テクノロジー・メディア・情報通信業界における生成AI - 構想から現実へ

調査の重点事項

本調査は、生成AIの活用範囲と、インドのテクノロジー・情報通信・エンタテイメント&メディア(TMT)企業へのインパクトを理解することを主な目的として実施されました。調査では、導入状況とユースケース、実装アプローチ、企業のオペレーションとサービスへのインパクト、および生成AI導入における課題の理解と対処を主な焦点としています。

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生成AIが戦略的優先事項のトップ5にランクインしていると回答した企業の割合(トップ3に入っていると回答した企業は42%)
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最初の生成AIソリューションを既に実装している企業の割合
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実装に向けた具体的な戦略ロードマップを有するか、全社で利用可能な生成AIアプリケーションが少なくとも1つ存在する(またはその両方)と回答した企業の割合
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既に生成AIのインパクトを実感しており、期待されるROI(投資収益率)に向けて順調に進んでいると回答した企業の割合。他に、21%の企業が来年中に実現すると予想している。
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生成AIの導入が最も進んでいる領域:製品/サービスの拡充
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主なインパクトと提供可能な価値:業務委託(アウトソーシング)、収益評価、カスタマーエクスペリエンス
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最も大きなディスラプション(創造的破壊)が生じる機能:セールス&マーケティング(「顧客の分類とターゲット設定」で最も大きなディスラプションが生じるユースケースが存在)
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最大の導入機会が存在する領域:イノベーションとリサーチ
課題とリスク軽減戦略

技術インフラの準備は、生成AIを実装する上で企業が直面する、ビジネス上の最大の課題である。

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導入時の課題を軽減するために、取締役会レベルのレビューと議論を実施している企業の割合

基本方針

生成AI導入における最大の懸念はセキュリティとプライバシーである。

policy framework

自社の基本方針がセキュリティに関する懸念に対処できるほど成熟していないと回答した企業の割合

従業員の能力向上

対象を絞ったワークショップと学習モジュールの実施は、従業員が生成AIのベネフィットを活用できるようにするための最も重要なアプローチである。

Success stories Impact

生成AIの導入を奨励する目的で、従業員のイニシアチブを高めるための資金を拡充していると回答した企業の割合

Success stories Impact

生成AIを優先順位のトップ5に入れている企業のうち、66%が生成AIイニシアチブに「高額の」投資をしていると回答

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回答企業の23%が生成AIについて「非常に高い」知識を有することが示されたが、実際の利用頻度は26%

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回答企業の58%が生成AIの実装に向け外部コンサルタントとの共同作業を検討している

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40%が実装に向けた具体的な戦略ロードマップを策定済み、26%が検討段階にある

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最適と考えるプラットフォームと展開モデル:カスタムモデルを備えたプライベートクラウド

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最大のインパクト: 業務委託(アウトソーシング)の変化およびグローバルな収益源とコスト構造の再評価

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生成AIの導入推進に際し最も効果的な従業員へのインセンティブ:報酬と評価

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実装時の最大の懸念事項:データの可用性/準備

最も適したユースケースおよびそのインパクトの性質:

  • 製品開発(コーディングとテストの自動化)」および「インテグレーションと展開」が、テクノロジー企業に最も適したユースケースであることが示された。
  • コーディングとテストの自動化の場合、主なインパクト領域は「イノベーションと新製品開発」と考えられ、インテグレーションと展開では「製品/サービスの拡充」と予想される。
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生成AIを優先順位のトップ5に入れている企業のうち、58%が生成AIイニシアチブに「中程度の」投資をしていると回答

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回答企業の23%が生成AIについて「非常に高い」知識を有することが示されたが、実際の利用頻度は26%

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回答企業の58%が生成AIの実装に向け外部コンサルタントとの共同作業を検討している

Success stories Impact

50%が生成AI導入の検討段階にあり、25%が実装に向けた具体的な戦略ロードマップを策定済み

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最適と考えるプラットフォームと展開モデル:カスタムモデルを備えたプライベートクラウド

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最大のインパクト:個別最適化されたカスタマーエクスペリエンスとエンゲージメントの向上を目的とした利用

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生成AIの導入推進に際し最も効果的な従業員へのインセンティブ:イニシアチブに対する資金の拡大

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実装時の最大の懸念事項:技術インフラの準備

最も適したユースケースおよびそのインパクトの性質:

  • コンテンツの生成」と「個別最適化されたマーケティング」がエンタテイメント&メディア企業に最も適したユースケースであることが示された。
  • コンテンツ生成の場合、主なインパクト領域は「製品/サービスの拡充」と考えられ、個別最適化マーケティングの場合は「市場投入」と予想される。
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生成AIを優先順位のトップ5に入れている企業のうち、67%が生成AIイニシアチブに「高額の」投資をしていると回答

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回答企業の22%が生成AIについて「非常に高い」知識を有することが示されたが、実際の利用頻度は20%

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48%の企業が生成AIのインハウス/インソースによる実装を検討していると回答

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50%が生成AI導入の検討段階にあり、30%が実装に向けた具体的な戦略ロードマップを策定済み

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最適と考えるプラットフォームと展開モデル:
オンプレミス環境(学習済みオープンソースモデルを利用)

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最大のインパクト: 新規サービスの提供、新たなパートナーシップの締結、損益の変化

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生成AIの導入推進に際し最も効果的な従業員へのインセンティブ:報酬と評価

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実装時の最大の懸念事項:データの可用性/準備

最も適したユースケースおよびそのインパクトの性質:

  • 設備・サービスの提供準備やメンテナンスにおけるリアルタイムサポート」と「個別最適化されたプロモーションと価格設定」が、情報通信企業にとって最適なユースケースであることが示された。
  • 設備・サービスの提供準備やメンテナンスのリアルタイムサポートでは、主なインパクト領域は「イノベーションと新製品開発」と考えられ、個別最適化されたプロモーションと価格設定では「市場投入」と予想される。

はじめに

生成AIは、知見を生成し、大規模なデータセットを処理することによって、コンテンツを作成し、反復的なタスクを自動化し、意思決定プロセスを強化する機能を備えていることから、さまざまな業界で導入されています。TMTセクターでは、個別最適化されたコンテンツの開発、顧客サービスの自動化、製品開発、組織の全体的な運用効率の向上に関連するタスクに生成AIが統合されています。ほとんどの産業が、変化の激しい事業環境でイノベーションを実現するために生成AIを活用しています。AI技術の進歩とこのように競争の激しい市場環境が、生成AIの急速な普及の要因となっています。企業はこの技術の実装に熱心な姿勢を見せており、ほとんどの企業が生成AIの導入を検討していますが、ワークフローへの生成AIのインテグレーションにはまだいくぶん消極的です。多くの企業のリーダー層は、生成AIをワークフローに統合することのメリットを認識してはいるものの、ROIの不確実性、インフラの不備、データのプライバシーとセキュリティに関する懸念から、導入をためらっている。

生成AIには多数のアプリケーションが存在することから、その実装については企業が有する特定のニーズを満たすよう調整することが可能です。透明性、監督機能、説明責任、技術的な堅ろう性、安全性、プライバシー、データガバナンス、環境の健全性を必要とする課題には、適切な実装と展開モデルを慎重に選択することにより対処できます。実装のアプローチは、社内開発から生成AIに精通した企業との合併や買収までさまざまです。どのような展開モデルを選ぶかについては、予算、スキルを有する従業員の利用可能性、プライバシーとデータセキュリティの要件の程度により選択肢が異なります。

このように課題は存在するものの、TMT企業ではインドの他のセクターと比較して生成AIの導入が進んでおり、組織のビジネスモデルにイノベーションとディスラプションをもたらしています。

TMT企業はアーリーアダプターとして、生成AI技術に関連するリスクや不確実性にいち早く取り組んでいます。長期的に生成AIの価値を最大化するためには、TMT企業は戦略的アプローチを追求し、倫理的な観点に基づきテクノロジーを業務に統合する必要があります。生成AIを導入するためのステップとしては、責任ある導入のための堅ろうな基本方針の考案、生成AIのユースケースと適用に関する評価、導入を促進するための十分なリソースと資金の割り当て、リスクを相殺するための協力作業などが挙げられます。

本調査は、インドのTMTセクターにおける生成AI導入の現状を明確に示し、AI主導の変革に向けた主なトレンド、課題、およびベストプラクティスを明らかにすることを目的としています。調査には業界トップクラスの専門家が参加し、対象セクターにおける生成AI導入の機会およびその障害となるものに関する貴重な見解を共有しています。

業界のステークホルダーによって共有された見解と経験を統合することにより、本調査は、インドのTMTセクターにおいて、責任があり、かつ持続可能な生成AI導入に向けた戦略的意思決定に必要な情報の提供や、対話の促進、また協力的な取り組みを推進することにも焦点を当てています。本レポートでは、調査結果に基づき、ROIを評価しつつ導入の機会およびインパクト領域を特定し、適切な実装アプローチや配備・展開モデルを選択し、生成AIを利用する従業員の準備が整うような生成AIの導入アプローチを推奨しています。

本レポートに記載した知見は、企業組織、政策立案者、研究者、およびインドのTMTセクターにおける生成AIの未来形成に対して投資をするその他ステークホルダーにとって、貴重なリソースとなります。

生成AIとTMTセクター

インドのTMTセクターにおける生成AIの利用は増加していますが、TMTセクター内での認識と実装のレベルはさまざまです。TMTセクターの企業は、個別最適化の向上、予測分析、コスト削減といった生成AIのベネフィットを活用しています。しかしながら、データプライバシー、倫理的配慮、および人員の解雇に関する懸念は根強く残っています。TMTセクターの企業は、生成AIを活用したイノベーションと効率性のバランスを取りつつ、テクノロジーの導入に伴う課題に対処すべく努力を重ねている状況です。

TMTセクターは生成AIに対して前向きな見通しを示しています。導入の最前線に立つのはテクノロジー業界で、次に活発な業界はエンタテイメント&メディアです。情報通信業界も生成AIとその応用の可能性を模索していますが、各企業のリーダー層の反応はまちまちです。2024年において、インドの技術サービス提供事業者はAIの利用から得られるより大きなチャンスと成長に注目しており、生成AI技術を企社内およびクライアントへの製品やサービスに組み込むための活動を実施している。

質問:貴社にとって生成AIがどのようなインパクトを与える可能性があるか、1~5の5段階でお答えください。1はディスラプション(創造的破壊)のレベルが最小(短期的なトレンド)、5はディスラプションのレベルが最大(長期にわたる破壊力)を意味します。

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テクノロジー業界では回答企業の68%が生成AIを長期的なディスラプターと捉えており、エンタテイメント&メディア業界が51%、情報通信業界が40%と続いています。生成AIを短期的なトレンドと見なしている回答企業はありませんでした。

生成AIのインパクトを測定し、組織内の変化を確認するまでに必要な期間について尋ねたところ、テクノロジー業界の回答企業の半数が、生成AIの導入によるインパクトは既に現れていると答えました。。エンタテイメント&メディア業界の回答企業の40%は、1~2年以内にビジネスに顕著な変化があると予想しており、生成AIの導入に前向きな姿勢を示しています。情報通信業界では、回答企業の意見は二分されています。半数の回答企業が1年以内に実際の効果が現れると予想する一方で、残りの半数は1~2年以内と予想しています。

テクノロジー業界と情報通信業界では、生成AIを長期的なディスラプターと見なしている企業の半数が、その影響は近い将来(1年以内)に現れると予想している。また、エンタテイメント&メディア業界では30%の回答企業が同じ予想をしている。

質問:インパクトが顕在化するまでにどのくらいの時間がかかると思いますか?

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生成AIの普及は、Gemini、ChatGPT、GitHub Copilot1などの生成AIツールが容易に利用可能となったことに起因している。これらのアプリケーションは使い勝手の良いインターフェイスと学習済みモデルを提供し、個人や組織はプロジェクトやワークフローで生成AIを容易に活用できます。TMTセクターの企業の中でも、テクノロジー企業では生成AIの認知度と利用率が高いことが示されました。

結論として、生成AIは、マーケティング、顧客サービス、データ分析、製品の製作など、情報通信業界の多くの領域に影響を与えることが期待されていることが分かります。また、生成AIの利用は、エンタテイメント&メディアやテクノロジー企業があらゆる年齢層のユーザーに個別最適化されたコンテンツを提供し、コンテンツ開発プロセスを合理化し、革新的なコンセプトの追求を可能とします。

生成AIはかなり前から存在していますが、その有用性が業界全体で認められたのはここ数年のことです。多くの企業がまだ生成AIに対する自社のアプローチに不安を抱いていたり、模索していたりする一方で、ほとんどの企業がワークフローをより簡単、迅速、かつリソース集約型にする上でのベネフィットと重要性を認めています。

テクノロジー業界では、回答企業の半数近くが生成AIについて非常に高い知識を有することが示されています。情報通信業界では、回答企業の40%が日常業務の非常に多くの分野で生成AIを利用していると答えています。エンタテイメント&メディア業界では、回答企業の生成AIに関する知識は中程度(45%)から高レベル(28%)という結果が得られています。

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エンタテイメント&メディア業界とは対照的に、情報通信業界では、生成AIの調査と利用、そしてそこから得られるベネフィットが顕著に増加しており、60%が日常業務での生成AIの利用頻度が「非常に多い」または「多い」と答えています。また、業務の時間節約に寄与していることから、各企業はテクノロジーのさまざまなユースケースを探求する意欲があると回答しています。

さまざまな組織の専門家は、生成AIが生産性を向上させ、大きな経済成長をもたらす可能性があることを認識しています。その可能性と先行企業が優位な立場に立つことも理解しているため、回答企業の大部分は生成AIを組織の優先事項トップ5に挙げています。しかし、エンタテイメント&メディア業界の回答企業の35%と情報通信業界の回答企業の40%は、生成AIを優先事項として認識していません。

テクノロジー業界は生成AIを重点分野に挙げており、回答企業の54%が戦略的優先事項のトップ3に挙げている。エンタテイメント&メディア業界でも生成AIを重視する傾向が強まっており、回答企業の38%が戦略的優先事項のトップ5に挙げている。情報通信業界では、回答企業の40%が生成AIを戦略的イニシアチブのトップ3として優先している。

質問:生成AIは現在、貴社の戦略的優先事項の中でどの位置にありますか?

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トップ3またはトップ5に挙げた企業のうち、テクノロジー業界および情報通信業界の約66%が生成AIイニシアチブに「高額の」投資を行っていると回答している。

質問:生成AI主導の変革や介入への投資は、貴社の規模に照らしてどの程度の金額ですか?

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エンタテイメント&メディア業界では、トップ3またはトップ5に挙げた企業のうち約60%が、生成AIイニシアチブへの投資を「中程度」と回答しています。

企業のリーダー層は、生成AIの戦略的重要性と、製品の開発方法やサービスの提供方法を変革する可能性を認識しています。各業界では、さまざまな段階で生成AIの実装が進んでいます。例えば、テクノロジー業界はアーリーアダプターであり、ほとんどの組織が既に少なくとも1つの生成AIユースケースを持っています。生成AIの導入は、顧客の期待に応える必要性、労働市場の変化、業界内での競争力の維持など、さまざまな要因により推進されています。

TMTセクターの回答企業の33%は、実装の準備ができた具体的な戦略ロードマップを構築しており、さらに32%は、全社規模で少なくとも1つの生成AIアプリケーションを実装している。

質問:貴社における生成AIの導入状況をお答えください。

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テクノロジー業界では、生成AIとのインテグレーションに対する注目が顕著であり、40%の企業がアプリケーションの展開を準備しており、2つを超える領域での実装に向けた具体的な戦略ロードマップを用意しています。一方、エンタテイメント&メディア業界における導入状況はさまざまであり、35%が検討段階にあります。また、情報通信分野では、回答企業の50%が現在検討中であると回答しています。

回答企業の大部分(70%)が、生成AIが業務委託(アウトソーシング)、収益評価、カスタマーエクスペリエンスに影響を与えると予想している。

質問: 生成AIは貴社の現在のビジネスモデルや提供可能な価値の差別化にどのようなインパクトを与えると思いますか?

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エンタテイメント&メディア業界の回答企業が生成AIによって最もインパクトを受ける領域はカスタマーエクスペリエンスだと考える一方で、テクノロジーと情報通信業界の回答企業はアウトソーシングと収益評価における変化を予想しています。生成AIの導入は、新しいサービスの開発、パートナーシップの構築、およびオペレーションの変更につながる可能性も存在する。BCGとNASSCOMのレポートによると、インドのテクノロジー企業の66%は、生成AIについて詳細なインパクト分析を行い、その新しい役割を定義しています。さらに、ソフトウェアエンジニアと共にCoPilotの試験的運用を実施した大手企業では、満足度および従業員の健全性が60~75%向上したことが示されています2


生成AIの実装戦略

企業が今後も競争力と適合性を維持するためには、意思決定者が生成AIの重要性を理解し、ビジネスプロセスに実装するための堅ろうな戦略を策定する必要があります。この新技術を導入するための重要なパラメーターは、ビジネスのニーズ、研究開発(R&D)と実装に割り当てられる予算、および企業が生成AIの利用からベネフィットを得ることができる領域の存在です。

テクノロジー企業やエンタテイメント&メディア企業は生成AIの実装に外部コンサルタントを利用する傾向がある一方で、情報通信企業は生成AI実装戦略を社内で開発することを選択している。

質問:貴社では、生成AIのユースケースをどのように計画または実装していますか?

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TMTセクターでは、さまざまな業務で生成AIツールの導入が既に進行中です。生成AIの実装に関する判断は、組織の技術的習熟度、リソースの配分、時間の制約、各ユースケースの特徴や性格など、さまざまな要因に依存します。生成AIのユースケースを外部コンサルタントと共同で調達することで、組織はブレーンストーミングから開発、ビジネス価値の割当て、規模を拡大したプロジェクトへの移行まで、生成AIの取り組みを迅速に開始できます。その一方で、社内で生成AIモデルを構築した場合、組織のニーズに最も適した機能と特徴の構築が保証されます。本調査によると、テクノロジー企業とエンタテイメント&メディア企業の半数は外部コンサルタントと共同で調達を行い、情報通信企業は生成AIのインハウスによる実装を選択しています。

企業が選択する実装の形式には、展開型モデルとプラットフォームが存在します。BERTやLLaMa3といった学習済みオープンソースモデルには簡単にアクセスすることが可能ですが、GPT-4、Gemini/PaLM 25などの学習済み占有モデルを利用するにはライセンスが必要です。独自のデータを使用してモデル全体をゼロから構築する企業があるほか、カスタムモデルを好む企業が存在します。プラットフォームは、必要なセキュリティレベルと予算に応じて、プライベート、パブリック、ハイブリッドに分けられます。

TMTセクターに属する企業の39%は、生成AIソリューションの展開にプライベートクラウドを選択している。その中でも大多数は、独自のデータを使用してモデルをゼロから学習させる、カスタマイズされたモデルを選択している。

質問:どのタイプのプラットフォームに生成AIソリューションを展開しましたか、または展開を計画していますか?組織で一般的に好まれている展開モデルはどれですか?

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テクノロジー業界では回答企業の半数近くがプライベートクラウドを選択しており、そのうち50%以上がカスタムモデルを利用している。エンタテイメント&メディア業界では3分の1近くの企業がプライベートクラウドを好み、その46%がカスタムモデルを選択している。情報通信業界では40%がオンプレミスのプラットフォームを選択し、その大多数が学習済みオープンソースモデルを利用している。

データ分析や製品設計から、コンテンツ生成や個別最適化されたチャットボットに至るまで、生成AIは幅広い機能を提供しています。しかし、これは万能のソリューションではありません。 生成AIの有効性は、適切なデータセットで学習することにより、特定のビジネス上の課題や目的に合わせて調整することで実現されます。コストの最適化、製品/サービスの拡充、セールス&マーケティング、従業員/カスタマーエクスペリエンス、内部報告、意思決定は、生成AIを導入することでプラスのインパクトを得られる領域の一部です。

テクノロジー業界とエンタテイメント&メディア業界で既に生成AIソリューションを実装している企業では、製品/サービスの拡充を重視し(それぞれ97%/80%)、情報通信業界ではコストの最適化(100%)に明確な重点を置いている。

質問:貴社が生成AIのユースケースを既に実装している(または実装中である)場合、それはどの領域に固有のユースケースですか?

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生成AIの実装領域に関しては、テクノロジー業界はコスト最適化と従業員/カスタマーエクスペリエンスの向上を優先し、エンタテイメント&メディア業界は製品/サービスの拡充を重視する傾向があります。情報通信業界はコスト最適化が継続的な優先事項となっています。

全ての業界の回答企業が、イノベーションとリサーチの領域で生成AIを導入する機会が最大であると認識しており(業界により75%から90%)、この領域が技術の導入によるインパクトが最も大きいことを示している。

質問:生成AIを実装する最大の機会はどの領域にあると思いますか?

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生成AI技術の実装には、資金投資、熟練した人材、計算基盤、包括的な学習プログラムなど、さまざまなリソースの配分が必要となります。企業が新技術への投資を検討するのはROIに寄与する場合のみであり、生成AIの場合はROIにプラスの影響をもたらします。

全ての業界における回答企業の大部分、特にテクノロジー業界と情報通信業界では、実装した生成AIユースケースの効果を既に実感しており(それぞれ44%と40%)、目標とするROIの達成に向け順調に進んでいる。

質問:既に実装されている(あるいは実装中の)生成AIのユースケースが目標とするROIを達成するには、どの程度の期間が必要だと思いますか?

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テクノロジー業界の回答企業(32%)は、今後1年以内に目標とするROIを実現できると予想しています。しかしながら、情報通信業界の回答企業の30%は、目標とするROIの達成時期が不透明だとしています。

生成AIを最大限に活用するためには、新規技術の導入プロセスに従業員を関与させることが重要です。企業は従業員のテクノロジーに関する精通度と生産性を向上させ、テクノロジーを最大限に活用し、ソリューションと組織の従業員の両方にとって最適なパフォーマンスを引き出すための方法を模索しています。

TMTセクターの70%近くの企業は、対象を絞ったワークショップや学習モジュールを実施することで、従業員が生成AIを受け入れ、そのベネフィットを受けられるよう準備を行っている。

質問:生成AIを受け入れ、そのベネフィットを享受するために、従業員による準備をどのように進めていますか?

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テクノロジー企業やエンタテイメント&メディア企業は、スキル開発認証プログラムにリソースを投入しています。情報通信企業も、自社にとってアクセスしやすいAIツールやプラットフォームを優先的に利用しています。

エンタテイメント&メディア業界および情報通信業界では、資金配分の増加が従業員の生成AI導入イニシアチブを促進する主な原動力となっている。それに対し、テクノロジー業界では、従業員は報酬、評価、主要業績評価指標(KPI)との連携などのインセンティブに基づき生成AIを受け入れる傾向が見られる。

質問:生成AI技術を導入する従業員に対し、どのようなインセンティブや報酬を与えていますか?

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TMTセクターにおける生成AIのユースケース

テクノロジー業界のリーダー層の80%が、自社において生成AIの利用が最も適している事例として「製品開発、インテグレーションと展開」を挙げています。製品開発(コーディングおよびテストを含む)を選択したテクノロジー業界のリーダー層のうち、40%が既にこのアプローチを導入しており、その傾向はさらに高まっています。

テクノロジー業界では、さまざまなアプリケーションで生成AIが利用されています。GitHub CopilotやTabnineなどの一般的なツールはコード補完に役立ち、SeleniumやAppiumベースのテストツールは、多様なテストケースを作成することで堅ろうなコードテストに特化しています。これらの機能は、プロセスの合理化、時間の節約、リソース配分の最適化により、製品開発に大きく貢献します。ハードウェア分野では、生成AIは製品設計を支援し、企業が多様なコンセプトを探求して、革新的かつ最適化された設計を生み出すことを可能とします。常に自己の業務をビジネスの本流に統合・展開しているソフトウェアエンジニアにとって、生成AIは、変更追跡、バージョン履歴の管理、バグの自動検出および修正でより重要な役割を果たします。このような機能性は、開発速度、信頼性、および効率的なユーザーフィードバックの統合を向上させることにより、製品やサービスの拡充に役立つことが期待されます。

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自動化されたコーディングとテストを含む製品開発は、生成AIを適用する上で最もインパクトのある領域とされており、ディスラプションの度合を示す1-5段階で4と5の高い評価を獲得しています(5はディスラプションのレベルが最も高いことを示す)。テクノロジー分野のサブセグメント(ハードウェアとソフトウェア)では、製品開発、インテグレーションと展開におけるディスラプションが最も大きいと考えられています。また、B2Bサービス企業はサポートとメンテナンスを優先し、B2Cサービス企業は販売促進に重点を置いています。

生成AIは、コンテンツ生成、個別最適化されたマーケティング、および対話型ストーリーテリングを強化できることから、エンタテイメント&メディア業界に変革をもたらす可能性を秘めています。このテクノロジーをワークフローに組み込むことで、企業はコンテンツの作成とキュレーション(整理・編集)プロセスを向上させ、個人の好みに合わせてカスタマイズし、全体的なユーザーエクスペリエンスを向上させられます。生成AIは、高度なアルゴリズムとニューラルネットワークを活用してテキストを魅力的な画像へとシームレスに変換し、ビジュアルストーリーテリング機能を強化し、業界内の創造的な視野を広げます。

エンタテイメント&メディア業界では、90%の企業が「コンテンツ生成」を選択し、77%が「個別最適化マーケティング」を選択しています。ユースケースはほぼ完了しており、50%が1年以内の実装を計画しています。また、サービスを拡大するために、70%の組織が生成AIを活用しています。

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回答企業の50%が複数言語での字幕生成を選択しました。ただし、インパクトの評価は低く、最もディスラプションの小さいユースケースの1つと位置付けられています。従来型、デジタルメディア、その他のスポーツ、ホスピタリティなどを含むエンタテイメント&メディア分野のサブセグメントでも同様の傾向が見られ、コンテンツ生成と個別最適化マーケティングが最もディスラプションが大きいユースケースになると予想されています。

情報通信業界は絶え間なく進化しており、生成AIとのインテグレーションは前途有望かつ新たな可能性をもたらします。生成AIは、カスタマーケア、ビジネスオペレーション、セールス、ネットワーク運用など、情報通信に特化したシナリオを構築、テスト、最適化するためのソリューションを提供しています。インドの通信事業者は、顧客と従業員のエクスペリエンスを向上させるソリューションを導入しています。生成AIは、個別最適化されたガイダンスとプロアクティブなトラブルシューティングを提案することで、メンテナンス担当者をサポートするリアルタイムの支援を提供します。これはネットワークデータと顧客行動の分析を通じて達成され、問題の迅速かつ効果的な解決を可能にします。

情報通信業界では、主なユースケースに「設備・サービスの提供準備やメンテナンスのリアルタイムサポート」(90%)と「個別最適化されたプロモーションと価格設定」(80%)が含まれており、現在の管理方法に変革をもたらす可能性があることを示しています。リアルタイムサポートを優先している企業のうち、44%が既に実装を完了しています。

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情報通信分野のサブセグメントである通信サービス提供事業者(CSP)とインフラ・機器の提供事業者では、サポートとメンテナンスが最もディスラプションが大きいユースケースです。また、インフラ提供事業者では、カスタマーエクスペリエンスの向上が重要であり、CSPでは、個別最適化されたプロモーションと価格設定、およびネットワークの最適化が重要と回答しています。

TMTセクターでは、効率性と生産性を向上させ、意思決定を改善し、カスタマーエクスペリエンスを向上させるために、人事、財務・会計、セールス&マーケティング、IT、サプライチェーンなどのさまざまな機能で生成AIを活用しています。例えば、ITeS企業では、生成AIを人事管理、セールス&マーケティング機能に適用し、認知チャットボットを中心としたクライアントアプリケーション、マーケティングやメディア向けのコンテンツ作成と最適化、コード生成の自動化、合成データ生成など、さまざまな取り組みを行っています。

回答企業の大半は、生成AIが最大限にインパクトを発揮することが可能な業務機能として、セールス&マーケティングとITを挙げている。

質問:選択した業務機能について、最も大きなインパクトを与えると予想されるユースケースはどれですか?

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生成AIがサプライチェーン、IT、セールス&マーケティング、財務・会計、人事の分野にこれらの分野に統合されるにつれ、機能の発揮方法が大きく変わりつつあります。労働力管理の最適化から、財務タスクの自動化、市場動向の予測、見込み客の創出、デジタル広告のサポート、サイバーセキュリティの強化、サプライチェーンロジスティクスの改善まで、生成AIはバリューチェーン全体に大きなインパクトを与え、TMT企業の効率性と市場の動向や変化への対応を向上させます。

回答企業の87%は、生成AIにより最大のディスラプションが予想されるのは「セールス&マーケティング」の機能であり、次いでITの85%と想定しています。

Sharmila Karve

機能全体の中でインパクトが見られた上位2つのユースケース、実装のスケジュール、インパクトの性質

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インパクトの性質

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TMTセクター全体において、セールス、マーケティング、IT部門が、生成AIの導入によって最も大きなインパクトを受ける業務機能と考えられています。セールス&マーケティングにおいて、生成AIは、顧客の行動とペインポイントを分析し、戦略的意思決定のための実用的な知見を提供することで、顧客の分類とターゲット設定をサポートできます。また、個別最適化された製品の提供を促進し、それによって全体的なカスタマーエクスペリエンスの向上が可能です。生成AIはさらに、インタラクティブでカスタマイズされた広告の生成を可能とし、組織が顧客へのリーチと顧客のエンゲージメントを拡大するのに役立ちます。

IT部門では、生成AIが24時間体制で支援を提供することで、サポートサービスに革命を起こし、コストを削減し、人的リソースの負担を軽減できます。さらに、検索プロセスを自動化し、膨大なデータセットから知見を得ることで、ナレッジマネジメントを強化します。これにより、業務効率と意思決定を最適化しつつ、イノベーションと新製品開発への利用を実現することが可能となります。

責任あるAIの利用

責任あるAIの利用とは、倫理的かつ透明性と説明責任の伴う方法でAIシステムを開発し、展開することを意味します。これは、AIの利用が公正かつ安全であること、またユーザーのプライバシー、知的財産、人権が尊重されていることを保証するためのものです。生成AIの導入には多くのベネフィットがありますが、課題も存在します。組織はこれらの課題に積極的に取り組み、責任あるAI戦略を実行して、この新たな技術の複雑さを克服し、その可能性を最大限に引き出す必要があります。

生成AIの導入に伴う課題は多面的です。技術が複雑であることから、スキルを有する人員の確保が必要であり、リーダーシップとの連携が必要となります。これらの課題を理解し、効果的なリスク軽減戦略を実施することは、生成AIを導入する企業にとって不可欠です。

本調査では、TMTセクターの企業にとって、インフラの準備に関する懸念が生成AIの実装における最大の課題の1つであることが示されています。これは、TMT企業が生成AIをサポートするためには新しいテクノロジーとインフラに投資する必要があり、場合によっては全面的な刷新につながるという事実に起因しています。

技術インフラの準備は、生成AIの実装に際し、TMTセクターの組織が直面するビジネス上の課題のトップ3の1つである。

質問:生成AIの実装に関連するビジネス上の主な課題は何ですか?

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生成AIは情報通信業界の運営、顧客とのやり取り、サービス提供の方法に革命を起こす可能性を秘めていますが、90%もの情報通信企業が生成AIを導入する際の複雑性を主な阻害要因として認識しています。また、新しいシステムを既存のシステムに統合することがいかに複雑で時間がかかるかを指摘しています。さらに、リソース集約型の生成AIソリューションに対処するには、追加の計算リソースと複雑なアルゴリズムがしばしば必要となります。必要なリソースの増加が実現しない場合、生成AIシステムの拡張可能性と効率が限定的になる可能性があります。

本調査で明らかになったその他の重要なポイントとしては、データの可用性(66%)と既存システムとの統合(62%)がテクノロジー業界のリーダー層の主な関心事である一方で、エンタテイメント&メディア業界では、技術インフラの準備(68%)が優先事項となっていることが挙げられます。

本調査は、TMTセクターの生成AIに対する信頼と関心を明らかに示しています。これは、企業リーダー層の約98%が生成AIの導入に伴う課題に対処し、リスクを軽減するために何らかのソリューションを選択しているという事実から推測できます。

調査結果によると、生成AIの導入に関連するリスクを軽減するための主要なアプローチとして、取締役会レベルによるレビューと議論が目を引く結果となっています。これは、企業リーダー層が意思決定プロセスに取締役を関与させ、それによって全てのステークホルダーの信頼を醸成しているという、積極的な姿勢を示しています。さらに、生成AIの導入に関する議論に積極的に参加することで、取締役会は企業の長期目標、リスク許容度、企業価値との整合性を確保するための戦略的管理を行うことができます。この傾向は3つの業界で一貫しており、テクノロジー業界では90%、エンタテイメント&メディア業界では83%、情報通信業界では90%の企業が取締役会レベルのレビューと議論を選択しています。

導入の課題に対処するために、87%の組織が取締役会レベルのレビューと議論を選択しており、関心の高さとガバナンスの重視が示されている。

質問:上記のリスクを管理するために、生成AIのユースケースやアプリケーションのレビューや評価は行われていますか?

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TMTセクターのリーダー層の61%が、レビュープロセスにCISO事務局を参加させています。これはデータセキュリティの重要性を示しています。また半数以上の組織が、外部組織による検証を求めており、回答企業の52%が、評価のために独立した外部コンサルタントを採用しています。内部監査チームも、関与の度合いは低いものの、38%がレビュープロセスに参加しています。

エンタテイメント&メディア業界は、TMTセクターの中で唯一、5%の企業が生成AI導入時にリスク軽減メカニズムを有していないと答えた業界です。生成AIが無秩序に利用され、人間と人工的なコンテンツの境界線が曖昧になるにつれ、業界におけるオリジナリティと権利帰属の課題が生じます。これにより、AIが生成したコンテンツの著作権に関する明確なガイドラインの必要性が高まっています。この問題が解決されなければ、業界は生成AIの大規模な応用機会を失う可能性があります。これに対処するために、エンタテイメント&メディア業界のリーダー層は、これらの課題に対処するためのリスク軽減戦略を検討する必要があります。

生成AIの急速な普及は、技術に付随する固有のリスクをもたらすものであり、強固なガバナンスの必要性が浮き彫りになっています。AIの規制およびベストプラクティスは急速に発展しており、生成AIに関連するリスクを軽減するための規制を多くの国が積極的に立案しています。しかしながら、規制の実施よりも速いペースで技術が導入されていることから、依然として懸念事項が存在します。下のグラフは、生成AIをワークフローに統合する際の基本方針の有効性に関して、TMTセクターのリーダー層の視点を掘り下げたものです。

TMTセクターのリーダー層の大半は、基本方針の堅牢性に自信がないと答えている。

質問:貴社の基本方針の堅牢性をどのように認識していますか?

gen ai tmt

生成AIがますます自律的な存在になるにつれ、技術の制御、安全性、説明責任に関する懸念が高まっています。企業は、偏見や差別などの倫理的配慮への対処、誤用や不当な利用の防止、データプライバシーと著作権保護、複雑なアルゴリズムの透明性と説明能力の確保など、いくつかの重要な課題に取り組んでいます。これは、大規模言語モデル(LLM)のような基本モデルの場合に特に顕著です。NASSCOMのレポートによると、ほとんどのステークホルダーは倫理的なAI利用に関する取り組みの初期段階にあり、60%がバイアス検出などの懸念に焦点を当てた倫理方針を構築しています4 AIにおける倫理的なデータプラクティスは、以下の2つの段階で実装されています5

  • データセットの作成中:十分な多様性が確実にLLMに組み込まれるようアナリティクスを活用する 
  • データセットの利用中:バイアスを除外するために、LLMパラメーターを定義する

生成AIは、盗作や著作権違反に関する懸念や、より深いレベルでは、真偽や信頼性といった基本的概念の再評価の必要性など、従来よりも複雑な状況をもたらす技術です。生成AIは、人間が開発した素材に酷似したテキスト、画像、音声、または映像コンテンツを生成する能力があることから、信頼性が問題となります。例えば、個人を巧みに模倣したディープフェイクの拡散は、個人の評判にリスクをもたらし、偽情報を広め、世論を動かす可能性があります。このように非常にリアルな合成物は、ニュースやその他コンテンツに対する懐疑的な感覚を助長することにより、より広範な社会的・政治的弊害をもたらします。

これらの課題に対応するため、企業とその取締役会は、AIガバナンスを目的とした社内基本方針の確立について、規制当局や株主からの高まりつつある圧力に直面しています。いくつかの共通の基本方針が生まれつつありますが、その広範な導入にはまだ限界があります。

TMTセクターのリーダー層は、生成AIがもたらすセキュリティ上の課題(43%)と、機能に内在するバイアス(31%)について懸念を示しています。

回答企業の38%が自社の基本方針は完全に成熟していると評価しており、データプライバシーに関しては5点と評価し、44%が説明能力に関するポリシーを4点と評価している。

質問:社内の基本方針を1(存在を認識していない)から5(完全に成熟し、実施されている)までの5段階でどのように評価しますか?

data privacy

データプライバシーの確保は、個人が自己の個人情報を管理し、不正アクセスを防ぐために重要な要素です。また、詐欺やサイバー犯罪を防止し、個人と組織の間の信頼を確立するためにも必要です。TMTのような厳格に規制されたセクターにおいて、生成AIはデータセキュリティに関する懸念を生じさせます。構造化されていないテキストとマルチモーダルデータにより複雑な性質を有していることから、独創的な匿名化の方法が必要となります。適切な検証が行われない場合、壊滅的な結果となる可能性があります。例えば、サイバーセキュリティ企業のCloudSEKは、インドにおける7億5000万人もの個人情報の流出という、大規模なセキュリティ侵害を明らかにしました。この侵害には、氏名、携帯電話番号、住所、国民識別番号などの重要な情報が含まれており、個人と組織の両方に重大なリスクをもたらすものでした6

これは、データプライバシーについて、調査回答企業の38%が社内基本方針を5段階評価で5と評価した理由として妥当なものです。TMT企業はこの分野への莫大な投資を行い、政府も詐欺やデータ侵害を防ぐ努力を講じています。例えば、2023年のデジタル個人データ保護法の導入により、フィンテック企業は同法の規定を確実に遵守するための投資を行い、顧客データ管理を向上させることが義務付けられています。

セキュリティについては、回答企業の33%が社内基本方針について5段階評価で5点と評価しています。バイアスに関しては、回答企業の43%が基本方針を3点と評価しており、情報通信業界では80%となっています。

生成AIの利用は、ユーザー側のコンピューターが関与することからカーボンフットプリントの低い技術に思えるかもしれませんが、使用するエネルギーやコンピューティングリソースにより、環境に大きな影響を与える可能性があります。例えば、単体のAIモデルを学習すると、626,000ポンドの二酸化炭素が発生します。この数字については、平均的な中型車がその耐用年数全体において排出する二酸化炭素が約40,000ポンドであることを考えると理解しやすいと思われます7。すなわち、1つの生成AIモデルを学習させることで、中型車が寿命までの間に排出する二酸化炭素のほぼ5倍を発生させる可能性があるのです。これは、AIの利用が再生不能エネルギーによる電力を使用して、炭素を排出させることが原因です。また、コンピューターを格納するデータセンターも、温室効果ガスの排出を増加させます。生成AIの二酸化炭素排出対応には、環境コストが必要となります。

TMT企業のリーダー層は、生成AIの環境フットプリントを認識しており、43%がその影響を軽減するためにサードパーティと協力している。

質問:生成AIが環境に与える影響を持続可能性の観点から把握していますか?

tmt leader

回答は全ての業界でほぼ一致しており、テクノロジー業界では44%、エンタテイメント&メディア業界では40%、情報通信業界では50%が第三者を通じて環境への影響を軽減するために行動しています。

TMTセクターの回答企業の約28%が、環境への影響はないと認識しており、18%はベネフィットがコストを上回ると答えています。TMT企業のリーダー層の46%は依然として、生成AIが環境に及ぼす影響を軽減するために作戦を練る必要はないと考えていますが、至急行動を起こす必要があると言えます。生成AIをより環境に優しいものにするために、最新のAIオペレーションを行うデータセンターに再生可能エネルギーを利用する革新的な取り組みも進んでいます。

エネルギー効率の高い未来型生成AIの設計に向けて、エネルギー効率が非常に高いハードウェアの開発が有望であることも、組織がより環境に優しい形でAIアプリケーションを利用するために重要です。

生成AIの実装に関する主な検討事項

Key considerations and best practices for financial modelling infrastructure

01.ROIを評価しつつ、機会とインパクト領域を特定する

生成AIベースのソリューションを導入する企業の最初のタスクは、生成AIが、セールス、マーケティング、カスタマーサービス、製品開発、オペレーションの最適化、データ分析、意思決定プロセスを向上させる機会と提供可能な領域の特定です。例えば、テクノロジー業界(97%)とエンタテイメント&メディア業界(80%)では、リーダー層はより幅広いオーディエンスへのリーチ拡大を目的とした製品/サービスの拡充に向け生成AIを利用しており、情報通信業界(約100%)は、主にコスト最適化のために生成AIを活用しています。

生成AIには、革新的な新製品や新サービスの開発、実用的な知見のためのレポートの要約、ステークホルダーに対する報告の支援など、多種多様な適用範囲が存在います。これは、生成AIの導入前に、自社のニーズに合わせたソリューションを選択する必要があることを意味しています。TMTセクターでは、生成AIを主にイノベーションとリサーチに利用していると83%の企業が回答しています。

予算とリソースの配分に際し、情報に基づいた意思決定を行うには、生成AIの実装に関するROIを理解することが重要です。TMTセクターに属する企業全体の40%は、生成AIの導入による目に見えるインパクトを実感しており、収益性の高い投資だと考えています。

02.適切な導入アプローチを選択する

インパクト領域と機会が特定されたら、次のステップは、組織内における生成AIの適切な実装戦略の決定となります。企業には、社内開発、外部コンサルタントの雇用、ハイパースケーラーとの戦略的提携、生成AIの能力を持つ企業との合併や買収など、さまざまな選択肢があります。それぞれの選択肢について、組織固有の要件と目的に基づき慎重に検討することが必要です。テクノロジー企業とエンタテイメント&メディア企業は、生成AIの実装に外部コンサルタントを利用する傾向がある一方で(それぞれ48%と58%)、情報通信企業は、社内での開発を選択しています(50%)。

03.適切な展開モデルとプラットフォームを選択する

企業は、特定のニーズ、スケジュール、予算に基づいて、展開モデルとプラットフォームの種類を選択することが可能です。堅ろうなデータセキュリティを確立するために、高レベルのセキュリティを提供するオンプレミスまたはプライベートクラウドなどのオプションが推奨されます。逆に、スケーラビリティを優先する場合は、パブリッククラウドの選択が推奨されます。さらに、プラットフォームについては、オープンソース、自社占有、カスタムソリューションなど、さまざまなタイプを選択可能です。テクノロジー業界では、回答企業の50%近くがプライベートクラウドを選択し、その半数以上がカスタム展開モデルを選んでいます。エンタテイメント&メディア業界では、約33%がプライベートクラウドを選択し、その46%がカスタムモデルを選択しています。情報通信業界では、40%がオンプレミスプラットフォームを選択しており、そのほとんどが学習済みオープンソースモデルを選んでいます。

04.生成AIを受け入れるための従業員の準備を整える

生成AIの実装が成功するか否かは、従業員がこの技術をどのように受け入れ、生産性の向上につなげるかに大きく左右されます。TMTセクターの企業(68%)は、生成AIのベネフィットと利用効率に関する認識を共有するために、ワークショップを実施し、さまざまな学習モジュールを提供しています。

結論

かつては理論的な概念であった生成AIは、今や現実のものとなり、さまざまな業界の企業で既に導入されています。しかし、生成AIの将来は、それが目に見えるベネフィットを実現するか否か、また長期的に組織の目的を達成する手段となり得ることを、組織のリーダーに納得させることができるかどうかにかかっています。本調査では、生成AIの導入、実装の可能性がある領域、技術の採用のロードマップについて重要な知見を得るために、TMTセクターの企業を対象として戦略に関する質問を投げかけました。インドのTMTセクターにおける生成AIの導入は、ベネフィットと課題の双方を伴う、前例のない変化をけん引することになると考えられる。責任あるAIの導入は、事業の継続性を確保します。進化する規制およびESGの目標を順守することは、技術の持続的成長にとって極めて重要です。堅ろうなデータガバナンスの実施とスキルアップへの投資は、ステークホルダーの信頼を構築し、変革を実現する生成AIがもたらすベネフィットを最大化するために不可欠です。

テクノロジー・エンタテイメント&メディア・情報通信業界における日本とインドの比較

日本とインドの類似点

【テクノロジー業界】

生成AI実装の重点領域のラインナップや実装済みの割合は近い状況にあります。テクノロジー業界における生成AIの実装済みの割合から見て、生成AIを活用することが企業としての優位性の確保につながるというステージから、生成AIを活用することがスタンダードとなっており活用の遅れがビハインドとなるステージに移っているという状況も類似点となります。

【エンタテイメント&メディア】

生成AIのユースケースにおいて「コンテンツの生成」と「個別最適化されたマーケティング」が最も適しており、カスタマーエクスペリエンスにインパクトがあることは似ています。一方、AIによる記事の生成、読み上げ、リアルタイムでの字幕表示などは多くの会社で既に実装されており、大きな差別化とはなっていない点も類似しています。

今後、コンテンツ生成に生成AIを活用することは、業務の効率化やコンテンツの質の向上、新たなビジネスモデルの構築の面で競争が激化するメディア業界において、持続可能な成長を実現するための重要な手段となると言える点も類似点です。

【情報通信】

情報通信業界において、生成AI技術を中長期的な競争力強化のポイントとして位置づけ、積極的に導入を進めている点や、テクノロジー業界やエンターテインメント業界の企業に比べ、自社技術者による内製での生成AIの実装を進めようとしている割合が高い点など、情報通信業における生成AIへの取り組み状況には共通点が多いと言えます。

日本とインドの相違点

【テクノロジー業界】

日本においては、生成AIのみの効果を考える企業がある一方で、DX活動の一環として生成AIを活用して効果を考えるケースも多くあり、コスト最適化の実施割合がインドと比べて多い状況となっています。それに伴い、生成AIを業務に適用するための人材や生成AI活用を前提として業務プロセスを変革できる人材が不足しているという課題が顕在化してきており、育成や採用、外部の活用を検討されている状況にあります。

また、先進的な企業においては、生成AIの先にあるAIエージェントを活用しようとする動きがあるほか、資本配分や財務計画・分析(FP&A)などの内部報告と意思決定への活用を考える割合が高いこともインドとの相違点に当たります。

【エンタテイメント&メディア】

インドでは、生成AI導入時のリスク軽減メカニズムを有していない企業が5%存在するなどリスク軽減戦略に対する企業間のバラつきが見られますが、日本の企業では生成AIの導入に関連するリスクを軽減するための主要なアプローチにおいて専門的な部署の設置によるガバナンス強化や、外部専門家との連携によるリスク管理など、組織でリスク軽減の対策を講じていることが一般的であり、社内オペレーションも含めて相違がみられます。

今後、グローバルで急速にAI活用が進む中、コンテンツ生成における著作権の課題については迅速な法整備や著作権侵害を防ぐための国際的なルールの制定が必要であり、日本が主導していくことも求められます。

【情報通信】

情報通信産業は、置かれた環境の違いにより、生成AIのユースケースが異なっている点に着目が必要です。

インドでは、モバイル契約者数の継続的な増加と、5Gの普及拡大を背景としたデータトラフィックの急増、その結果としての安定的な通信収益の拡大が見込まれる中で、顧客サポートや顧客体験の向上に対する生成AI活用が積極的に進んでいる一方、故障の予兆分析などの取り組みは相対的に劣後されています。

日本では、市場の成熟化が一層進む中で、ネットワークオペレーションにおける生成AI活用による効率性の抜本的な向上や、B2B2Xモデルでの新たな収益獲得に向けた自治体/エンタープライズ/SME向け生成AIソリューションの開発・提供に力点が置かれています。今後、日本の情報通信業では、顧客体験の向上に向けた生成AIの活用が進むことが見込まれます。

※本コンテンツは、GenAI in technology, media and telecommunicationsを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

テクノロジー・メディア・情報通信業界における生成AI - 構想から現実へ

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主要メンバー

日向 昭人

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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