登壇者
Chad Gray(チャド グレイ)
PwC米国
パートナー
Jessica Martin(ジェシカ マーティン)
PwC米国
パートナー
CMMC(Cybersecurity Maturity Model Certification:サイバーセキュリティ成熟度モデル認定)は、米国国防総省(DoD)が防衛調達に関わる企業に求めるサイバーセキュリティ認定制度です。2025年11月にはCMMC 2.0の段階的導入が開始されました。本稿では米国における最新動向を紹介するとともに、同制度が日本企業に与える影響と取るべき対応を、PwC米国のChad Grayと Jessica Martinが解説します。
最初にCMMCの概要を整理します。
CMMCは、DoDが設計したサイバーセキュリティ成熟度モデル認定制度です。防衛サプライチェーンに関わる企業が、自社のIT環境で扱う連邦契約情報(FCI)や管理対象非機密情報(CUI)を適切に保護することを求める制度です。
基盤となるフレームワークは「NIST SP(※) 800-171」および「NIST SP 800-172」です。800-171ではCUIの保護を目的とした110のベースラインコントロール、800-172ではより高度な環境向けに24の追加コントロールが規定されています。
※ SP(Special Publication):米国国立標準技術研究所(NIST)が発行するサイバーセキュリティガイドライン
防衛産業基盤(DIB:Defense Industrial Base)は世界で30万社以上の企業で構成されており、その多くは米国外、特に日本に本社を置いています。国防総省がサイバーセキュリティ要件を強化する中、日本を含むアジアの企業にとって、具体的な準備指針がこれまで以上に重要になっています。CMMCは単なるコンプライアンス対応ではなく、国防総省と取引するための前提条件であり、サプライチェーン全体に最低限のセキュリティ基準を確立するものです。
CMMCは、グローバルな防衛サプライチェーンに関わる企業にとって極めて重要なサイバーセキュリティ要件となっています。国防総省は「認定がなければ契約はない」と明言しており、虚偽の申告を行った場合には虚偽請求防止法(False Claims Act)の下で法的責任を問われる可能性があります。実際に法的措置が取られた事例も出ています。
次からは以下の4点に焦点を当てて解説します。
PwC米国 パートナー Chad Gray(チャド グレイ)
CMMC 2.0では、認証体系が以下の3つのレベルに整理されています。
CMMCの認定・評価に関わる主要機関は、国防総省、Cyber AB(CMMC認定制度の公式認定機関)、国防契約管理局(DCMA)傘下のDIBCAC(防衛産業基盤サイバーセキュリティ評価センター)、そして認定第三者評価機関(C3PAO)で構成されています。どの機関が関与するかによって評価の進め方や要求事項が変わるため、各機関の役割を理解しておくことが重要です。なお、PwCはRPO(登録実務者組織)として、認定取得を目指す組織の準備・評価対応を実務面から支援します。
次に、導入スケジュールが企業の準備態勢に与える影響を整理します。
2025年9月、防衛調達を規定する連邦規則「48 CFR Part 204」が公布されました。これは、国防総省が防衛契約においてCMMC要件の適用を開始することを正式に認めるものであり、同時にCMMC 2.0の段階的な導入スケジュールが定められました。具体的なスケジュールは次のとおりです。
最終調達規則の発効から60日後に当たる2025年11月10日からフェーズ1が開始され、ここからCMMCの適用が段階的に進められます。各フェーズは12カ月ごとに移行し、制度運用と評価体制を段階的に成熟させる設計になっています。
ここで強調したいのは、CMMCは「将来の要件」ではないということです。すでに2025年から契約判断に影響を与えており、国防総省には予定されたフェーズに先立って特定の契約に要件を適用する権限もあります。
証拠の整備、文書更新、システム境界のスコーピングには多くの時間を要します。入札が出てから準備を始めるのでは間に合いません。実際に認定取得に成功している企業の多くは、9カ月から18カ月前に準備を開始しています。
次に、認定取得に当たっての重要なポイントを確認します。
認定は単にコントロールを実装するだけでは完了しません。各コントロールが適切に運用されていることを、文書および証拠によって一貫して示す必要があります。
認定パッケージの中核となるのがシステム・セキュリティ・プラン(SSP)です。SSPでは主に次の内容を定義します。
さらに、認定パッケージには次の資料を含める必要があります。
見落とされがちなのが、評価時の説明体制の準備です。C3PAOの評価では、コントロールを実際に運用している担当者へのヒアリングが重視されます。評価者は画面共有を求め、手順の実演や運用状況の説明を通じて、提示された文書と実際の運用が一致しているかを確認します。この準備が不十分な場合、認定取得に大きな支障が生じます。
PwCではこうした評価に備え、エビデンスプレイブックを作成しています。コントロールのオーナーが評価者から想定される質問を理解し、適切に説明できるよう事前に整理しておくためです。
次にこれまでの支援経験とCMMCエコシステム内の事例を基に、企業が準備不足に陥りやすい7つの共通課題をご紹介します。
PwC米国 パートナー Jessica Martin(ジェシカ マーティン)
最後に、日本に本社を置く多国籍企業にとって、特に重要となる典型的なシナリオを2つ紹介します。
両シナリオに共通して重要となるのは、まず扱うデータがFCIかCUIかを早期に明確にすることです。その上でエンクレーブの境界を定義し、使用するクラウドプロバイダーがFedRAMPマーケットプレイスにおいてModerate以上の認可を取得しているかを確認する必要があります。さらに、共有責任モデルを採用する場合には、どのコントロールを誰が担当するのかを文書で明確にしておかなければなりません。
適切なスコーピングと明確な運用モデルを設計することで、CMMC対応を戦略的に管理できます。CMMC 2.0はグローバルな防衛サプライチェーンに関わる企業、とりわけ日本に本社を置く多国籍企業に直接的な影響を及ぼします。フェーズ1はすでに開始されており、対応を先送りにする余裕はありません。
最後にまとめると、「早期着手」「適切なスコーピング」「徹底した文書整備」「継続的なコンプライアンス維持」の4点が、認定取得の成否を分ける重要な要素です。
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