな価値に変えていくための投資設計です。必要な規模を確保し、長期で考え、バリューチェーン全体を見ながら戦略的に投資していく。その考え方が、海外売上高20兆円という目標に向けた土台になるのだと思います。
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 岩崎 明彦
岩崎:
政策支援を成長につなげていくためには、「何をやるか」と同時に、「どう成果を見るか」も重要になります。民間企業にとっては、ROI、つまり投資対効果という考え方がなじみやすいと思います。政策についても、どの施策がどのような成果につながったのかを可視化し、改善サイクルを回していくことが求められるのではないでしょうか。
その前提として、PwCコンサルティングでは、日本のコンテンツ海外市場規模について、従来の統計が必ずしも実態を十分に捉えきれていないのではないかという問題意識を抱いてきました。独自に推計したところ、実際にはこれまで示されてきた数字よりも大きな市場が存在する可能性も見えてきています。市場の大きさを正しく把握することは、政策効果を測り、次の投資判断につなげるうえでも不可欠だと考えています。
梶:
成果を見るためには、結果だけを見るのではなく、まずインプットを分解して把握することが必要です。どのジャンルに、どのバリューチェーンのどの部分に、いつ、どれだけ予算を投じたのか。昨年から、そこを細かく見える化することにしました。
これまでは予算を一括で捉えることが多く、ジャンル別、バリューチェーン別に分解した説明は、必ずしも十分に行われていませんでした。しかし、企業経営と同じで、「どこに投資したことにより、どのような成果が出たのか」を見なければ、次の判断にはつながりません。
全体像を把握したうえで、どこにリソースを増やすべきかを考えることが重要です。
岩崎:
政策効果の見える化は、過去の施策を批判するためではなく、次の投資判断の質を高めるためのものですね。
梶:
そうですね。EBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)という言葉もありますが、民間企業と共通の言葉でいえば、ROI(投資対効果)、PDCAサイクルという考え方に近いと思います。政府支援を拡大するのであれば、その支援がどのような成果につながったのかを測り、次の制度設計に反映していくことが必要です。
岩崎:
日本のコンテンツ産業が海外でさらに成長していくためには、官民連携に加えて、業界や業種を越えた連携も欠かせないと考えています。従来はIPの種類や所管省庁、業界ごとに分かれて見られることが多かった領域を、横断的に捉える必要があります。
コンテンツ政策には、経済産業省、総務省、文化庁など複数の省庁が関わっています。だからこそ、IP種別を横断し、川上から川下までのバリューチェーン全体を見る司令塔的な機能が重要になるのではないでしょうか。例えば、韓国のKOCCA(韓国コンテンツ振興院)では、放送コンテンツ、実写映画、ゲームなどのIPを包括的に対象に、企画・製作から流通・配給まで一貫した支援を行っていますが、このようにコンテンツ種別やバリューチェーンを横断して見る仕組みは日本でも参考になると考えています。
梶:
まず、一般に想像されるほど、役所間が分断されているわけではないことをお伝えしたいと思います。私が所属する経済産業省も、内閣府や総務省、文化庁とも頻繁に接点がありますし、情報共有も行っています。私が主催するエンタメ・クリエイティブ産業政策研究会には、考えられる限り全ての関連省庁・独法・法人にオブザーバーとして参加いただいています。ただ、現実として、どんな組織や事業でも、規模が大きくなれば全体を俯瞰することが難しい側面はあるかもしれません。
コンテンツ業界内でも、個別のIPやプロジェクトのレベルでは非常によく連携していると思います。製作委員会などは、まさに協調の仕組みです。一方で、経営レベル、あるいは業界全体の視点では、点での連携にとどまり、面や立体の連携になりきれていない部分があるかもしれませんね。
ゲームでは、海外売上を大きく見込んで経営している企業があります。アニメも海外売上が国内売上を上回るようになってきています。一方で、実写や音楽では、まだそこに追いついていません。ジャンルによって海外市場への向き合い方に差があるのは事実です。ジャンルの垣根を越えて、どのように横の連携を深めていくか。そうした問題意識も、今回、経済産業省の支援メニューのブランドを「IP360」にした一因です。
岩崎:
PwCコンサルティングとして特に強くお伝えしたいのは、「生態系ごと輸出する」という考え方です。日本のコンテンツが海外で人気だからといって、個別の企業が単独で海外に出ていくだけでは、成長には限界があります。重要なのは、緩やかな企業連合、つまり生態系をつくり、その生態系ごと海外に展開していくことです。
私たちは、コンテンツ産業を「コンテンツ+5Cモデル」というフレームワークで捉えています。コンテンツホルダーや制作会社だけでなく、Commerce、Channel、Capitalなど、周辺にさまざまな機能を持つプレイヤーが関わることで、コンテンツ産業の生態系は成り立ってきました。
最近は、エンターテインメントを本業としない異業種企業が、この生態系に入ろうとする動きも増えています。個社単独ではなく、異業種も含めた企業連合として海外に出ていくことが、日本ならではの勝ち筋になり得るでしょう。
梶:
異業種連携は、これから特に重要になると思います。例えば、アニメで認知し、原作の漫画を読み、アニソンで熱狂し、実写化された映画やキャラが登場するゲームを楽しみ、ファンとしてグッズで熱量を保ち続ける。アニメでは、マーチャンダイズと組み合わせることで売上を伸ばし、ファンとの関係を深める動きが起きています。音楽は熱狂を生む存在としてライブやグッズを含めて収益化する流れがありますし、漫画では出版社が直接グッズ展開に取り組む動きも出ています。
AI時代だからこそ、デジタルとリアルの融合はますます重要になるのではないでしょうか。デジタルで広がった作品世界を、グッズ、イベント、テーマパーク、ライブなどのリアルな場で体験できるようにする。そこに異業種企業が関わる余地があります。
政府として、作品の中身に口を出すことはありません。民間の創造性を尊重しながら、投資環境や海外展開の基盤を整えることが主な役割です。官民がそれぞれの役割を果たし、異業種も含めた連携を広げていくことが、日本のコンテンツ産業を世界でさらに成長させる力になると考えています。
岩崎:
本日のお話で、日本のコンテンツ産業の海外展開は、エンタテイメント企業だけのテーマではないことが明らかになったと思います。通信、商社、金融、テクノロジー、流通、リアルな体験接点を持つ企業など、多様なプレイヤーが関わることのできる成長領域です。
政府の政策や投資は、民間企業にとっても、自社の成長戦略を考えるうえでの重要なシグナルになります。自社の技術、資本、顧客接点、海外ネットワークを、日本のコンテンツの海外展開にどう活かせるのか。そうした視点で、この領域を捉えることが重要なのですね。
梶:
日本のIPの強みを活かすためには、世界市場を見据えた事業設計が必要だろうと思います。そのためには、政府も民間も、必要な規模で、長期的に、戦略的に投資していく必要があります。同時に、どこに投資し、どのような成果が出たのかを見える化し、改善していくことも大切です。コンテンツ産業を本当の意味で成長産業にしていくためには、官民がそれぞれの役割を果たしながら、産業全体を大きくしていく視点が欠かせません。
岩崎:
個別のIPや個社の取り組みにとどまらず、異業種の企業も含めた生態系として海外に展開していく。そこに、日本ならではの勝ち筋があると考えます。エンタテイメント領域の外側にいる企業にとっても、自社の機能や顧客接点を活かして関わる余地が広がっているといえるでしょう。読者の皆さまにも、自社がこの生態系の中でどのような役割を担えるのかを、ぜひ自分ごととして考えていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
(左から)岩崎 明彦、梶 直弘氏
梶 直弘(かじ なおひろ)
2004年、東京工業大学情報理工学研究科計算工学専攻修士課程修了後、経済産業省に入省。
IT政策、環境政策、産業革新機構の企画・法案策定、内閣官房での働き方改革、グリーン成長戦略の取りまとめなどを担当。
2022年より産業構造課長として「経済産業政策の新機軸」を総括し、「国内投資フォーラム」を運営。2025年より現職。
1 European Audiovisual Observatory, 2025, Direct public funding and production incentives added up to 47% of the financing of European live-action fiction films in cinemas in 2022
2 経済産業省, 2025, 第8回エンタメ・クリエイティブ産業政策研究会(事務局資料)
{{item.text}}
{{item.text}}
{{item.text}}
{{item.text}}