{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.text}}
教員の働き方改革や教育DXの推進などさまざまな課題が山積する教育行政。PwCコンサルティングでは、「学びの変革を後押しする最高のサポーター」をミッションに掲げるエデュケーションイニシアチブを中心に、2021年より教育領域のプロフェッショナルがさまざまなステークホルダーとともに教育領域の課題解決や変革のための仕組みづくりを推進しています。
その一つの形として、文部科学省(以下、文科省)と京都府京丹後市教育委員会にコンサルタントを出向の形式で派遣しています(京丹後市への出向は既に終了)。今回は、受け入れ先の担当者と、出向したコンサルタントが、教育行政におけるコンサルタントの価値提供について議論を交わしました。
文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教育課程企画室長
栗山 和大氏
京都府京丹後市教育委員会 教育長
松本 明彦氏
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー
髙篠 拓也
PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト
菊池 瑛梨世
ファシリテーター
PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー
林 真依
林:
教育行政への出向は、PwCコンサルティングにとって初めての大きなチャレンジでした。PwCコンサルティングが教育領域に注力を始めたのは2021年です。専門チームが立ち上がり、全国の教育関係者とプロジェクトを推進するという、コンサルティングファームとしては当時珍しかった取り組みを続けてきました。教育の現場では想像以上に多くの課題があり、長く培ってきたコンサルタントとしてのスキルや知見を教育行政の変革にどう役立てられるのか、模索しました。そこで生まれたのが、人材の出向という形で、持続可能な支援の形を作っていく挑戦でした。
まず、文科省・教育委員会の立場から、コンサルタントの出向を受け入れようと思ったきっかけについて教えていただけますでしょうか。
栗山:
文科省では現在、10年に一度の学習指導要領の改訂に向けた議論が始まっています。学習指導要領は中央教育審議会で議論の上、文部科学大臣が告示するものですが、私は改訂を担う実務の責任者として、議論のプロセス自体を教育現場の皆さんと共有しながら検討していきたい、意見を聞きながら進めていきたいと考えていました。そのためには、文科省の思いや考えが教育現場の皆さんに的確に伝わる資料を作る必要があり、そのために必要なロジックやデータを可視化するスキルや知見について、省内の人間以外の力を借りることも必要ではないかと思うに至りました。
また、個人的な問題意識として、文科省を含めた教育領域は、公共セクターという環境の中だけで仕事を進めることに慣れすぎている、と感じていました。民間企業など多様な立場の方から学ぶべきことがあるのではないか、労働力の流動化が進む今、新しい力の合わせ方にチャレンジしていくべきではないかと考え、「コンサルタント」という私たちにとっては新鮮な外部人材を受け入れたいと考えたのです。
文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教育課程企画室長 栗山和大氏
松本:
京丹後市教育委員会では、2023年に「京丹後市の新たな教育・人材育成の在り方に関する検討会」を設置し、2024年1月には「京丹後市の新たな教育・人材育成の在り方に関する検討会 最終まとめ」を公表しています。そこでの議論を実現するためには内部人材だけでは広がりに限界があるのでないかと考え、一緒に立ち上げる仲間としてPwCコンサルティングにお願いしたいと考えるに至りました。
PwCコンサルティングとは、2022年10月から京丹後市立峰山中学校で働き方改革プロジェクトを進めた経験があります。そのプロジェクトにおいて、現場の先生たちが驚くほど大きく変わりました。一例をあげると、子どもたちに対する先生たちの接し方や取り組みに対して、教育現場への熱い思いを持っているコンサルタントの皆さんが、「素敵な先生ですね」「素晴らしいチャレンジですね」といつもお話ししていて、その声がけから、先生たちが自分たちの良さを再発見し自信を持ち、それが子どもたちへ還元されていくという好循環が生まれていきました。業界内だけでは硬直していた課題も、これまでにない視点を持った外部人材が入ることでスピーディに動いていくのだと、外からの刺激の重要性を実感した出来事でした。それを受け、今回の出向をお願いしたいと思うようになりました。
林:
京丹後市立峰山中学校の取り組みは、チーム設立後、学校現場におけるほぼ最初のプロジェクトでした。その時の問題意識が今回の出向につながっているので、改めて、出会いが生む広がりを感じています。
委託事業ではなく出向の形で、仲間として私たちを受け入れるにあたって、不安や懸念はありましたか。
栗山:
最初はかなり心配していました。教育課程課という部署には、文科省の職員や地方自治体からの出向者が多く、教育行政のカルチャーの中で業務が進められています。そこに、民間の方が馴染めるのだろうかという不安が大きかったです。しかし、まったくの杞憂に終わりました。
PwCコンサルティングからの出向者である菊池さんには、組織の特徴やカルチャー、仕事の進め方や言葉の使い方といった細かなところまで繊細に汲み取り、理解していただきました。私たちが特段の工夫をしたというより、菊池さんの寄り添う姿勢と振る舞いが、周りからの圧倒的な信頼につながったのだと見ています。
菊池:
文科省での出向が始まった当初は、例えばメールの文面の作法や言葉の使い方の特徴を把握し、職場での振る舞いなど組織に溶け込むための暗黙のカルチャーを手本となる方から見つけ、自分自身が適応することを意識しました。また、出向先の室長である栗山さんが、課の皆さんに改めて、私の出向を受け入れた意図や私の文部科学省における働き方をメッセージとして送ってくださいました。普段の業務の中で、私がどんな業務や役割を担っているのか、周りのメンバーにわかるように話しかけてくださったり、発信してくださったり。そんな配慮があったから、課の中に受け入れてくれる雰囲気が醸成されていったのだと思っています。
松本:
私たちのような地域の教育委員会に所属する人間は、コンサルタントと一緒に業務を推進する機会はあまりありません。そのため、当初は主に民間クライアント企業の利益の追求を支援する人たち、というイメージを持っていました。加えて、教育は成果が見えにくく、コンサルタントが活躍する領域として難しいのでは、といった先入観がありました。しかし、先述した峰山中学校の取組において、先生たちに刺激をもたらしている様子を見て、教育委員会のメンバーにも刺激を与えてほしい、タスクをこなす役割としてではなく、仕事の仕方や人との関わり方という部分で、学びをもたらしてほしい、と思うようになりました。教育委員会に出向してくれた髙篠さんも、周りをよく観察しながら自分の振る舞いを考えていく姿勢が、周りのサポートを引き出していったと感じています。
京都府京丹後市教育委員会 教育長 松本明彦氏
髙篠:
教育委員会や現場の学校には教育のプロフェッショナルが集まっているので、出向して早々に、外部の人間である自分が強く主張することは避けるよう心がけていました。自分が相手の立場だったらという視点から常に考えながら、まずは「郷に入っては郷に従え」のマインドを大事にしていました。
結果として周りから声をかけてもらうことが多くなり、懇親会や、勉強会の講師などといろいろな形でお誘いをいただき、そこから関係を構築できるようになりました。
林:
PwCコンサルティングとしても、出向によって現場に新たな負担を与えることは避けたいと考えていたので、皆さんのお話を聞いて安堵しています。コンサルタントの存在は、教育行政に具体的にどのようなポジティブな影響をもたらしているとお考えですか。
PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー 林真依
栗山:
仕事そのもののクオリティと成果がもたらす影響は大きいです。菊池さんには中央教育審議会で実際に使う説明資料を数多く作成してもらっていますが、エビデンスのリサーチ力や提示の仕方、膨大な情報をわかりやすく処理して見せる力などが非常に長けていて驚かされました。業務に関連する本を「参考までに」と渡すと、すぐに読み終えて返してくれるなど、新たにインプットする姿勢も素晴らしいと感じています。
同時に、そうしたスピード感とアンテナの高さ、周りの話を聞く姿勢そのものを周りにいる人たちの間近で見せてくれたことも価値があると感じています。菊池さんが出向しているチームには、文科省の職員、地方自治体から出向している小学校教員、都道府県の教育委員会から研修で来ている職員などいろいろなキャリアの方がいます。彼らとこまめにコミュニケーションをとりながら自分の知見にしようという振る舞い=エコシステムを生かした仕事の進め方は、周りからの確固たる信頼につながっていますね。
菊池:
ありがとうございます。文科省での資料作成では、文科省として示したいことを踏まえ、必要な情報やデータを取捨選択し、分かりやすい示し方をすり合わせながら作成することを心掛けています。コンサルタントとしてクライアントが目指すゴールを理解して、第三者にも理解してもらえるように可視化・明文化していくという仕事のあり方と、教育行政は、まったく異なる仕事のように見えて共通している部分があると日々感じています。
栗山:
民間から外部人材が入ったことで、私たちのカルチャーも相対化すべき側面もあるのではないかと感じています。菊池さんを見ていて感じるのは、クライアントに対して個人をベースにして動いている、ということです。私たちは組織を背負うシーンも多く、その際には常に文科省を主語に発言し、考えています。関係省庁や団体との関係においても、無意識のうちに固定的なコミュニケーションのスタイルができているかもしれません。菊池さんはいつも俯瞰した視点で、クライアントにとってのベストを追求している。私たちに足りないところは、そのように組織と個人とを意識的に往還する姿勢ではないかとも感じます。
松本:
今ほど社会の変化の激しい時代でなければ、教育変革も既存の枠組みの中で対応できたはずです。でもこれからはその枠組みを打破して、まったく新しい教育のあり方を模索していかなければいけない。教育行政の人間は未知の挑戦に飛び込むことが苦手で、既存の考え方や経験で打破できなくなった時に脆さが出てしまう傾向があります。検討会の方向を新しく切り拓くという点において、髙篠さんはまさにマッチした人材でした。
印象的だったのは、出向直後の2024年4月。グローバル人材の育成に関して話を聞いてみたい人がいると私がぽろっと名前を口にしただけで、即連絡を取り、つないでくれたんです。その圧倒的な行動力とスピード感に、周りの職員の信頼はぐんと高まりました。また、髙篠さんが作成する資料は、課題認識が可視化され端的にまとまった、とても読みやすい資料になっています。「課題の本質を掴むとはこういうことか」と、同世代の主任や係長が一緒に仕事をしたいと動くようになりました。そうして、どんどん人の輪が広がっていきました。
1年後、出向任期が終了して送別会を開いた時には、学校教育課の職員、生涯学習課の職員、市長部局の職員、小学校の先生、高校の先生、他の市町村の職員まであらゆる人が駆けつけてくれました。人とつながる力を持つ、髙篠さんの魅力を改めて実感しましたね。
髙篠:
教育委員会は学校現場と距離が近く、学校に勤務する先生たちに直接話を聞きに行くことができました。京丹後市が目指す「学びの変革」について議論すると、先生たちからどんどん意見が出てきました。私が外部の人間だからこそ、現場の先生たちもポジティブなこともネガティブなことも言いやすかったのかもしれません。現場にいる先生たちから伺った思いも言語化して整理し、市の教育委員会や首長部局、必要に応じて京都府の教育委員会へ還元していく、――さまざまな立場やレイヤーの方たちと議論することの多いコンサルタントだからこそ、その役割を担うことができていると気づいた1年でした。私自身にとって多くの学びとなった、とても貴重な1年を過ごすことができたと考えています。
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 髙篠拓也
松本:
髙篠さんの出向期間は3月に終了しましたが、現在は政策参与という形で立場を変えて教育委員会に関わっていただいています。
出向期間の後半の半年間は、髙篠さんが去る時を見据えて、若手職員を中心に何をできるようにすべきなのかを整理しながら自走する準備を進めていきました。髙篠さんがいなくなったから目指していた目標が達成できない、という状況に陥っては、出向そのものが属人化し、持続可能な施策にはなりません。外部との繋がり方や、課題解決に向けた動き方、情報共有の仕方や打ち合わせ時の振る舞いなど、幅広い領域で髙篠さんの仕事のやり方から学ぼうと、職員のマインドがどんどん変わっていくのを感じていました。外部から刺激が入る良さは、まさにこういうことだと思いました。
栗山:
多くの刺激をもらっているからこそ、菊池さんにも文科省に出向してよかったと思ってもらいたい。私にできることは、幅広い仕事と情報を提供し、とにかくベストな経験をしてもらえるよう環境を整備することです。教育領域で再びプロジェクトを立ち上げたい、これからも教育に携わっていきたいと菊池さんが思えることが、PwCコンサルティングとの継続的な良好な関係につながる、大きな還元になっていくと思っています。
菊池:
文科省で働けていること自体が、すでに私のキャリアの宝物になっていると感じています。この経験をどう生かしていくかは私次第。PwCのほかのコンサルタントにも、ぜひ出向など外との協働経験を積んでほしいなと思っています。林さん、髙篠さんなどとも相談しながら引き続きPwCコンサルティングへの還元方法を考えていきたいと思います。
PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 菊池瑛梨世
松本:
教育現場では今、外部との連携による、教育のあり方の変革が求められています。これからの方向性という意味でも、貴重な機会をいただきPwCコンサルティングには本当に感謝しています。
菊池さん、髙篠さんという素敵な人材との巡り合わせから、これからの広がりにも期待しています。
林:
2名を送り出した立場として安心するとともに、受け入れてくださった文部科学省、京丹後市に改めて感謝をお伝えしたいです。ありがとうございます。
今後も「学びの変革を後押しする最高のサポーター」として、政策立案から教育現場への伴走まで一気通貫した支援を進めて参ります。今後とも良きパートナーとして、教育領域における変革をご一緒できるとこれ以上の喜びはありません。本日はありがとうございました。
{{item.text}}
{{item.text}}
{{item.text}}
{{item.text}}