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昨今、建設業の経営者が抱える課題は高度化の一途をたどっています。長く続いた建設業「冬の時代」が終わりを迎え、建設需要が旺盛となる一方で、人手不足や資材高騰といった既知の課題に加え、将来の持続的成長に向けた事業ポートフォリオの見直しや拡充、高まる資本市場からの要請など、経営者が対応しなくてはならないアジェンダは多岐にわたります。
本稿では、業界の現状を俯瞰しつつ、「トランスフォーメーション」「トランザクション」「トラスト」の3つの視点から、課題に対する打ち手の全体像を提示します。本連載では今後、第1回となる本稿で示す各論点を掘り下げ、実務に移せるアクションへと落とし込んでいきます。
日本の建設業界の市場規模は、バブル経済が崩壊した1990年代初頭以降縮小の一途をたどり、リーマンショック後の2011年には42兆円程度と、一時は最盛期の半減以下まで落ち込みました。しかしその後は、東日本大震災の復興需要や国土強じん化政策や東京オリンピックに関連する建設需要などの追い風も相まって、足元では74兆円程度まで急激に回復してきています。
その過程では、東京オリンピックをピークに市場が停滞するのではないか、という見方もありましたが、都心部の大型再開発や大型物流施設の建設、リニア中央新幹線の着工、大阪・関西万博(2025年国際博覧会)・IR(統合型リゾート)関連需要など、大型の建設需要が目白押しの状況です。加えて、資材価格高騰や人件費高騰の影響を受け、1案件当たりの売上規模が大幅に増大していることから、市場は右肩上がりで推移しています(図表1-1)。
大型物流施設については、建設ラッシュが一段落しつつあるものの、人手不足から建設計画の見直しが多発している再開発計画を中心とした大規模オフィスビルの供給(図表1-2)や半導体工場・データセンター、GX関連投資、老朽化が進む建築物に対応(図表1-3)するための更新投資などの需要が安定的に発生することが見込まれるため、市場は今後も堅調に推移することが想定されます。
図表1-1:建設需要の中長期動向
2030年にかけ国内土木建築とも堅調に推移する見込み
図表1-2:再開発案件の動向
2029年にかけ東京23区の大規模オフィスビルの供給量は落ち込みが予想される年もあるものの増加見込み
図表1-3:老朽化するインフラへの対応需要
2030年以降、建設後50年以上経過する社会資本の割合が加速度的に増加
2020年から2024年にかけ、建設会社の工事受注高(大手50社)は13.8兆円から18兆円まで増加しています(図表2-1)。これと連動して、建設会社各社の売上も増加傾向が続いています。
図表2-1:建設工事受注高、手持ち工事高の推移(大手50社)
各社の受注高は2020年以降増加傾向で、手持ち工事高(受注残)は2024年度末で過去最高水準
一方で営業利益は、資材価格の高騰や人手不足による人件費上昇の価格転嫁が進まなかった点を主要因として減少傾向にあったものの、直近では、施主へのコスト転嫁や高収益案件の選別受注が進んだことで回復傾向にあります。
特に2022年から2024年にかけて東証プライム上場建設会社大手4社の営業利益率の回復傾向が顕著で、準大手に関しても回復基調にあります(図表2-2)。施主との価格交渉力が強いことに加えて選別受注が進んだ大手企業が先行し、それが波及する形で、準大手・中堅・地場の建設会社に関しても順次業績の回復が進んでいるものと推察されます。
図表2-2:東証プライム・スタンダード上場建設会社の業績推移
大手4社が先行する形で、業界全体の業績は回復基調
2025年は建設会社同士の大型M&Aが相次いで公表されました。建築・土木の事業基盤取り込みなどを目的に、500億円を超える規模のM&Aが複数発表されています(図表3)。
また東北地方や九州地方などで、地場の建設会社や専門工事会社を対象とした中堅・中小規模の統合も増え、再編の裾野が広がっています。
図表3:建設市場における近年のM&Aトレンド
2025年度は500億円を超える大型のM&Aが複数公表
1章で述べたような好調な事業環境の中でも、建設会社各社・業界として取り組むべき課題は変わらず存在し、その影響は年を経るにつれ、大きくなっているものと認識しています。日本経済・建設市場の長期的な縮小に備え、これらの課題にどのようにプロアクティブに対処していくのか、その姿勢や対処の巧緻が中長期的な建設会社各社の業績や行く末を左右していくものと考えます。
ここからは、日本の建設市場が直面する4つの大きな課題を提示します。
日本全体で人手不足が顕在化する中、特に建設分野においては他産業を上回る水準で人手不足が深刻化しており、施工の遅れや着工の後ろ倒しといった問題となって既に大きく現れています。
その背景として、就業者の高齢化と若年入職の伸び悩みに加え、2024年に適用された時間外労働上限規制により、可働時間の制約が強まったことが挙げられます。この傾向は今後も継続することが予測され、2035年には約28万人の建設労働者の需給ギャップが発生するという推計も存在します(図表4)。
図表4:建設業の年齢割合、建設技能労働者数の需給ギャップ
建設業界の高齢化に伴い就業者不足に直面しており、10年後には担い手不足が生じる見込み
ウクライナ紛争や米中対立など地政学リスクの高まりや、米国の関税政策の影響、国内物流インフラの混乱もあり、建設に関わる資材のサプライチェーンは不安定化しています。
またそれらを背景とした、円安傾向の定着、海上運賃の乱高下、エネルギー価格の上振れも重なり、資材コストは高騰したまま高止まりしており、今後もボラティリティの高い状況が続くことが想定されます。鋼材・鉄筋・セメント・生コンクリート・銅・木材などで価格水準の上昇と変動幅の拡大が進んでおり、見積時点と施工時点の単価差が生じやすい状況が継続しています(図表5)。
図表5:資材価格の推移
2020年代以降、資材価格は高騰。近年は価格変動は穏やかながら高止まり
「資本コストや株価を意識した経営」に代表される東京証券取引所の要請も背景に、PBR1倍の達成や資本効率に関する開示と対応が求められています。2024年度の各社の業績回復により状況は改善しつつあるものの、建設業は他業種に比べ、PBRが1倍未満の企業比率が相対的に高く、PBRの構成要素であるPER・ROEも総じて低い傾向にあります(図表6)。
こうした状況も背景に、アクティビストによる関与・株主提案も増加傾向にあり、配当・自社株買い、資本構成の見直しなどを求められるケースが散見されています。
図表6:建設セクター各社のROE・PBR
業界全体として東証プライムの上場企業平均のROE・PBRよりも低い水準にある
環境・社会課題への対応もまた、建設業界が直面する課題です。環境課題の面では、建設バリューチェーン全体で世界全体のCO₂排出量の約37%を占めることが指摘されています(図表7)。さらに、土地の形質の改変や土壌汚染、騒音・振動などによる地域の生態系への影響や、建設廃棄物の発生とその再資源化も重要な課題です。一方、社会課題の面では、多層的な下請け構造により労働環境の把握が難しいことから、長時間労働や安全管理の不備の発生、外国人技能実習生を含む労働者の人権侵害リスクも指摘されています。加えて、昨今ではバリューチェーン最上流の原料採取段階において、先住民の土地や地域コミュニティーへ配慮することも、より強く求められてきています。
図表7:建設環境セクターにおけるグローバルCO₂排出量
建設セクターで全産業のグローバルCO2排出量の約37%を占めるを占める
これら4つの大きな課題への対応次第で、建設会社各社の中長期的な競争力に差が付き、マクロ的な景気変動に左右されない強固な経営基盤を築くことができる企業とそうでない企業へと、評価が分かれることも想定されます。
望まぬ結果を回避し、より強く安定的な経営を実現するために、本連載では今後、建設業が取り組むべきテーマとして5つに取りまとめ、具体的に解説していきます。
以上のように、建設業界が取り組むべき5つの重要テーマについて、今後の連載で詳説することを予定しています。
お読みいただくことで、日々複雑さを増している業界の課題に対して、経営者・実務リーダーの皆さまの検討の一助になりましたら幸いです。
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