文化芸術・コンテンツ産業領域が抱える特有の課題を解決し、文化と経済の好循環を実現することで、文化芸術やコンテンツ産業の持続的な発展を実現します。

文化芸術・コンテンツ産業領域の政策立案・実行支援

気候変動、人口減少、地域格差、そしてデジタル化の進展など、私たちを取り巻く社会はかつてないほどの変化と複雑性に直面しています。こうした時代において、文化芸術は既存の枠組みを超えた新しい価値観や視点を提示し、感動や共感を通じて人々の創造性を育み、社会を支える基盤として、その本質的な価値が改めて注目されています。

また、映画・漫画・アニメーション・ゲームといったコンテンツ産業は、世界のコンテンツ市場の拡大を背景に、日本の経済成長のエンジンとしての役割も期待されており、ソフトパワーとして外交や国際的な影響力の源泉にもなっています。

PwCコンサルティングは、文化芸術それ自体の振興を図るだけでなく、経済的価値や社会的価値の創出も喚起し、それらの果実が新たな創造活動や表現活動に再投資されるという文化と経済の好循環の促進に向けて、社会の変化に対応したエコシステムのあり方を構想し、文化芸術領域やコンテンツ産業領域における多様な政策支援を実施しています。

文化芸術・コンテンツの概況と政策の潮流

文化芸術・コンテンツ産業の多面的価値と社会的役割

文化芸術は、社会の精神的な豊かさを育む基盤として、人々の感性や創造性を引き出すとともに、地域のアイデンティティや歴史的文脈を継承する重要な役割を担っています。特に2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大時には、人々が身体的・心理的な距離を余儀なくされ、社会全体が未曽有の不安と混乱に直面する中で、文化芸術の社会的・心理的な機能が再評価され、その本質的価値が改めて認識されました。近年では、文化芸術が観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業など多様な分野と連携しながら、社会的・経済的価値を創出する動きが広まっています。さらに、「多様性」「包摂性」「持続可能性」といった価値観の下、文化芸術が平和やウェルビーイングの実現に貢献する存在として国際的にも期待されており、地球規模の課題に対して人々をつなぐ力として、その役割は一層重要性を増しています。

文化芸術と密接に関連するコンテンツ産業も、デジタル技術の進展とグローバル市場の拡大を背景に、経済成長のけん引役として急速に存在感を高めています。映画・アニメーション・ゲーム・音楽・漫画などの分野は、国内においては約27兆円規模の関連市場を形成しており、ライセンス利用や二次創作を含めた波及効果も極めて大きいと言われています。また、世界市場に目を向けると、2025年には約1.3兆米ドル(約183兆円)規模に達すると見込まれており、日本発のコンテンツはその中でも高い評価と競争力を維持しています。このようなコンテンツ産業は、経済的価値の創出に加え、観光、教育、都市ブランディング、国際交流など多様な分野と連携しながら、文化芸術とともにソフトパワーの中核として、国内外の社会において重要な位置を占めています。

文化芸術領域における政策の潮流

日本政府においても、文化芸術・コンテンツ領域の重要性は高まっています。こうした背景を踏まえた近年の政策の潮流は、以下の4点に整理できると考えています。

グローバル化の影響は文化芸術領域にも広がり、欧米を中心とした構造から、世界各地のアーティストやクリエイターがさまざまな表現活動を行う状況へと変化が生じています。また、デジタル技術の進展により、表現方法や創作活動の幅が広がるだけでなく、ソーシャルメディアや配信プラットフォームを介した発信により、グローバルな評価やトレンドが、世界同時的かつ短期間で形成される傾向にあります。

このような状況を踏まえて、他国と同様に、日本でも文化芸術やコンテンツのグローバル展開が推進され、エンタテイメント産業やクリエイティブ産業に対して、海外市場での競争力を高めるための海外展開支援が行われています。また、国際的に高い評価を受け、文化芸術領域において大きな影響力を持つような世界的なアーティストを育てるためのエコシステムの構築や、環境整備も重要です。さらに、日本の文化芸術資産の価値を最大化するためには、発信・流通を担うキュレーターやプロデューサー、さらに国際的な連携・交渉を担えるビジネス人材などが不可欠であり、これらのグローバル人材の育成や確保に向けた施策も進められています。

他にもオリジナリティと多様性に富んだコンテンツIPの力を軸に、世界中のファンとの共感を育みながら、グローバルなファンコミュニティを醸成していくことや、西欧中心からの脱却と文化芸術におけるプラットフォームの多極化という流れを受けた、日本の文化芸術の固有性の海外への積極的な発信などが今後はより重要となっていきます。

アーティストやクリエイター、文化芸術団体は、創造的な活動を通じて社会に価値を提供していますが、経済的基盤や組織運営が脆弱であるため、継続的な活動が困難なケースも少なくありません。従来の公的支援は一定の効果はあるものの、企画単位での補助金が中心であり、補助金獲得を目的とした活動に偏るリスクもはらんでいます。

近年は、より長期的な視点から、担い手がその価値を継続的に発揮し続けられるよう、マネジメント力や運営力の強化を図り、担い手自身の成長や自律性の向上を目的とした支援の必要性が議論されています。

例えば、文化芸術活動の社会的・経済的価値を可視化し、活動の価値やインパクトを効果的に伝えるための仕組みの整備や、団体のガバナンス構造やミッション・戦略、組織運営全般の改善を図る伴走型支援、マーケティング・IT・広報・資金調達などの専門人材の不足を補うための専門家派遣による現場のスキル向上などが進められています。

文化芸術は、観光・まちづくり・国際交流・福祉・教育などの他分野と連携を強化することで、新たな価値を生み出すことが期待されています。これは、独自の視点を社会に提示し、人々の感性を刺激して惹きつけるという文化芸術固有の力を他分野にも活用しようとする前向きな動きである一方、厳しい経済状況の中で、公的な財源による文化芸術支援の意義や必要性が、より強く問われているという背景もあります。 

例えば観光分野では、文化芸術団体と観光事業者の連携の下、地域の伝統芸能や祭り、美術館・博物館などの文化資源を活用した観光コンテンツの創出を通じて、地域の魅力を発信することが期待されています。一方で、自治体内で十分な予算が確保されにくい状況や、XR(拡張現実)やAIなどのデジタル技術を活用した体験型コンテンツや文化財のデジタル化の取り組みが、専門人材の不足や高コストといった課題により、試験段階にとどまっている例も少なくありません。

文化芸術分野でも他分野と同様に、データに基づく政策形成(Evidence-Based Policy Making:EBPM)の重要性が高まっています。文化芸術に関わる活動や政策の効果を可視化・定量化する取り組みは、社会的理解の促進や公的支援の正当性を明確にする上で、重要な政策潮流の一つとなっています。また日本のコンテンツ産業では、企業が事業戦略の策定を行う際、国内外の産業基礎データが重要な産業基盤として位置付けられつつあります。

文化芸術はその性質上、定量的な指標では捉えにくい価値を多く含んでいますが、地域コミュニティの形成、教育・福祉への貢献など、多面的な意義を持つことから、これらを定量的に示す試みが進められています。こうした動きは、より効果的かつ効率的な公的支援の設計にもつながっています。

また、コンテンツ企業の海外展開においては、海外市場での売上や利益の予測に基づいた戦略立案が求められており、そのための基礎データの整備や、産業界との連携による継続的なデータ収集の仕組みづくりが進められています。

このような可視化・定量化の取り組みに関して、特に公的支援が経済に与える効果を把握する場合には、推計モデルの活用が重要です。その際には、各分野の専門家と連携した、学際的な視点から妥当性を検証するプロセスが求められます。こうした定量評価は、単発ではなく定期的かつ継続的に実施されることで、経年変化やその背景にある要因を捉え、政策の改善や新たな価値創出に生かすことが可能となります。

PwCの支援

課題が交錯する文化芸術・コンテンツ産業領域においては、専門的な視点から多角的に課題を解決する立体的アプローチが重要です。

PwCは、国や自治体における文化政策の実務経験者、芸術の現場に携わる実践者、文化政策に関する学術研究者など、多様な専門家を含むチームの下、官公庁・自治体・文化芸術団体などを対象に、以下のような支援実績を有しています。

1. 調査研究事業

  • アーティストや実演家等の評価形成メカニズムに関する調査
  • エンタテイメント・クリエイティブ産業各分野の現状や課題に関する調査
  • 日本コンテンツの海賊版被害額に関する調査
  • コンテンツIP活用による海外展開事例に関する調査
  • コンテンツビジネスの国際著作権契約に関する調査
  • 著作権の権利処理の簡素化・一元化に関する調査
  • モバイルゲーム産業およびアニメ産業の構造変化に関する調査
  • モバイルゲーム市場のトレンドに関する調査
  • 化粧品産業におけるコンテンツIP活用に関する調査
  • 玩具産業の振興に関する調査
  • 伝統工芸品産地の関係人口拡大に関する調査

2. 実証事業・実行支援事業

  • 文化芸術団体の運営改善に向けた伴走型支援の実証
  • 博物館への専門的人材派遣事業の実証
  • 企業のアート投資促進に向けた事業の実証
  • 海賊版対策の国際連携体制構築に向けた支援

3. 効果検証事業

  • 文化イベントの経済波及効果の推計
  • 国際芸術祭における来場者属性の分析

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主要メンバー

作佐部 孝哉

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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潮田 知彦

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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大西 知之

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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