第6回:保育園の気になる子

2023-03-13

2. 障害児や「気になる子」の受け入れ状況

当社が2021年度に実施した調査では、障害児のほかに、特定の判定は受けていないが特別な支援が必要と考えられる子ども、いわゆる「気になる子」にも範囲を広げて、障害児保育の実態などを調べました。

<障害児>

  • 以下の判定を受けた子ども(障害判定されていない医療的ケア児も含む)
    • 視覚障害
    • 聴覚、言語障害
    • 肢体不自由
    • 知的障害
    • 病弱
    • 自閉症、ADHD、LD
    • 医療的ケア児
  • 市区町村において障害児または障害児と同等の支援を必要とする子どもとして支援対象となっている子ども(※障害児は、保護者からの障害児保育の支援の申請を受けていない子どもを含む)

<気になる子>

  • 特定の判定は受けていないが、発達上の特性から保育所等の生活において困難を抱えており、特別な支援が必要と考えられる子ども

その結果、全国の障害児保育を行う保育所等において、障害児を受け入れている割合は71.4%、「気になる子」を受け入れている保育所等は89.8%であることが分かりました。施設種類別で見ると、認可保育所や認定こども園の9割以上が「気になる子」を受け入れていることも明らかになりました(図表2参照)。

出典:当社が2021年度に実施した調査をもとに作成

また、それぞれの保育所等が受け入れている人数は、障害児が平均3.73人、「気になる子」が平均23.01人でした。「気になる子」は特に2歳児や3歳児で多く、傾向としては、

  • 落ち着きがない
  • 集団の活動に参加できないときがある
  • 生活の場面や活動を切り替えることが難しい

といった様子が挙げられました。

障害児の場合は、加配保育士が施設平均2.03人配置されているのに対して、「気になる子」の場合は、施設が独自で配置している加配保育士が施設平均1.01人と、障害児の半分程度となっており、通常保育の中で対処する必要があるケースも多いと推察されます。

そのほか、「気になる子」の支援について、保育所等と家庭の間で意向に食い違いがあるのは、

  • 保育所が専門機関への相談や受診を提案するとき(受診を促すきっかけは、言葉の遅れ、生活場面や活動の切り替えが難しい、保育士の指示の理解が難しい、集団での活動への参加が難しいなどが多い)
  • 保育所等での子どもの様子について情報を共有したいとき

がそれぞれ7割以上を占めていることも明らかになりました。

3. 障害児保育に関する課題と解決に向けた取り組みについて

当社が2021年度に実施した調査によると、障害児保育に関する課題としては、障害児の受け入れプロセスや保育所の受け入れ体制に関するものが多く挙げられました。具体的には、

  • 【障害児の受け入れプロセスに関する課題】入所申請時の子どもの状況に関する情報の連携が不十分なケースや、入所後に障害等が認識された際に迅速な対応ができないケース、入所後に他の支援に切り替えた際に支援が継続されないケース
  • 【保育所等の受け入れ体制に関する課題】保育士の不足や保育士等の対応力の向上、気になる子が支援を受けるまでの障壁(保護者の受容、加配を受けるまでの条件等)
  • 地域の関係機関とのさらなる連携

といったことが挙げられました。
また、保育所等は0歳から入園するケースが多いため、入所当初は障害児・気になる子であることが分からず、子どもの成長の過程で職員の加配が必要だと感じてから実際に加配されるまでは、保育所等による人件費等の「持ち出し」となるケースが多いことも明らかになりました。

これらの課題を抜本的に解決するような国の施策は、現時点ではありませんが、市区町村や保育所によっては、以下のような方法で課題を解決している事例も見られました。

  • 【市区町村主導の地域関係機関のネットワークづくりに向けた取り組み】保護者・市区町村・保育所等のニーズなどを調整するための検討組織を設置する事例
  • 【保育所等の保育の質の向上に向けた取り組み】保育所等独自で多職種連携に取り組んだり、市区町村主導で気になる子に対するアセスメントや個別指導計画の作成支援を行ったりしている事例
  • 【気になる子の支援に至るまでのプロセス】加配の見直しを年に数回設けることにより適切な加配が行えるようにしている事例

このように、障害児の受け入れについて保育所や市区町村が工夫をするとともに、「気になる子」についても、できるだけ早い段階で支援を受けられるように、市区町村や保育所、地域の関係機関が連携して対応していくことが重要です。そして、全ての子どもが障害の有無にかかわらずともに成長できるような体制、支援を行っていくことが求められるでしょう。

執筆者

東海林 崇

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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古屋 智子

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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植村 靖則

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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植木 佳織

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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