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近年、AI技術の急激な進化を受けた社会への影響を踏まえ、各国は、AI関連法制度の整備を急速に進めています。本コラムでは、韓国のAIに関する法規制の動向、実務での論点を整理し、韓国で事業を展開する日本企業が留意すべき点を紹介します。
韓国においては、2024年12月26日に「人工知能の発展と信頼基盤構築等に関する基本法(以下、「AI基本法」という)」が国会本会議で可決され、2026年1月22日からの施行が予定されています。AI基本法は、4年以上の議論を経て成立したものであり、EUに次いで世界で2番目に、AIに関する国家レベルのガバナンス態勢を確立するという意味で重要なマイルストーンになります。AI基本法と同じ日に、「デジタルインクルージョン法」も併せて成立しました。これにより、デジタル技術やインターネットアクセスの機会を、社会全体に公平に提供し、誰もがデジタル社会の恩恵を享受できるようにする1という韓国の揺るぎない姿勢が示されています。
韓国のAIに関する国家戦略は、政策、AI基本法および関連法令で構成されています(図表1)。
政策について、2019年に、AI国家戦略を発表し、AIを強化する国家を目指すビジョンの下で、2020年にはAIに関する法律、制度、規制の整備に関する包括的なロードマップを関係省庁が合同で発表しました。それ以来、各関係機関はAIに関連する政策を活発に策定しており、2024年には新たなデジタル秩序の確立を推進する計画を公表しました2。この計画では、デジタル権利章典の5つの原則を基礎に、影響力と緊急性の高い8つの政策課題を特定し、それらの解決に重点を置いています。AIに関連する主要課題には、①AI技術の安全性、信頼性・倫理の確保、②ディープフェイクを用いたフェイクニュースへの対策、③AIの開発・活用における著作権制度の整備が含まれています3。
関連法令に関しては、行政基本法をはじめ、個人情報保護法、公職選挙法、電子政府法、情報通信網利用促進および情報保護に関する法律など、AIに関する規定を含む23の法令が存在します。
AI基本法については、「3 AI基本法の概要」で紹介します。
図表1:韓国AI戦略体系
AI基本法は、国内で行われた行為はもとより、国外で行われた行為でも国内市場または利用者に影響を及ぼす場合には適用されます4。
各ステークホルダーの定義は以下のとおりです。
AI基本法は、主に①AIの健全な発展と信頼基盤の構築を目指した推進態勢、②AI技術の開発および産業育成、③AI倫理と信頼性の確保について定めています。上記のうち、①②は、国および関連団体の義務であり、③の一部はAI事業者の義務です。本文では、主に、AI事業者の義務について紹介します。
AI基本法では、AIについて、AI、生成型AI、大規模AIという概念を導入し、それぞれのカテゴリーに該当するAIシステムを扱う事業者に対して異なる義務を課しています。
人の生命、身体の安全および基本権利に重大な影響を及ぼし、または及ぼすおそれのあるAIシステムを指します。具体的には、図表2のいずれかの分野で利用されるAIシステムが含まれます。
図表2:高影響AI
入力されたデータの構造と特性を模倣して、文章、音声、画像、映像、その他多様な成果物を生成するAIシステムを指します。
大規模AIについては、具体的な定義を設けず、学習に使用された累積演算量が大統領令で定める基準以上のAIシステム5としています。この基準に関する大統領令はまだ公表されていませんが、基準に該当する場合には、高度なガバナンス態勢の構築が求められる可能性があり6、今後の動向に注目し続ける必要があります。
それぞれのカテゴリーに該当するAIシステムを扱う事業者の義務を図表3のとおり整理しました。
図表3:AI事業者の義務
AI事業者が、次の各号のいずれかに該当する場合、3,000万ウォン7以下の過怠料を賦課されます。
韓国でAI基本法および整備予定のAI関連法令の対象となりうる事業を展開している組織は、AIの開発や利活用において、既存の内部統制フレームワークにAI対応を組み込み、法令遵守を徹底する必要があります。金融・モビリティ・ヘルスケア産業への影響8や対応策については以下を想定しています。
韓国は、これから大統領令などAI関連法整備を進める見込みです。韓国でAIに関連するビジネスを展開する日本企業はAI基本法の要件への対応が求められます。
AI基本法には、影響度に応じてさまざまな要件・義務があります。AI基本法の対象になるにもかかわらず影響度に応じた適切な対応が実施されていない場合、過怠料を科される可能性があります。韓国に進出する日本企業においても、AI基本法の内容をよく理解し、自社製品・サービスに適用される要件・義務の把握やセルフアセスメントを実施することが望まれます。
1 原文:https://www.korea.kr/news/policyNewsView.do?newsId=148937982
2 [APC]国内AI規制動向、https://act.jinbo.net/wp/48239/
3 法制処未来法制革新企画団、Legislation Newsletter7月号、「AI関連国内外法制動向」8頁。
4 原文:人工知能の発展と信頼基盤構築等に関する基本法(20676,2025012)
5 AI基本法第32条(「AIの安定性確保義務」)
6 KIM&CHANG, News letter 2024.12.27,
https://www.kimchang.com/ko/insights/detail.kc?sch_section=4&idx=31105
7 過去1年平均レートで換算する場合、約300万円に相当
8 「AI基本法の可決の意義および産業への影響」、法律新聞、2025年1月6日、
https://www.lawtimes.co.kr/LawFirm-NewsLetter/204461
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