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テクノロジー・メディア・情報通信業界における世界M&A動向:2021年上半期アップデート

TMT業界における2021年上半期のM&Aは、デジタル化とディスラプションの進展が潤沢なディール資金と相まったことで活況になり、今後もこの傾向は続くと考えられます。

2021年上半期、世界のテクノロジー・メディア・情報通信(TMT:Technology Media and Telecommuniations)業界のM&A活動は、特別買収目的会社(SPAC)の新規株式公開(IPO)や、ベンチャーキャピタル(VC)ファンディングがきっかけとなり、記録的な資本供給および投資が行われ、活況が続きました。特に3つのトレンドが、現在の世界的なTMT業界におけるM&Aの活況を特徴付けています。

  • メディアストリーミング:NetflixやDisney+などのストリーミングサービスは、コロナ禍の経済における初期の勝者でした。しかし、2021年は、ワクチンの普及に伴う消費者行動の変化や、新規参入者との競争激化により、新規加入者率は伸び悩んでいます。WarnerMediaとDiscoveryの合併や、AmazonによるMGMの買収に見られるように、競争の激化は、企業が規模で競うことができるように合併の動きを後押ししています。
  • SaaSおよびDeep Tech:SaaS(Software as a Service)はテクノロジー部門を主導していますが、企業が能力構築や価値創造に重点を置くなか、Deep Techも勢いを増しています。量子コンピューティング、宇宙探査、エネルギー貯蔵などの技術が商業化に向けて前進し、より多くのVC投資を受けるようになると、IPOやM&Aはより差し迫ったものとなるでしょう。2021年3月に発表されたIonQの歴史的なSPAC案件により、同社が公開取引される初の純粋な量子コンピューティング企業となったことからも分かるように、Deep Techは今後さらに飛躍的に前進することが予想されます。
  • 国家主権:2021年に、クロスボーダーディールの新たな課題となり得るもう一つの変化は、グローバル化から国家主権と保護貿易主義の拡大への移行です。最近では、インドのソーシャルメディア企業に課された厳格なプライバシー法、オーストラリアでのデジタル広告に関する法律、中国の暗号通貨禁止法など、政府が、データ、プライバシー、暗号通貨に関する法律を精査している複数の例が見られます。
  • PwCは、2021年の残りの期間も、TMT業界における価値を創造するM&Aの展望について、引き続き楽観視しています。業界全体のディスラプションおよびデジタル化の機会が出現し、資本の入手しやすさにも後押しされ、企業は今後も新たなケイパビリティの構築、事業再編、市場内リーダーシップの維持や獲得のための方法として、引き続きディール案件を検討していくでしょう。

「業界のディスラプション、デジタル化とテクノロジーによる膨大な機会、資本の入手しやすさが重なり、記録的なM&Aが継続される基盤が生み出されます。私たちは、大手のテック企業に限らず、新興勢力企業が買収を主導するようになることを想定すべきです」

Marc SuidanPwC米国 プリンシパル、グローバルTMT関連ディールズリーダー

M&Aホットスポット

今後半年から1年の間にM&Aのホットスポットとなる分野は以下であると予想します。

仮想通貨

仮想通貨は、業界が成熟し、大手プレーヤーが体系化を図ろうとするなか、2021年後半には、M&Aおよび資金調達の両方で、案件数が急速に増加する可能性があります。

  • 2021年6月、Andreessen Horowitz氏は、コンピュータ技術革新の次の波で仮想通貨が果たす重要な役割に期待し、22億米ドルの暗号資産ファンドを設立したことを発表しました。
  • 2020年のディール金額総額は、前年比倍増の11億米ドルとなりました。
  • 平均ディール額は2019年の1,920万米ドルから、2020年には5,270万米ドルに増加し、1億米ドル以上のディール件数についても同期間に増加しています。
  • M&Aは世界中で行われており、ディールの60%はアジア太平洋地域および欧州・中東・アフリカ(EMEA)の案件です。
  • 2021年初頭に実行されたディールは、トレーディングおよび取引所のインフラストラクチャに焦点が当てられており、仮想通貨業界のディール案件の42%を占めています。

ディスラプティブ技術

プレーヤーの少ない業界では、企業がディスラプティブ技術を導入してコストを削減し、収益を増やし、競争環境を塗り替えることで、近い将来、ディスラプションとM&Aの機会がもたらされる可能性があります。これまでにも、Amazonが小売業界で、Teslaが自動車業界で実践したように、もともと寡占状態にあった業界を揺るがす新規プレーヤーが出現し、少数精鋭の新興企業が支配的な存在にまで成長していくことはありました。今後は、ヘルスケア業界、金融サービス業界、情報通信業界などにも新規参入者が増え、ディスラプティブ技術によって同様の傾向が現れる可能性があると考えられます。

AI

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、2021年のAIアプリケーションの成長は加速しましたが、特にサイバーセキュリティ、ワークフロー管理、販売、カスタマーサポートなどの分野での採用が大きく進んだと考えています。そのため2021年にはM&Aと資金調達が増える可能性がありますが、注意が必要です。このような領域でのAI投資を回収するためには、多くの企業において、人材戦略、組織構造、ビジネス戦略、開発方法論、リスク軽減策といった取り組みについても変革を行い、積極的にAIの速度で動く世界に順応させていく必要があります。

現在のM&Aの背景にある主なテーマ

業界のあらゆる境界がテクノロジーと融合

テクノロジーが全ての業界で重要となり、各業界の従来の境界が融合し、M&Aの機会が創出されています。HealthTech、FinTech、CleanTechなどの業界の出現に見られるように、新規参入者や技術のディスラプションはビジネスモデルを再定義し、私たちの生活を変えています。業界の境界が融合するだけでなく、複数のテクノロジーが交わる状況も見られます。

自動車業界は、かつては各国を代表する大手ブランドだけのものでしたが、新技術と昔からの製品を組み合わせる企業が世界中で出現しています(Tesla、Lucid Motors、Nio)。小売(Amazon、Alibaba)、フィットネス(Peloton、Mirror)、支払い(Stripe、Square)、金融サービス(Robinhood、SoFi)といった他の分野でも、同様のディスラプションが見られます。これらは最後のイノベーターではなく、2021年にはテクノロジーに重点を置いた企業がさらにいくつか出現し、他のセクターにディスラプションを起こすと予想されます。こうした動きにより、新たなケイパビリティの獲得や既存の能力の強化によって自らの事業の変革を目指す大企業を中心に、さらなるディールメーキングが促されるでしょう。

通信企業は、インフラおよび5Gテクノロジーへの巨額の投資が必要

通信業界では、一部の企業は従来とは異なる分野への投資(例:メディア)から撤退し、5Gへの投資に向けた資金を獲得するため、ポートフォリオを統合しています。例えば、米国では昨年VerizonとAT&Tが非中核事業の一部を売却しましたし、2021年には、カナダとスペインの大手通信会社が、規模の拡大に向けて合併し、激化する競争に備えています。

PwCでは、こうしたディールメーキングが近い将来終了するとは考えていません。通信業界には、増大するキャッシュフローを活用し、中核事業への投資を増やして規模を拡大する姿勢があるからです。通信企業は、インフラ(基地局、データセンター、光ファイバーなど)に投資するか、買収を通じて5Gを発展させる可能性があります。各社独自の戦略を追求すると考えられますが、企業がインフラとテクノロジーを強化するにつれ、垂直統合への注目が高まることが想定されます。

SPAC、IPO、VCファンディングが引き金となった記録的な資本供給と投資

  • SPACブーム:2020年のSPAC IPO急増は、2021年に入っても続いており、第1四半期には過去最高となる274件の新規上場がありました。SPACは、2021年上半期に800億米ドル以上を調達しており、これは2020年全体の調達額を上回っています。2021年第2四半期は、米国証券取引委員会(SEC)による精査が強化され、SPACの資金調達活動が一時的に沈静化しましたが、今後数カ月の間にSPACがさまざまな形でM&Aに影響を与えるのを目にすることになると考えられます。子会社売却に関しては、株式分割やプライベートエクイティ(PE)への売却に加え、SPACへの売却ディールも増えています。また、米国に上場する方法として、従来の外国企業の登録プロセスではなくSPACの利用を検討するなど、国際企業の間でも関心が高まっています。最近上場したSPACが今後1年から1年半の間に適切な買収ターゲットの特定と合併の完了を目指していることから、SPACは特にTMT分野においてM&Aに引き続き影響を与えるというのがPwCの見解です。
  • 再活性化されたIPO市場:いわゆるユニコーン企業が、パンデミック期間中に延期されたIPOスケジュールを再調整しているため、IPO市場はパンデミック以前のレベルに戻っています。ここ数カ月の間に、DoorDash、Palantir、XPeng、Snowflake、DiDiなどのIPOからは、いずれも投資家の高成長企業に対する強い関心が見て取れます。
  • VCの増加:世界的にTMT業界におけるVCのディールメーキングが2021年に力強いスタートを切り、市場参加者の同セクターへの投資意欲と、次のラウンドのユニコーン企業やディスラプションを起こす企業への機会を示唆しています。2021年3月末までに、グローバルのVCディールメーキングは、すでに2020年の資金調達総額の40%に達し、前年の金額を上回るペースで推移しています。高い投資率を考えると、数年後にはVCの出口戦略により、M&A案件の可能性が生じることになるでしょう。

テクノロジー・メディア・情報通信業界のM&Aの展望

PwCは、2021年およびそれ以降のM&Aによる価値創造の可能性について楽観視しています。デジタル化および新たなディスラプションによる多くの機会、そしてIPOとSPACに端を発した記録的な資本と投資は、2021年も堅調なM&A活動が継続するための基盤を確立しています。

急速に成長する環境の中で競争するためには、企業は果敢に価値創造の考え方をM&A戦略に取り入れ、絶えず変化する未来のために最善のポジションを確保していく必要があります。

データについて

M&A動向に関する当社の見解は、業界が認める情報源から得られたデータに基づいています。特に本稿で取り上げたディール金額とディール件数は、Refinitivが2021年6月30日時点で提供し、2021年7月5日時点でアクセスした公式発表に基づいており、噂や取り下げられたディールを除外しています。さらに補足情報として、Dealogicと当社の独自調査からの情報も加えています。本稿は、Dealogicによる使用許諾に基づいて提供されたデータから導出したデータを含んでいます。かかる被使用許諾データのすべての権利はDealogicが留保しています。PwCの産業マッピングと一致させるため、原情報に特定の調整を加えています。当社ではメガディールの定義を、ディール金額が50億米ドルを超えるディールとしています。

※本コンテンツは、PwCグローバルが2021年6月に公開した「Global M&A Trends in Technology, Media & Telecommunications: 2021 Mid-year Update」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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