社会構造の変化に伴い、企業経営の効率化やESGといった社会的要請への迅速かつ持続的な対応が求められる中で、経営における企業不動産（Corporate Real Estate ：CRE）の重要性が高まっています。PwCは、ワンストップでの支援により、グループ企業を含む企業不動産全体の有効活用による企業価値向上に貢献します。

企業不動産戦略

企業不動産戦略とは、中長期的かつ全社的な経営戦略の視点から企業価値の最大化を目指し、その他の経営資源とともに企業不動産を最適かつ効率的に運用する方針や技術を指します。

PwCアドバイザリーは、企業が企業不動産を戦略的に捉え直すことで、単なる不動産管理を超えて、企業の競争力強化や持続的成長に直結する重要な役割を果たすものと考えています。事業戦略と不動産資産の整合性を図りながら、資産のオフバランス化やROIC（投下資本利益率）の最適化、キャッシュフロー改善を実現します。

また、企業不動産戦略は、事業の柔軟性を高め、意に沿わないM&Aへの対応やリスク管理の強化にも寄与します。さらに、デジタル技術や環境配慮を取り入れた運用により、企業は変化する市場ニーズや脱炭素社会に対応し、社会的評価を向上させることができます。これらの取り組みは、企業の価値向上と競争優位性を確立するための基盤となります。

PwCアドバイザリーは、企業不動産における戦略的な対応について、企業価値向上の有効な施策であると捉えています。「企業不動産の最適化」と「事業変革による価値創造」の循環を実現し、個別不動産におけるファシリティマネジメントの観点のみならず、経営戦略策定の中での最適な不動産活用の実現を支援します。

図表1：企業不動産における価値創造の循環

PwCのサービス

PwCアドバイザリーは、①企業不動産戦略の策定、②企業不動産戦略の実行、③企業不動産の活用・運営の各フェーズと、これら全般に係るガバナンスやリスクへの助言を行うだけでなく、ジョイントベンチャーやパートナリングなどを含む中長期的な不動産戦略の策定や実行、関連サービスの開発や実装などを包括的に支援します。

不動産戦略の主要な検討要素

全社戦略／個別事業戦略との整合

自社の中長期的な事業成長やシナジー創出を目指し、企業不動産を最適化

保有不動産の最適化

資産のオフバランス化や不動産ポートフォリオ最適化を通じ、キャッシュフローの改善、資産価値向上
最適な不動産ポートフォリオの実現に向け、組織、税務、財務リスクの観点でのストラクチャー構築支援
企業不動産戦略に合致した組織体制、管理体制の強化による効率化支援

デジタル・データの利活用

デジタル技術や生成AI、データ分析などを活用して、不動産運用のスマート化を実現

サステナビリティの実装

脱炭素や環境貢献を実現する施設運営戦略を策定し、持続可能な経営を実行

図表2：PwCアドバイザリーが提供する企業不動産戦略の策定・実行支援サービス

主なサービス

企業不動産の現状分析・企業不動産のポートフォリオ戦略策定支援

企業不動産の現状分析やポートフォリオ戦略の検討により、保有する不動産資産に対する評価や戦略的な管理を行うことで、経営資源としての不動産を最大限に活用し、経営目標の達成に貢献します。

具体的な内容には以下のようなものが含まれます。

現状分析

不動産の評価：保有する資産の市場価値や収益性、将来価値を算定
不動産の使用状況：資産の利用状況や稼働率を把握
リスクの評価：不動産市場の動向、関連法規の変化、経済状況など、資産に与えるリスクを分析

ポートフォリオ戦略策定

目的の設定：企業の戦略的目標に基づく、不動産ポートフォリオの目的設定（例：コスト削減、資産価値の向上など）
ポートフォリオの最適化：資産の売却・購入、バリューアップ、グリーンフィールド開発（スマートタウン・街づくりなど）による資産・事業ポートフォリオの最適化
環境への配慮：ESG基準を考慮した不動産管理方針の策定、持続可能性の向上

図表3：企業不動産のポートフォリオ戦略を見据えた現状分析・整理

個別不動産の施策検討支援

現状分析やポートフォリオ戦略を検討した後、遊休地や不要となる不動産、さらなる事業展開のために必要な資産といった項目ごとに、以下のような複合的な観点で検討します。

企業の意向（例：売却・賃貸などの遊休地活用手法、実施時期、許容可能なリスク、財務面など）
買主や借主の意向（例：自用、収益物件、アセットなど）
法規制

検討に際しては税務効率や会計、ファイナンスにおける論点を踏まえつつ、ジョイントベンチャー、売却などの多様な手法を比較し、最適かつ現実的な提案を取りまとめます。

図表4：個別不動産の施策検討支援

個別不動産の実行支援

昨今の不動産事業では、さまざまな関連事業やサービスの開発・実装が求められています。

PwCアドバイザリーは、不動産領域のみならず、交通やモビリティ領域の先端技術の活用を通じた地域の利便性向上や、エネルギーの最適化によるサステナビリティ対応、防犯・防災などのレジリエンス強化、データの利活用といった多様な領域の専門性を有しています。個別不動産の用途提案だけではなく、当該不動産を中心としたさまざまな関連事業・サービスの開発と実装をワンストップで支援します。

個別不動産の施策実行支援

施策実行においては、適切なプレーヤーや共同事業パートナー（仲介会社、ゼネコン、ハウスメーカー、テナントなど）を選定し、最適な推進体制と全体スキームを構築してプロジェクトをリードします。

使用中の不動産（工場、倉庫、事務所など）については、建て替えや移転といった手法を検討し、それに対応する適切なプレーヤーを選定します。建て替え、移転いずれのケースも、「移転先に関するプロジェクト」と「移転元に関するプロジェクト」を同時並行で推進する必要がありますが、PwCアドバイザリーはこのプロセス全体をリードします。

また、PwCアドバイザリーは第二種金融商品取引業、宅地建物取引業の免許を有しており、企業のニーズに応じた不動産の流動化や売買・賃貸借仲介の実務面での支援も可能です。

不動産関連サービスの開発支援

昨今の不動産事業では、個別不動産の建設や運用に留まらず、不動産を軸として住民や来訪者、隣接する不動産やエリア全体に関わる多様なステークホルダーのニーズや要請に応える機能やサービスを提供し、資産価値やエリア価値の向上を図るケースが増えています。

PwCアドバイザリーは個別不動産の売買や管理のみならず、交通やモビリティ、医療など地域のニーズに対する先端技術を活用した利便性の向上施策、エネルギーの供給や運用の最適化などサステナビリティへの対応、防犯・防災などのレジリエンス強化、データの利活用といった課題において多様な専門性を結集し、当該不動産を中心とした関連事業・サービスの開発と実装をワンストップで支援します。これにより、不動産事業領域の拡大や新規事業の開発など、経営の多角化を実現します。

図表5：不動産関連事業・サービスの開発プロセス

不動産戦略のアップデートによる事業ポートフォリオの保持

近年、不動産事業を取り巻く外部環境にはさまざまな変化が生じています。

具体的には、インフレや金利上昇による資産価値や不動産収支の悪化、建設・不動産に関する事業環境の変動による資本コスト上昇の懸念、さらに大規模再開発の増加などが挙げられます。

これらの外部環境の変化を受け、不動産事業を営む企業では、アクティビストによる資本効率／収益性といった観点からの不動産売却や、不動産事業の切り離しを要求される可能性もあります。

このような状況に対しては、他の再開発との差別化、不動産を介したコンテンツ事業など、異業種への参入や新規事業の開発を含め、具体的な将来構想を描いたビジョンやビジネスプランを事前に整備し、中長期の経営計画に組み込むことが重要です。

PwCアドバイザリーは、不動産開発事業を踏まえた総合的な企業戦略の検討・策定についても支援します。

図表6：不動産戦略の再検討・アップデートの必要性

企業不動産を活用した不動産開発と関連サービスの開発の検討、実行支援

昨今、不動産に対する期待値は変化し、従来の賃貸や売却などによる収益性だけでなく、社会的要請として高まるESG（環境・社会・ガバナンス）との整合性や、都市としての持続性、地域との共創を見据えた社会的価値や機能の体現が求められています。企業はこうした社会的要請や社会課題に対応することで、不動産開発を「企業価値向上に資する戦略的な投資事業」と位置付けることができます。

また、企業不動産を活用したスマートシティやスマートタウンの開発を通じて、住民や地域のニーズを踏まえた機能を提供する事業やサービスを提供することで、新たな事業領域への参入も可能となります。

PwCアドバイザリーはさまざまな業界に精通するプロフェッショナルを有し、不動産事業の開発のみならず、不動産の価値を最大化するための関連事業やサービスの開発を総合的に検討することができます。これにより、企業にとって最善な企業不動産戦略の選択とその実現を支援します。

図表7：不動産事業が提供する機能やサービスの最適化の検討

主要メンバー

池田道生

パートナー, PwCアドバイザリー合同会社

及川智郎

パートナー, PwCアドバイザリー合同会社

芹口宗一郎

ディレクター, PwCアドバイザリー合同会社

石井亮