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PwC Japanグループは、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPwCのPurpose(存在意義)のもとで持続可能な社会を目指し、事業活動に加えて、コーポレートレスポンシビリティ(CR)を推進してきました。しかし、経済の成長と社会の発展のギャップは今も埋まらず、日本、そして世界の持続可能な成長には、多くの課題が残されています。
こうした現状を受け、従来のCRに加えて、社会課題の解決に挑む団体を支援する取り組みとして、2020年に公益財団法人PwC財団が設立されました。同財団は、テクノロジーの活用により社会課題に取り組む団体に対する公募助成事業を行っています。今回ご紹介するのは、こうした団体に寄り添い、その挑戦をともに支える伴走者である、PwC財団のプログラムオフィサー(以下、PO)です。
左から、アシュアランスリーダーの山口健志、3名のPO経験者、執行役常務 森直子、パートナー 辻信行
POの活動には、PwC Japanグループのさまざまな法人から、多様な専門性を持つメンバーが参加しています。公認会計士も、その一つです。日々の監査業務を続けながら、それまで関わりの少なかった社会課題の現場に、彼らはどう向き合ったのでしょうか。
今回は、POを経験したPwC Japan有限責任監査法人の七松 覚さん、玉井 賢吾さん、金子 浩幸さんに、その1年間を振り返っていただきました。PO活動に参加を決めた動機から、現場での経験、そこから得たものまで、3名それぞれの言葉をお伝えします。
七松 覚さん(2022年度/EF Polymer株式会社)バイオ廃棄物から作られた完全生分解性の超吸水性ポリマーで、乾燥・半乾燥地域の砂漠緑地化を目指す同社に伴走し、内モンゴルでのフィールド実証実験のマネジメントを担った。
玉井 賢吾さん(2023年度/株式会社Gaia Vision)堤防やダムの効果を反映した高解像度な洪水浸水予測で、災害時の避難や被害軽減を目指す同社に伴走。ユーザーへのインタビューや紹介、実証実験先との連携を通じて、開発の現場を支えた。
金子 浩幸さん(2023年度/Planet Savers株式会社)無機多孔質材料であるゼオライトを用いた吸着材で、大気中のCO₂を回収する装置の開発に取り組む同社に伴走。販路開拓や、実証に向けた調査、競合他社の事例研究など、情報面から事業を支えた。
七松:
会計士を志した当初から、社会に貢献する仕事がしたいという思いがありました。だから、プロボノ活動の存在そのものにも強い関心があって。特に、監査法人での日常業務では接する機会の限られた、異なる産業・組織規模・社会課題のある団体に対して専門知識を生かせるという点に、大きな魅力を感じました。
この助成事業の募集があった2022年は、ちょうどマネージャーになった頃でした。PwC Japan監査法人で、この活動に参加したのは私が第一号だったんです。何をやったらいいかも分からない中でしたが、ファームを代表する気持ちで参加しました。これまで監査業務しか経験していないけれど、そのキャリアの中で培ったものを生かして、何らかの形で一人の会計士として社会に貢献する姿を部下や周りにも示せたら、という思いもありました。
一方で、監査業務の経験のみで、スタートアップやNPO法人の経営課題の解決に貢献できるのか、という不安もありました。
玉井:
所属していた監査チームのリーダーから紹介を受けたのがきっかけでした。監査一本のキャリアで、クライアントに伴走するアドバイザリー業務は未経験。新しいことにチャレンジしてみたい、という気持ちが大きかったですね。加えて、自身が直接、社会貢献に携われるのではないか、という分かりやすい期待もありました。
ただ、個人的には全く自信はなかったです。入社以来、十数年ずっと監査しかしてこなかったので。とりあえずやってみよう、という好奇心の方が勝った感じでした。
金子:
私は新卒で入所していて、当時3、4年目ぐらい。まだ経験も浅い時期に参加しました。専門性が付く前の段階だったので、知見が広まる一環、という感覚でした。自分で手を挙げたというよりは、紹介を受けて面白そうだなと思って参加しました。
私は学生時代にベンチャーキャピタルに関わっていたので、スタートアップ業界自体に抵抗はありませんでした。ただ、監査法人に入ってからは業務でスタートアップと関わることはなかったので、正直、めちゃめちゃ不安でした。
金子:
私が活動を始めたのは、ちょうど新型コロナウイルス感染拡大のさなかでした。そのためリレーションを築くのがなかなか難しかったです。相手の懐に飛び込んで一緒に動いていくということで、監査法人とは少し動き方が違うんですね。
しかも二酸化炭素回収という業界自体がまだ立ち上がったばかりで、日々刻々と状況が変わります。昨日必要だった情報と今日必要な情報が全然違うとか、先読みして集めた情報が「それはいらないです」と言われるとか。時間に対する考え方の違いには、すごく悩みました。
玉井:
私の担当先は、大学発のスタートアップでした。研究者が立ち上げたばかりの会社で、本当に専門的な話しかありませんでした。毎月の定例で進捗を聞いても、何の話をしているのかさっぱり分からない。その分野に縁のなかった自分が、専門家に混ざって支援をする。何ともおこがましい状況で、正直なところ、少し居心地の悪さを感じたこともありました。何が正解かも分からないまま、「その研究って結局どこに生かせるんですか」と、ただ素朴に聞き続けているうちに、気づけば終盤に差し掛かっていました。
七松:
私はいざ始まってみたら、想像以上に理系のプロジェクトだったんですよね。研究委託先の大学の教授のところへ行って、ポリマーの優位性を示す標準偏差をグラフで見せられたり、「完全生分解性」と言われても何のことか分からない。実験のメソッドを巡って専門家と助成先が議論する場面では、その間に立って橋渡しをしたりもしました。実証実験でも、コロナ禍で人や物流の往来がストップするなど、当初想定しない事態が次々に起きて。予測できない環境の変化に対応する力や、ステークホルダー間を調整する力が、本当に大事なのだと痛感しました。
「自分なら人の役に立てる」という上から目線ではなく、しばらくは「何が自分にできるかな」と、手探りで進めていました。ただ、専門領域や立場も違うステークホルダーと関係を築いていくところは、監査でクライアントと対峙するときの立ち回りに近い部分もありました。リレーションを築くところは、普段の監査業務と共通しているんだな、とも感じました。
玉井:
実は、このインタビューをきっかけに、久しぶりに助成先の代表に連絡を取ってみたんです。当時の話をしたら、私が「結局これはどこに生かせるんですか」と聞いたことが、向こうにとっては目から鱗だったらしくて。技術に着目しすぎるあまり見落としていた視点だったと。技術そのものへの支援というより、その技術を広めていく過程で、相手にどう伝えれば分かりやすいか、という素人目線のアドバイスも求められていたそうです。
結果として実証実験の相手との連携もうまくいって、助成先から感謝の言葉をいただいたときは、素直に嬉しかったですね。専門家が知見を持ち寄って、一つのものに昇華していく、その橋渡しに、少しは貢献できていたのだなと、今になって実感できました。
金子:
私は当時、この活動に比較的時間を割ける立場だったので、この業界やスタートアップ界隈のイベントに足を運んでは情報を集めてきて、他社の事例を紹介していました。そうしたこともあってか、「この人は情報を集めてきてくれる」と思ってもらえていたようです。
ただ、情報を提供するだけでなく、相談相手として一緒に考えていく、スタートアップの一社員であるかのように、当事者として課題に向き合う姿勢が大事だと感じました。また、活動の中盤から現地に足を運び、実際の装置を見ながら会話するようになってからはチームと仲良くなれた感覚がありました。
七松:
一番大事なのは、助成先の事業や人に興味を持つことだと思うんです。100%オーガニックの完全生分解性ポリマーについて、自分でインターネットの記事を探したり、「今度ラジオで会社が紹介される」と言われたら聴いてみたりしました。ご縁があった相手に愛を持って接することが、活動のコアだと思っています。
沖縄・恩納村にある本社にも視察に伺いましたが、近隣の農家の方々と築き上げた信頼関係や、地域との共生の中で会社のビジョンを追う姿勢に強く引かれました。職員の皆さんが生き生きとしていて、前向きで一体感のある組織の雰囲気も印象的でした。
PO経験者の七松さん、玉井さん、金子さん
金子:
二つあって、一つはスタートアップへの関わりです。私が担当した助成先での経験から、少し幅を広げて、スタートアップ全般にどう支援できるかを、今、業務として検討できないか模索しているところです。
もう一つは、環境問題への関心です。監査法人で相対する企業の方々と、スタートアップで社会課題に取り組む方々とでは、課題感やスピード感などが異なることばかりで、非常に影響を受けました。社会には解決しなければならない課題は数多くあって、それを事業として取り組むことの難しさも感じましたし、環境問題や環境テクノロジーへの興味と併せて、自分自身の環境意識も芽生えたように思います。PO活動やベンチャーキャピタルの現場で得た「生の感覚」を持つメンバーはそう多くないので、その経験は生きているのだと思います。
玉井:
もともと、社会のために何かしたい、何かできないか、と漠然と思ってはいました。ただ、日々の監査の仕事に追われていて、社会に目を向ける余裕もなかった。PO活動への参加は、その思いを、自分のキャリアも含めて確認する機会になりました。
これまで大企業の財務諸表監査が中心で、スタートアップと関わる機会も限られていました。養うべき家族を抱えながら事業に挑む彼らを間近で見て、初めて気づかされたことも多くありました。直接の社会貢献だけでなく、社会貢献にチャレンジするクライアントを支える、そういう観点でも自分は貢献できるのだと、改めて気づけたのは大きかったです。
その後、私は部門を異動して、今は独立行政法人を中心に公的機関に対してアドバイザリーを行う仕事に携わっています。社会に対して何か貢献できないか、という思いが、今の仕事につながっています。その思いを形にするきっかけになったのが、この活動です。
七松:
私の場合は、少し角度が違うかもしれません。この活動を通じて自分自身が成長した部分も、もちろんあると思います。ですがそれよりも、PwCには社会貢献に熱い気持ちを持っている人が実は何人もいる、そのことを広めて、認知度を上げ、仲間を増やすことこそが、非常に重要だと思っています。私がこの組織の中でプロボノや社会貢献という軸を、ほんの少し、1.001倍くらいかもしれませんが、大きくするようなベクトルで貢献できたなら、それがこの活動の意義だったのだと思います。
実際、PO活動をしたことを部下に話すと、「監査以外にもいろんな活動があるんですね」「私もやってみたいです」と言ってくれました。その後もNPO法人の支援や、三陸沖での被災地の復興支援に加わりました。そうした活動をしていると、「せっかくだからニュースレターを書いてよ」と頼まれ、部門の中で紹介することもあります。
こうして人と人をつなぐことに自分の存在価値を感じましたし、PwCという組織は結構面白いな、と改めて思いました。
七松:
興味があったら、まずはやってみればいいと思います。何もしないよりも、何かしただけで、社会のためになっているはずですから。PwCには、本当にいろいろな人がいます。例えば、土壌科学や脳科学などの専門家がいて、そうした人たちが、わずかな時間でも知見や資源を社会課題の解決に生かせる。そんな仕組みが、もっと大きく実装できれば素晴らしいと思っています。
金子:
学生の相談に乗るときにこの活動の話をすると、興味を持ってくれる人が本当に多いです。今の若い世代は、社会課題への関心がとても高い。彼らと近い場所にいると、そう実感します。
玉井:
私自身、アドバイザリーのようなキャリアがないまま、この活動に飛び込みました。特別なキャリアがなくても支えてくれる方も多く、挑戦できる環境がここにはあります。一歩踏み出してみれば、なんとかなるものだと実感しました。思いがあればぜひチャレンジしていただきたいです。
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