PwCのプロフェッショナル像を再定義する対話シリーズ

Borderless collaboration―インクルーシブなチームの力がボーダーを超え、可能性を広げる―

  • 2026-07-27

日々業務を行う中、自分1人では困難な仕事を任されることがあります。
そんな時は悩みを1人で抱え込まず、国・言語・専門・役割などのボーダーを超えて協働することで、個人の枠が広がり、クライアントや社会へのインパクトを起こすことができるのではないのでしょうか。

本連載では、PwCコンサルティングがどのようなプロフェッショナル像を描き、人と組織を通して価値を生み出そうとしているのかを紹介します。第3回は、PwCの従業員にとっての価値であるPeople Value Propositionの1つとして掲げる「Embracing inclusion, driving impact(インクルーシブに影響を与える)」と、プロフェッショナルマインドセットとして掲げる「Break your border(超えていこう、自分を)」の大切さについて、I&D(インクルージョン&ダイバーシティ)リードパートナーと、海外から日本への出向経験者、日本から海外への出向経験者の3名に語ってもらいました。
(聞き手:PwCコンサルティング CHRO 片山紀生)

(左から)方 雪瑩、小林 たくみ、片山 紀生、歌丸 愛依子

(左から)方 雪瑩、小林 たくみ、片山 紀生、歌丸 愛依子

インクルージョンファースト―「I&D」がもたらす課題解決の総合力―

片山紀生(以下、片山):
本日は、PwCコンサルティング I&Dリードパートナーの小林たくみさんと、国や文化、専門性などのボーダーを越えて挑戦してきた方雪瑩(Annie)さん、歌丸愛依子さんの3人に集まってもらいました。皆さんとのお話を通じて、インクルーシブなチームがどのように人の成長や価値創造につながるのかを掘り下げていきたいと思います。

まずは小林さんにお聞きします。PwCコンサルティングのI&Dをリードする立場として、People Value Propositionの4つの柱の1つである「Embracing inclusion, driving impact」をどのように捉えていますか。

パートナー 執行役常務 CHRO 片山 紀生

パートナー 執行役常務 CHRO 片山 紀生

小林たくみ(以下、小林):
「Embracing inclusion, driving impact」を捉える上でのポイントは、なぜPwCが、私たちの取り組みをD&IでもDE&Iでもなく、「InclusionのI」から始まるI&Dと呼称しているか、という考え方にあります。

PwCでは、クライアントや社会の重要な課題を解決するためには、多様なプロフェッショナルが専門性や経験、価値観を結集し、総合力として価値提供することが大事だと考えており、これを「Inclusion First Strategy」と呼んでいます。

つまり、インクルージョンが、課題解決のプロフェッショナルとしての価値に広がりや深さ、高さをもたらすものと考えており、だからこそD(ダイバーシティ)よりも先にI(インクルージョン)を掲げています。これが私にとっての「Embracing inclusion, driving impact」の捉え方です。

片山:
私もまったく同感です。「Embracing inclusion, driving impact」という言葉に、あえて「多様性」ではなく「インクルージョン」を掲げているのは、まさにPwCの総合力を生かしていきたいという意思の表れだと考えています。

では、インクルージョンを進めるにあたって、PwCにはそれを遮るボーダーがあるかないか。あるとすれば、それは現場の挑戦やコラボレーションにどう影響しているか。これらの点についてはどう感じていますか。

小林:
組織には、当然ながらジェンダーやナショナリティ、障害(Disability)、LGBT+、働き方、さらには職階や部門などさまざまなボーダーが存在しています。ただ、私たちはこれを多様な専門性や経験、価値観が組織に内包されている状態だと捉えています。

さまざまなボーダーが存在するものの、むしろそのボーダーがあるからこそ、ボーダーを超えるインクルージョンによって良いインパクトを生み出し、PwCがクライアントや社会に必要な存在になることができています。さらに言えば、これによってPwCの職員が個々人の「らしさ」を発揮して生き生きと働けているのではないか、と考えています。

パートナー 執行役員 小林 たくみ

パートナー 執行役員 小林 たくみ

片山:
AIの進化や社会課題の複雑化によって、一人の専門家や一つの組織だけで価値を生み出すことがますます難しくなっています。だからこそ、互いの違いを生かしながら新しい価値を生み出していくことが重要になります。私はインクルージョンを、3年前にCHROに就任した際に掲げた「人と組織で勝つファーム」というビジョンを実現するための重要な基盤だと考えています。

言葉や文化の壁を超え、互いを高め合うコラボレーション

片山:
では、ここからは実際にボーダーを超えてきたAnnieさん、歌丸さんのお話を伺います。AnnieさんはPwC英国から日本へ赴任してきたわけですが、最初に感じたボーダーはどんなものでしたか。

方 雪瑩(以下、方):
私は日本企業に転職した配偶者を支えるため、出向しました。英国では120名ほどの同期のうち、中国人は私一人だけだったのですが、アジア人として提供できる価値を十分発揮できているのかどうかということにも疑問を感じ、日本ならそれを発揮できるのではないかと考えたのも出向を決めた理由です。

当時、まだ生後7カ月の子どもがいたことや、日本語がまったく話せないことも心配でしたが、難しいチャレンジであることは来日前から覚悟していたので、それほどボーダーは感じませんでしたね。

シニアマネージャー 方 雪瑩(Annie)

シニアマネージャー 方 雪瑩(Annie)

片山:
難しくても果敢に挑戦できるというのは、かなり強靭なメンタルと覚悟ですね。日本で仕事を始めて、「受け入れられた」と感じたのはどの段階ですか。

方:
最初からですね。日本語が話せない中でも、出向直後からプロジェクトにアサインしてもらいました。言葉ではなく、私自身の価値を評価してくれた。だからこそ、「受け入れてもらえた」と感じることができたのだと思います。

片山:
異なる文化圏での働き方に戸惑うメンバーもいると思いますが、Annieさんの経験を踏まえて、どのようなサポートがあれば効果的でしょうか。

方:
互いの違いをあまり気にすることなく、自由に意見を交換し合える環境を作ることだと思います。そのためには、まずメンバーの声をしっかりと聞くことが大切です。私はよくチームのメンバーに「私の考えが正しいとは限らないので、皆さんの声をちゃんと聞かせてほしい」と伝えています。実際、私が最初に関わったプロジェクトでは、上司が自由闊達に意見を交わせる環境を整えてくれました。仕事そのものの話だけでなく、「このプロジェクトを通じて何を実現したいのか」といった個人的なキャリア面でのことも踏まえて、互いを高め合う会話を交わせることがありがたいと感じています。

片山:
なるほど。自分のキャリアにどうつながるのかが見えることで、一人一人が主体的に挑戦できますし、お互いの思いや目指す姿を理解し合える環境があってこそ、チームとしてより大きな価値を生み出せるのだと思います。

未知の領域での挑戦と成長

片山:
続いて歌丸さんにお聞きします。Annieさんとは反対に、歌丸さんは日本からドイツに行ったわけですが、赴任した経緯と、現地で感じたボーダーがあれば教えてください。

歌丸愛依子(以下、歌丸):
PwCドイツへの赴任は、PwC JapanとPwCドイツのエネルギーチームが人材を相互に派遣し、それぞれの市場や業界動向、プロジェクトを通じて得た知見を共有することで、クライアントへの提供価値を高めていこうという取り組みがきっかけでした。エネルギー業界は世界的に大きな変革期にあり、国によって制度や市場環境、課題も異なります。そうした中で、現地で得た知見や経験を持ち帰り、チーム全体のナレッジ向上や新たな視点・インサイトの創出につなげることが期待されていました。私自身もグローバル案件に携わる中で海外で働いてみたいという思いが強くなっていたこともあり、この機会に挑戦しました。

ドイツで最も大きなボーダーとして感じたのは、組織の在り方の違いです。日本では主にコンサルティング業務に携わっていましたが、ドイツではコンサルティング、アドバイザリー、監査などのサービスラインがシームレスに連携しながら、エネルギー業界のクライアントに価値を提供していました。そのため、私自身もこれまで経験したことのない領域の業務に関わる機会があり、当初は戸惑うこともありました。しかし、そのボーダーがあったからこそ、自身の専門性だけでなく新たな視点や知見に触れる機会にもなりました。例えば、日本ではコンサルティング業務を中心に担当していましたが、ドイツでは電力会社向けの監査業務において、エネルギー業界の知見から監査チームを補完する役割を担う機会がありました。異なる専門性を持つメンバーが、それぞれの強みを生かしながら自然に連携し、クライアントへ価値を提供していく環境は非常に印象的で、日本にはない視点や価値提供の在り方を学ぶ機会になりました。

また、もう一つ大きなボーダーとして感じたのは、新しい環境の中で信頼関係を築いていくことです。ドイツではプロジェクトの多くが現地語で進められており、私が参画できる機会は決して多くありませんでした。そのため、提案活動のサポートを行ったり、自身の経験や専門性を積極的に発信したりしながら、まずは自分を知ってもらい、信頼関係を築くことを意識していました。そうした働きかけを続けた結果、新たな仕事やチャレンジの機会にもつながり、自ら一歩踏み出して周囲とのボーダーを超えていくことの大切さを実感しました。

マネージャー 歌丸 愛依子

マネージャー 歌丸 愛依子

片山:
そもそも日本と海外では組織のプラットフォームが異なっているので、違うサービスラインの仕事をするというのはかなりチャレンジングな環境でしたね。どのようにして、その壁を乗り越えたのですか。

歌丸:
まず、経験したことのない領域とのボーダーに対しては、無理に取り繕うのではなく、自分に足りない部分を率直に認識しながら、一つ一つ学んでいくことを意識しました。現地のメンバーも非常に協力的で、分からないことがあれば丁寧に教えてくれましたし、私自身も積極的に周囲へ相談するようにしていました。

また、人とのボーダーを超えるために、自分からコミュニケーションを取りにいくことも常に意識していました。新しい環境では、待っているだけでは関係性も仕事の機会も広がりません。日々の会話や業務を通じて自分自身を知ってもらいながら、少しずつ信頼関係を築いていったことで、新たな業務やチャレンジの機会にもつながっていったと感じています。

片山:
現地にいて、インクルージョンを実感した部分はありますか。

歌丸:
所属チームのメンバーとはランチなどを通じて日頃から情報交換をしていましたし、業務で困った際には、その領域に詳しいメンバーを紹介してもらうこともありました。そうした日常的なコミュニケーションが自然に行われており、新しく赴任したメンバーも組織に溶け込みやすい環境だったと思います。また、プロジェクトリーダーからは日々フィードバックがありました。形式的な評価だけではなく、業務の中で気付いたことをその都度共有し、改善に向けたアドバイスを行う文化が根付いていました。赴任直後は新しい環境で分からないことも多くありましたが、そうした周囲のサポートやオープンなコミュニケーションのおかげで、安心して挑戦できる環境が整っていったと感じています。

片山:
お二人の話を聞いていると、赴任先のパートナーやチームが寛容で、個人の成長やクライアントへの価値提供を一緒に考えてくれる環境があったことが、ボーダーを越える挑戦を支える重要なポイントだったのだと感じます。

「知らないことを知る」機会が、チームの可能性を引き出す

片山:
続いて話し合いたいのは、「インクルーシブなチームはどうやって作ればいいのか」ということです。小林さんはどう考えますか。

小林:
ポイントは三つあると考えています。一つは「実益」を重視すること。PwCがインクルーシブにこだわるのは、倫理的に必要だと考えるからだけではなく、社会の重要な課題の解決にも、会社としてのビジネスにも、関わる全ての人材のキャリアにも、大きな実益をもたらすからです。

二つ目は、ジェンダーやナショナリティ、障害(Disability)といったグループ分けを細分化し過ぎず、緩やかに捉えること。これは、個々人が多様な価値観を持つことが前提の下では、パターンは無限に存在し得るため、「不用意にカテゴライズすること」は意図しない分断を招きかねないからです。

そして三つ目は、「知らないことを知る」機会を多く設けることです。この点を実現するには、1対1のインディビジュアルな関係だけでなく、1対NやN対Mのコレクティブなコミュニケーションの場をバランスよく組み合わせることが大切なのではないかと考えています。

先ほどのAnnieさんの「メンバーの声をちゃんと聞く」という話には大きく頷いてしまいましたが、プロジェクトや組織の責任者を担う私の立場では、日々のフィードバックやレビューを「正解を提示する場」ではなく、「新しい視点を加える場」にすることも重要だと考えています。単に良し悪しを判断して答えを出すのではなく、現場のメンバーは私が持っていない視点を加え、私は現場のメンバーが持っていない視点を加え、互いに新しい気付きを与え合うことで創出価値を高める、という考え方です。皆がそうやって新しい視点を出し合うことで、私たちの総合力が最大限に生かされるのだと考えています。

片山:
Annieさんと歌丸さんは、日々の業務の中でインクルーシブに振る舞おうとしていることはありますか。

方:
先ほど言ったように自由闊達に意見を交わすこともそうですが、まずは自分の中にボーダーを設けないようにしていることかもしれません。「どうせやるなら楽しくやりましょう」と語り掛けることで、おのずと気楽な雰囲気が作り出せるのではないかと思っています。

歌丸:
私もAnnieさんと同じように振る舞っています。社内には知らない人や、いろいろなバックグラウンドを持つ人がいますが、あまり先入観を持たず、興味と尊敬を持って接することが大事だと思っています。

片山:
素晴らしいですね。私も日頃からチームのメンバーには「クライアントのところへ一人で行かないでほしい」と伝えています。経営課題が複雑化する中で、異なる専門性を持つ仲間が一つの課題に向き合うことが極めて重要だからです。多様な視点が交わることで新しい解決策が生まれる、それこそがPwCならではの価値であり、その価値を生み出す基盤がお互いの違いを生かし合える環境なのだと感じます。

さて、Annieさんにはメンタリティについてもお聞きしたいです。日本語ができない中で日本に来ることは、とても大きな挑戦ですよね。普通であればおじけづく部分を、なぜ躊躇せずに実行できたのでしょうか。

方:
PwC英国で働いていた時に、「There is nothing to lose」(失うものは何もない)とか「There are no silly questions」(つまらない質問なんてない)という教育を受けてきました。思いのままに考え、行動することをインクルーシブに受け入れてもらえたからこそ、安心感を持っていろいろなことに挑戦できたのだと思います。

Break your border―自らの可能性に線を引かず、変革を起こす―

片山:
私が好きな元プロ野球選手で監督の野村克也さんの言葉に、「『失敗』と書いて『せいちょう』と読む」というものがありますが、失敗を恐れず挑戦したからこそ、壁を越え、成長につながったわけですね。PwCコンサルティングでは、「Break your border」というプロフェッショナリズムのマインドセットを掲げていますが、まさにお二人のお話は、それを体現していると感じます。

最後に皆さんにお聞きしますが、ボーダーを越える挑戦は、自分や会社、クライアントや社会にどのようなインパクトをもたらすと感じていますか。

方:
インクルーシブや、ボーダーを超えなければならないという課題は、私たちのクライアントも抱えています。私たちが仲介役となってクライアントの各部門や拠点の間を取り持つことは、社内でインクルーシブを推進しているPwCだからこそ提供できる価値ではないでしょうか。

歌丸:
私は、ドイツで日本では経験したことのない領域の業務に携わる中で、異なる専門性を持つメンバーが連携することで生まれる価値を実感しました。複雑化する経営課題に対しては、専門領域やサービスラインのボーダーを超えて知見を持ち寄ることで、より大きな価値やインパクトをクライアントに提供できるのではないかと感じています。

小林:
先ほどのAnnieさんの話と似ていますが、あるクライアントのグローバル構造改革を支援した際に感じたのは、今までつながっていなかった人や事業・地域、データをつなぎ、組み合わせた時に「一人では生み出せない新しい価値や示唆」が生まれるということです。不確実で多様な時代には、こうした「掛け合わせ」が変革を実現する鍵になると考えています。ボーダーを超える挑戦は、クライアントには変革と新しい価値創造を、私たちには新しい学びと成長を、組織には変革する力をインパクトとしてもたらすと考えています。

「実益を前提とするインクルージョン」というPwCならではの考え方があったからこそ、人と人のつながりを前提とするお客さまの変革を支援できたのではないかと考えています。

片山:
貴重なお話をありがとうございました。AIの進化によって、これからの時代は、平均的に優秀であることだけでは差別化が難しくなっていくかもしれません。だからこそ、その人ならではの経験や価値観、専門性、つまり「らしさ」が、これからの時代の競争力になります。そして、多様な「らしさ」が集まり、掛け合わさることで、一人では生み出せない新しい価値が生まれる。違いを活かし、より大きな価値を生み出す。それが、私たちPwCが目指す「Embracing inclusion, driving impact」です。

そこで私から最後に伝えたいのは、「自分の可能性に自分で線を引かないでほしい」ということです。これまで接点のなかった人と出会ってみる。経験したことのない仕事に挑戦する。一歩踏み出してみる。そうした行動の積み重ねが、自分でも気付いていなかった可能性を広げ、想像以上の自分や、新しい仲間との出会いにつながっていくはずです。そして、多様な仲間とともに新しい価値を生み出すことが、お客さまや社会へのより大きなインパクトにつながります。

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