M&A・事業再建のあり方を変えるAI・データアナリティクスの「威力」──経営の中枢にAIをどう活用できるのか

2022-04-12

※本稿は、2021年2月にForbes JAPANに掲載されたPwCのスポンサードコンテンツを一部変更し、転載したものです。

AI(人工知能)を経営に活用したいと考える企業が増えている。さまざまな分野で導入が進んでいるが、中でも注目されているのが、M&A(合併・買収)案件におけるAIの活用だ。その理由はどこにあるのか。

PwCアドバイザリー合同会社 パートナーでM&A戦略や企業再生、都市インフラ開発におけるデジタルプラクティスをリードする加藤靖之と、PwCコンサルティング合同会社 パートナーで、コグニティブ、AI、機械学習に精通する中山裕之が、最近のM&AのトレンドやAI活用の潮流などについて議論した。

PwCコンサルティング合同会社パートナー PwC Japanグループ データアナリティクス AI Lab リーダー 中山 裕之(左) 、PwCアドバイザリー 合同会社 パートナー Deals Digital リーダー 加藤靖之(右)

PwCコンサルティング合同会社パートナー PwC Japanグループ データアナリティクス AI Lab リーダー 中山 裕之(左) 、PwCアドバイザリー 合同会社 パートナー Deals Digital リーダー 加藤靖之(右)

M&Aのトレンドの変化

中山:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、企業を取り巻く不確実性が高まりつつあります。経験と勘と度胸に頼る経営スタイルでは、変化の察知、変化への対応に遅れを来すことも考えられ、AI(人工知能)やアナリティクス(分析)を経営の中枢に置いて考える「AI経営」の必要性がでてきていると感じます。

その中でも、AIを使ったM&Aは大きなテーマのひとつになるのではないでしょうか。加藤さんから見て、昨今のCOVID-19の影響はM&A市場にどのような変化をもたらしていると思いますか。

加藤:大きな視点で言えば、M&Aの目的が「量」から「質」にシフトしていると思います。COVID-19以前の数年間、日本企業は海外市場でマーケットシェアを獲得するための買収を多く実施していました。これらは戦略軸や事業モデルを大きく変えるものではなく、企業規模を拡大させるという「量」を目指したM&Aでした。

当時、日本企業の多くは、2020年の東京オリンピック以降は日本市場の成長余地は限定的だろうと目論んでいたため、海外に事業を拡大するということに主眼を置いていたと思います。

一方で2020年後半あたりからは、戦略視点や事業構造を変化させることを目的としたM&A戦略が増えてきています。このきっかけになっているのが、言わずもがなですが「COVID-19による社会・人の行動変化」と本格的に官民が動き出した「SDGsへの取り組み」、そして「デジタル・AI技術の進化」の3つです。

PwCアドバイザリー 合同会社パートナー Deals Digital リーダー 加藤 靖之

PwCアドバイザリー 合同会社パートナー Deals Digital リーダー 加藤 靖之

中山:3つのファクターを起点として、M&A領域でどのような動きが出てきていますか。

加藤:COVID-19によって人の行動や意識が変わり、アパレルやレストランチェーン、ホテルなどのリアル資産をベースとしたビジネスは、抜本的な事業構造改革を求められています。そして、これらを支えるサプライチェーンの再編が急ピッチで進められています。日本が誇る自動車サプライチェーンもしかりです。

これほどの急激な変化が起きたことで、企業は先延ばしになっていた事業や資産のポートフォリオの入れ替えを決断し、今後の成長領域にリソースを重点配分する動きが加速しています。2021年3月期の決算を何とか乗り切るために、含み益のある資産や事業を売却することで利益を出し、事業損失を埋め合わせするといった動きもあります。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に関しては、特に脱炭素を実現するためのエネルギー調達の見直しや、サーキュラーエコノミーを成立させる事業モデルの実現に関連したM&Aが検討され始めています。今後は、グローバルレベルで、政府等による規制や機関投資家のSDGsに関連する投資基準が設定されるでしょう。

それに従い、企業にもSDGsに関する具体的達成目標が求められるようになります。これまでのように、M&A戦略の一部にSDGsの要素が組み込まれるといった思考から、SDGs目標の達成のためにM&Aを実施するという主従関係が逆転した思考で考えていくことが求められ、戦略を組み立て直す必要が出てくるでしょう。

3つ目のデジタル・AIは、今回の対談の本題ですね。メディアでDX(デジタルトランスフォーメーション)というキーワードを見ない日がないほど浸透してきました。そのような中で、DXの本質を理解している企業は、今後の競争優位性のカギとなる「AI経営」のデータ、アルゴリズム、コンピューティングという3要素をどのように獲得・開発するかという視点でM&A戦略を組み立て始めています。中でもオペレーションや投資判断の重要ファクターや予測に重要な影響を及ぼす先行指標データの価値が急激に高まっています。

これらの戦略実現に向けて、すでに世界のテック企業が動きだしていることからも分かるように、「データ獲得型のM&A」が今後増えるでしょう。これは単にクレジットカードの購買データを獲得するというようなものではありません。例えば、表向きはただの事業買収に見えても、本質的にはその事業が保持している唯一無二のトランザクションデータや顧客行動データの獲得を目的としていたというケースです。

加えて、「デジタル人材獲得型のM&A」のニーズも増すでしょう。どの企業もAIやデータアナリティクス人材の獲得は急務にもかかわらず、圧倒的に不足しているからです。なかなかそういった人材のいる企業が売却される機会は少ないですし、人材獲得型のM&Aというのは非常に難易度が高いので、実際に成立する案件数は多くないかもしれません。そういった観点から考えると、ひとつの事業モデルを構成するために、企業や産業の垣根を超えたアライアンスの形成が増えていくと思います。例えば、リアル資産の提供と事業を運営する会社、データを提供する会社、コンピューティングのインフラを提供する会社、AIやアナリティクスのアルゴリズムを開発する人材を提供する会社といった座組が増えるのではないでしょうか。

これら3つのファクターを起点に、2025年や2030年には社会や産業、企業がどのような姿になっているか、そのために自社は戦略軸や事業モデルをどう変えなければならないか、規模の大きさよりもその中身の変化に議論の力点が移りました。

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主要メンバー

中山 裕之

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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加藤 靖之

パートナー, PwCアドバイザリー合同会社

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