ホリスティックアプローチによるサステナブルなビジネスモデル変革支援

 

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を取り巻く世界の潮流は刻一刻と変化し、企業が取り組むべきサステナビリティ領域のアジェンダは多様化・複雑化しています。経済・環境・社会課題を総合的に捉え、両立することを目指さなくてはなりません。PwCは、経済・環境・社会の影響を可視化・評価するホリスティックアプローチを通じて、企業におけるサステナブルなビジネスモデルの変革実現に向けた戦略の策定から実行までを一貫して支援します。

企業を取り巻く環境変化とリスク

現代は、多種多様な課題が相互に複雑に絡む「ポリクライシスの時代」とも言われます。サステナビリティについても環境課題や社会課題、さらには地政学リスクなどが複雑に絡み合い、アジェンダ別に切り分けて議論することが極めて困難です。企業は、サステナビリティを個別最適ではなく全体最適として捉える、すなわちホリスティックに考えることが求められています。

企業の従来型のSXは、サステナビリティアジェンダごとの個別最適に陥りがちでした。その主な理由は、規制がアジェンダ別、業界・製品別で分かれているためです。
こうして、1つの目的に対する個別最適化を図ると別の弊害が生じたり、全体としては負の影響が拡大したりという結果が起こり得ます。そのため、国際的なルールメイキングの場においてもアジェンダ横断で全体最適を考えるホリスティックな政策立案が徐々に進められています。

アジェンダ横断で全体最適を目的とした政策立案が進められる中、企業も同様に全体最適化を企図していかなくてはなりません。こうしたサステナビリティを取り巻く外部環境の変化は、多様化、複雑化として捉えることができます。
多様化とは、これまで比較的優先度の低かったアジェンダに対しても、企業の取り組み義務が徐々に強まってきていることです。一方、複雑化とは、各アジェンダはそれぞれ独立した課題として存在するのではなく、複雑に絡み合い、相互に影響を与え合っているという理解の仕方が浸透してきていることです。

サステナビリティの多様化・複雑化、さらにはそれをホリスティックに捉える必要性を高める要素として、地政学リスクがあります。
例えば、特定の国に依存している重要鉱物について、企業はその輸出制限などの動きに注視するとともに、突然の供給停止などの事態に備えてリスクの測定や代替策の検討を早急に実施することが、リスクを低減するために必要となります。

ホリスティックアプローチ

ホリスティックに考え、決める

ホリスティックとは「全体的な、包括的な」といった意味を持つ形容詞です。ホリスティックアプローチとは多様化・複雑化するサステナビリティ課題を気候変動、自然環境、人権といったアジェンダごとに切り分けて考えるのではなく、環境、社会、経済の全てを総合的に捉え、それを踏まえて全体最適を図るという意思決定のアプローチを指します。
具体的には、まず、多様な課題間におけるトレードオン/トレードオフを可視化・評価した上で、全体最適となるような施策を優先的に選択します。次に、選択した施策を複数組み合わせ、施策ポートフォリオの作成と実行を通じて、多様なサステナビリティアジェンダに対して包括的にアプローチします。つまり、ホリスティックアプローチとは、データを集めて解析し、施策ポートフォリオを見直して全体を最適化する方法のことを指します。

ホリスティックアプローチによる施策導出

ホリスティックアプローチは、複数の課題に対してプラスの効果をもたらす施策を導き出すことを可能とします。例えば脱炭素では、多くの国や企業において他の課題に先行した取り組みが行われてきましたが、再生エネルギー施設が自然環境へダメージを与えたり、地域社会の住環境が悪化したりといった負の影響も想定されます。それらをしっかりと把握して負の影響を減らし、複数の課題にとってプラスになるような新しいソリューションを生み出し、新しいビジネスモデルを開発していくことが、これからの時代に企業が行うべき対応です。

ホリスティックアプローチの実践
鍵となるのは意思決定を支援するデジタル活用

こうしたホリスティックアプローチを実践する上で鍵となるのは、意思決定を支援するデジタルツールの活用です。これにより、データに基づく評価の実施や潜在的な影響の可視化を行い、対応策を提示することが可能です。PwCドイツによるレポートでは、「意思決定インテリジェンスシステム」が2030年までに最も大きな影響を与える技術であるとされています。意思決定インテリジェンスシステムとは、履歴データとリアルタイムデータを使用して、複数シナリオや関連指標の潜在的な影響を可視化し、意思決定のエビデンスとなる案を提示する技術やツールのことを指します。一方で、1つの施策がもたらすトレードオフとシナジーの解明には、多くの要因を踏まえて結果をシミュレーションする必要があります。こうしたシミュレーションをマンパワーで実施するのには限界があり、意思決定を支援するデジタルツールの活用は必要不可欠です。意思決定を支援するデジタルツールの具体的な活用方法として、大きく4つが考えられます。

活用1. 現行事業アジェンダ間の相互影響評価

現行事業のアジェンダ間の相互影響(トレードオフ/シナジー)をホリスティックな観点から評価することです。例えば、企業がすでに脱炭素関連の取り組みを推進していたとしても、その取り組みが生物多様性や人権といった他のアジェンダとトレードオフな状態にある場合には、その取り組みの見直しが必要となります。その場合は、現状把握のために現在の個別最適型の取り組みについてデジタルツールを活用して評価し、その是非を再検討します。

活用2. 打ち手の提示

現行事業の評価後には、その改善に向けた施策の実行が必要です。こうした打ち手の検討においてもツールを有効活用できます。可視化・診断ツールでは、経済効率やトレードオフ/シナジーを踏まえた打ち手、サプライチェーンリスクに対応するための打ち手などを複数かつ優先度と合わせて提示することが可能です。現行施策の評価と同様、「どの項目を優先すべきか」といった経営判断を踏まえて意思決定する際に役立ちます。

活用3. 提案力の強化

デジタルツールの活用による相互影響の可視化は、顧客に対するSX製品の価値訴求に効果的です。SXの推進を妨げる要因の1つに、経済合理性の問題があります。つまりSXの取り組みにかかるコストを製品に転嫁した結果、高価格を理由にSX製品が顧客から選択されないという課題です。しかし、デジタルツールを活用して製品ごとのホリスティックな評価を実施し、その可視化データを顧客への提案に活用することで、SX製品の価値を顧客により深く理解してもらうことが可能となります。

アルミ材とプラスチック材の代替検討のイメージ

活用4. 開示対応

総合的な開示シミュレーションと、それによる開示戦略の立案と関連業務の効率化が挙げられます。企業はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)、さらにはCSRD(企業サステナビリティ報告指令)やSSBJ(サステナビリティ基準委員会)といった開示規則への対応が求められています。また、TNFDはTCFDとの統合開示を推奨しており、開示においても課題間の統合的理解が求められてきています。一方で、そうした開示関連の業務は煩雑で、その業務負荷の低減はSX推進におけるの課題の1つです。
私たちは、意思決定を支援するデジタルツールを活用して、企業が実施するTCFDやTNFD、さらには今後義務化の可能性があるTISFD(不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース)のレポーティングに資する情報・データを提供することを想定しています。

このように、ホリスティックアプローチの実践には、意思決定を支援するデジタルツールの活用が不可欠です。一方で、そうしたデジタルツールを最大限活用するためには、その精度を高めるために必要なデータ基盤を構築した上で、ツールによる評価とデータ基盤の構築というサイクルを回すことが必要です。まずは優先課題に対して一連のサイクルを実施し、対象を徐々に拡大させていくことで、より高度なホリスティックアプローチによるストラテジーを実現できます。

PwCのサービス

PwCは、ホリスティックアプローチによるサステナブルなビジネスモデルの変革実現に向けて、戦略の策定から実行まで一貫して支援します。

  • サステナビリティ経営戦略策定支援
  • サーキュラーエコノミー戦略策定支援
  • プラットフォーム構築支援
  • PoC(概念実証)実施計画策定
  • プレマーケティング実施支援
  • サプライチェーン変革
  • ビジネスモデルトランスフォーメーション支援
  • 環境社会価値を訴求するマーケティング戦略策定支援
  • M&A実施支援、JV(ジョイントベンチャー)支援
  • ロビー活動、ルール形成支援
  • 中期経営計画とサステナビリティ経営戦略作成支援
  • サステナブルビジネスのマーケティングおよび商品企画におけるエビデンス提供

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主要メンバー

屋敷 信彦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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髙橋 良之

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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市來 南海子

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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齊藤 三希子

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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小峯 慎司

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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山口 貴之

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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