
行動経済学 人間のためのデザイン
人間の行動は、さまざまな影響を受け、時には最適解から外れることもあります。本稿では、顧客や従業員などとの関係に焦点を当て、企業が取るべき対応策を提示するとともに、日本市場での可能性について解説します。
昨今の世界経済から見た日本企業の企業価値の低さや持続性の低さに対し、日本の経営者は非常に危機感を抱いています。特に持続性に対する危機感は、PwCが実施した第27回世界CEO意識調査*1(世界105カ国・地域の4,702名のCEOに対して2023年10月から11月にかけて実施)の結果でも定量的に示されています。この調査結果では、現在のビジネスのやり方を継続した場合に10年後に自社が経済的に存続できないと考えているCEOの割合は、世界全体が45%であったのに対し、日本のCEOは64%と、日本企業の経営者の将来に対する危機感が強いことが明らかになっています。
この問題の背景には、価値創造を変革していくにあたっての、自社の硬直的なプロセスや従業員のスキル不足などが阻害要因としてあると考えられています。価値創造と深く関係するマーケティング活動においても同様で、例えば、近視眼的なマーケティング活動を実施し、その結果一時的に話題になるだけの短期的なアクションにとどまってしまっていることなどが考えられます。
企業価値を高め、持続性を保ち、良好なマーケティングの投資収益率(ROI)を確保するには、財務価値だけではなく非財務価値も向上させることを視野に入れる必要があります。つまり、誰に(Who)、どの商品/サービスを売るために(What)、どういったコンテンツやメッセージで訴求すべきか(How)を定義し、どのようにビジネスのリターンを得ていくのかについて、具体的かつ中長期的な戦略の立案・策定と、適切なマーケティング投資の設計が必要とされています*2。
今回、PwCコンサルティング合同会社が経営層に対して実施したブランドマーケティング・顧客戦略実態調査*3では、多くの企業が具体的な戦略設計を行うことなく、部分的な取り組みに終わっており、マーケティング投資を最適化できていないことが明らかになりました。一方で、具体的な戦略の設計を重視している企業は、ビジネスのリターンを得られていることも分かっています。
本稿では、どれくらいの企業が適切なマーケティング投資を実施できているのか、そして実際にビジネスのリターンを獲得している企業は具体的にどのような取り組みをしているのかを検証し、これから企業価値を向上させるための最適なマーケティング投資をしたいと考えている企業に対して提言を行います。
*1 PwC「第27回世界CEO意識調査」(2024)(2024年6月6日閲覧)
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/ceo-survey/2024.html
*2 参考:PwC「CMOとマーケティングリーダーが今やるべきこと」(2023)(2024年6月6日閲覧)
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/pulse-survey_business-reinvention_cmo.html
*3 ブランドマーケティング・顧客戦略実態調査:PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)は、2024年2月より日本企業に対してブランド・マーケティング戦略や顧客戦略に関する調査を実施し、売上高50億円以上の企業に所属する100名の経営層(経営者・役員/CxOクラス・本部長・事業部長クラス)から回答を得ました。
*4 図表:「各戦略重視/実施企業」は以下の9つの戦略・目標を「かなり重視」「具体的に設計」している企業数をベースとし、そのうち売上高・売上高総利益率にプラスの影響があった割合の平均を算出し、記載しています。
①顧客起点を重視した具体的な経営目標がある ②顧客戦略に基づいた経営・投資判断を全社的に行っている ③マーケティング・営業活動をするにあたって、各ターゲットへのアプローチやナーチャリングの戦略がある ④具体的に中期目標から逆算し、短期プランを設計している ⑤「顧客ターゲティング」をかなり重視している ⑥「顧客理解の促進」をかなり重視している ⑦「データ分析の強化」をかなり重視している ⑧「マーケティングのDX化」をかなり重視している ⑨「カスタマーエクスペリエンスの向上」をかなり重視している
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