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前回2024年に寄稿した「シリーズ3回 デジタル地域通貨・共通ポイント事業のトレンドとあり方 第1回 デジタル地域通貨・共通ポイント事業とそのプレイヤーの類型」では、地域社会をめぐる大きな環境変化のなかで、デジタル地域通貨・共通ポイント事業が広く普及・派生し、その運営主体やプラットフォーム提供者も、自治体に加えて民間の幅広い業界にまで大きく変容・多様化している実情について、年代推移や多角的な類型で浮き彫りにしました。
今回は、デジタル地域通貨・共通ポイント事業に適用されているさまざまなデジタル技術が、事業自体にどのような影響を与えてきているか概観していきます。
※本シリーズで提示する動向事例・パターンは全て、自治体をはじめとする運営者やプラットフォーマーなどが開示している情報をもとに、PwCが独自にまとめたものであり、かつ、代表的、特徴的なものを中心に取り上げたものとなりますので、あらかじめご了承ください。
金券、スタンプ台紙、通帳などといったアナログ形態の地域通貨・共通ポイントに対するデジタル化の動きは、1990年代ごろにはありました。商店街などでは当時、薄型・全面磁気カード(PET式)の地域共通ポイントカードが採用され始めました。主に、店舗の小型専用読取機でポイントを示すマークを追記印字していき、マークが埋まると、買い物での利用や地域共通商品券への交換できるといった、スタンプカードの流れをくむものでした。
2000年代に交通・流通系の電子マネーが登場すると、地域共通ポイントカードでも非接触式ICカード(NFC式)が導入され、たまったポイントを1円単位で買い物に利用できるようになった他、電子マネーと一体化する動きも出てきました。チャージ機能を加えた独自の地域通貨に進化するケースや、交通・流通系電子マネーに商店街などの地域共通ポイント機能が組み込まれる例も登場しました。
2010年代前後から2次元バーコードを採用した決済が普及し、デジタル地域通貨・共通ポイントも発行形態がカードからアプリへ変容していきました。これにより、現地に出向かずどこでもオンラインで発行手続きができたり、さまざまなチャージ手段が選択できたりする(コンビニATM・キヨスク端末、クレジットカードや銀行口座からの入金など)ようになりました。店舗では、決済デバイス導入が不要(MPM方式*1の場合)となり、発行事業者に金券を持ち込まずに換金・精算できるなど、地域通貨を導入・普及させやすくなりました。加えて、アプリへの発行形態の変容は、プレミアム付商品券のデジタル化や、ふるさと納税返礼品、旅行支援クーポンなど地域外からの還流となる事業の発展に貢献しました。
一方で、地方圏や高齢者などDXへの抵抗感が強く、スマートフォンやデバイスに不慣れな利用者、店舗に対するハードルを下げるため、アプリ型発行に加えて、カード型2次元バーコード決済や換金用2次元バーコード記載の金券をハイブリッドに発行する事例もあります。マイナンバーカードを直接、地域通貨としてチャージ・利用できるように取り組む地方自治体の事例もあり、対象利用者や用途に応じた発行形態の多様化が進んでいます(図表1)。
図表1:発行形態がもたらすビジネス変容
*1:2次元バーコード読み取りは、MPM方式(ステッカーなど店舗側提示コードを利用者側がアプリで読み込む)、CPM方式(利用者側アプリ提示コードを店舗側が決済端末・スキャナで読み込む)の2つに類型される
前述のように、カードからアプリ形態に変容してきたことで、スマートフォンなどの端末上の多岐なアプリ機能との連携により、デジタル地域通貨・共通ポイントをためる・使うと、データ利活用方法も多様化しています(図表2)。
ポイント還元に関しては、デジタル地域通貨のチャージや利用、行政からの給付金・還元などに基づくもののほか、健康増進ポイントなどに代表されるような利用者自らの行動体験でためるポイントがあります。
例えば、歩数・バイタルの計測や健康診断・食生活・エコ活動の記録、2次元バーコード読み取りの他、GPS機能でのチェックインなどによるイベント参加やミッションクリア、アンケート・クイズへの回答、動画視聴、写真画像の投稿などのアプリ機能を通じてポイントをためられるものが挙げられます。
また、一定条件を満たすことや抽選に当たると、デジタル地域通貨に交換できたり、地域内協賛店で優待が受けられたりするデジタルクーポンがアプリに表示されるようになる、ためたポイント数に応じたランクで保険料が変動する、特定地で利用可能なデジタル観光通貨に両替できる暗号資産(NFT)を発行する、といった行動体験に基づきマネタイズするものが登場しています。
ICカードでの対応も含めた事例としては、地域ぐるみの子供・高齢者の見守り機能(専用端末にかざす、一定期間の利用履歴がないと家族に通知あり)のような、マネタイズではない行動情報の活用事例もあります。
図表2:体験行動情報のマネタイズ・利活用事例
デジタル地域通貨・共通ポイントは、その金銭的価値が故に、第三者による詐取や換金性の高い商品の買い回りなどの不正利用にさらされ、汎用的な決済手段、共通ポイントなどと同様の一定のセキュリティ対策が必要です。アプリ利用時のIDとパスワードに加えて、所有端末とひも付けたワンタイムパスワードの入力といった二要素認証などによる本人確認や、異常・不自然な利用挙動パターンを検知する不正利用モニタリングなどの対策が挙げられます(図表3)。
資金決済法では、高額前払や資金移動を伴う決済手段について、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認が義務付けられていますが、発行事業者が地方公共団体の場合、使用期限が6カ月未満の前払式支払手段は資金決済法の適用対象となりません。しかし、不正利用の未然防止策として、本人確認を導入、マイナンバーカードに搭載の署名用電子証明書をアプリで読み込み、パスワードを入力することで公的個人認証サービス利用できる事例も登場しています。
図表3:デジタル地域通貨・共通ポイントへのセキュリティ対応
決済における偽造・改ざんなどへの防止には、データ・通信の暗号化といった対策が一般的ですが、暗号技術をベースにしているブロックチェーンに代表される分散型台帳技術(DLT)が導入されているケースもあります(図表4)。一般的な中央集権型のデータ管理とは対照的に、ネットワーク上に分散する複数デバイス端末間で全ての取引履歴を共有・合意して、信頼性を担保する型のデータ管理の考え方のため、財産的価値の保有・移転を信用担保できる他、改ざんが困難になるなどの特性を生かし、第三者機関の介在を必要とせず、法定通貨としての強制通用力を持たない仮想通貨の基幹技術となっています。
デジタル地域通貨は、仮想通貨とは異なり法定通貨を代替するもの(現金やそれに基づく決済手段で購入するもの)ではありますが、商店街・振興組合などがポイントカードと併せて発行してきた地域共通商品券や、プレミアム付商品券などの金券が進化したものとして見た場合、偽造リスクにさらされていた事業者には、仮想通貨の基幹技術は受け入れ評価され得るものと考えます。元々、ブロックチェーンはその特性からデータ処理の確定に時間を要する、単位時間処理件数が限られるとの課題があるため、実際には決済処理に求められる即時性処理に適するような対応を施した技術がデジタル地域通貨・共通ポイントには採用されています。
図表4:分散型台帳・ブロックチェーン技術の概要とデジタル通貨への適用技術となる特性
今回は、デジタル技術の発展で、地域通貨・共通ポイント事業が、地域外からの還流も含む多岐にわたる事業となり、行動体験のマネタイズ・データ利活用も進むなか、マイナンバーカードによる公的個人認証サービスや仮想通貨の基幹技術を含む多様なセキュリティ対策が取り入れられていることについて触れました。
次回は、これまでの内容を踏まえ、デジタル地域通貨・共通ポイント事業の成功事例などのケーススタディ、事業のあり方についての考察を予定しています。
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