CAIO実態調査2025―AI経営の成否を分けるリーダーの条件​

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  • 2025-11-21

生成AIがもたらした革新的なブレークスルーにより、AI活用は単なる業務効率化にとどまらず、企業の競争力そのものを左右する、全ての企業にとって必須の経営アジェンダとなりました。

この潮流の中で、企業におけるAI活用を戦略的に推進する役割を担うのがCAIO(Chief AI Officer:最高AI責任者)です。CAIOは、AI戦略の立案から実行までを統治し、事業価値創出とリスク管理を両立することを期待されています。しかし、CAIOの具体的な役割やCAIO設置によるAI活用の成果は企業によってさまざまであり、その実態は十分に明らかになっていません。

PwC Japanグループは、企業のCAIO設置の実態、CAIOの人物像、その成果を明らかにするために、売上高500億円以上の企業に勤務する課長以上の1,024名を対象に「CAIO実態調査 2025」を実施しました。本調査には、最前線で活躍する現役CAIO4名へのインタビューも含まれています。

インタビュー対象者

  • 株式会社博報堂DYホールディングス 森 正弥氏
  • 株式会社日立製作所 三溝 勝広氏
  • 株式会社電通デジタル 山本 覚氏
  • 楽天グループ株式会社 ティン・ツァイ氏

CAIOの設置実態と成果

調査の結果、CAIOを正式に設置している企業は22%、CAIOと同等の人材を設置する企業まで含めれば60%に達し、AI活用姿勢の二極化が進行していることが分かりました。また、CAIO設置企業と未設置企業では成果の出方に大きな差があり、CAIO設置企業では業務・技術・管理の全領域でAI活用推進度が20pt以上高いことも明らかとなりました。

図1:CAIOの設置状況

図2:CAIO設置・未設置企業別AI活用推進度

CAIOの具体的な役割と、登用に向けた提言

本調査を通して、私たちはCAIOの役割を以下のように定義しました。

CAIO(Chief AI Officer:最高AI責任者)とは―

AI戦略の立案から実行までを統治し、責任あるAIによる変革を主導する経営幹部。社内外ステークホルダーとの連携を通じて、事業価値創出とリスク管理の両立を担う。

また、CAIOには、創出したい価値に応じて最適な人物を登用する必要性もあります。

「データ管理」と「AIガバナンス」の管理・推進能力が基本的なスキルセットとして求められるのに加え、「コスト削減・効率化」を創出成果とする場合には、既存業務に精通し、現場部門と連携できる人材の登用が必要となります。創出したい成果が「新規収益源創出」の場合には、技術知見と顧客ニーズを結び事業化・収益化できる人材が求められ、「企業の在り方変革」の場合には、中長期的な視点でのビジョン策定と、ステークホルダーを巻き込んだ業界標準づくりができる人材の登用が必要となるでしょう。

調査結果から導き出したそれぞれのタイプのCAIOのペルソナは以下の通りです。本調査が、CEOをはじめとする経営層の皆様に、自社に最適なCAIO像に関する洞察を与え、組織の構想力強化につながるAI戦略を策定するための一助となれば幸いです。

AI活用による既存業務の業務委託費・業務時間削減率を主要KPIとして有しており、各業務部門におけるAI人材の育成の責任も負っている。

CAIOとしての主な役割

  • AIによる既存ビジネス高度化
  • AI人材の採用・育成
  • AIによるバックオフィス業務効率化

CAIOの経歴

新卒入社後、大規模コンタクトセンターの運営を担当し、応対ログを分析して教育・欠員・再問い合わせのコスト構造を可視化。コストドライバーに対するAI活用施策の業務実装をリードし、成功モデルをバックオフィス各部門へ横展開。既存ビジネスのコスト構造間への深い理解とAI活用の実績が評価され、全社オペレーション改革を託されてCAIOに就任。

AI活用による新規ビジネス創出を目的に、社内のさまざまな責任者と連携を通して顧客理解を深め、新たなAIサービスの開発やAI技術の研究をリードしている。

CAIOとしての主な役割

  • AIによる新規ビジネス創出
  • AIによる既存ビジネス高度化
  • AIの技術研究・開発

CAIOの経歴

入社後、顧客との共創プロジェクトでAIの試作から本番導入までを担当し、既存サービスの価値向上に貢献。プロジェクトで培ったノウハウを基に汎用的に活用できるAPIを開発し、サブスクリプションで提供するビジネスモデルを確立。新技術を事業に変える変換力と組織連携の実績を買われ、成長領域の創出を加速するCAIOに社内登用。

中長期でのAIによる大きな価値転換に備えるためにCAIOとして外部から就任。AI活用を柱としたビジネス戦略を描きつつ、その下準備としてAIガバナンスを構築している。

CAIOとしての主な役割

  • 全社AI戦略の策定と推進
  • エグゼクティブへのAI教育・啓発
  • AIのリスク管理

CAIOの経歴

複数のIT企業でAI領域の技術戦略・データ活用・リスク管理の支援を横断的に経験。AI活用による短期での成果創出と中長期における競争力の向上の両立を見据え、AIに対する経営層の意識改革、活用の下準備としてAIガバナンスの構築を重要視。経営層の目線で「AIによる企業変革」を経営テーマと捉える考え方と、その実現に向けた実行力を期待され、外部からCAIOとして就任。

調査概要

①アンケート調査

調査実施時期:2025年6月5日~6月9日
回答者数:1024名
調査方法:Web調査

調査対象の条件:
・日本国内の企業・組織に属する従業員
・売上高500億円以上
・課長以上
・AI導入に対して何らかの関与がある人物

質問内容:
・CAIO職の設置状況
・CAIO人材組織
・期待役割
・CAIOの成果
・AI活用推進状況について

②インタビュー調査

最前線で活躍する現役CAIO4名へのインタビュー

インタビュー対象者
株式会社博報堂DYホールディングス 森 正弥氏
株式会社日立製作所 三溝 勝広氏
株式会社電通デジタル 山本 覚氏
楽天グループ株式会社 ティン・ツァイ氏

CAIO実態調査2025

―AI経営の成否を分けるリーダーの条件​

( PDF 6.55MB )

Chief AI Officer包括支援サービス

組織においてAIの効果的な活用を実現するためには、経営層がリードし、全社的な改革を推進することが不可欠です。その中心的な役割を担うのがChief AI Officer(CAIO)です。PwC Japanグループでは、CAIOの活動支援をするとともに、CAIOの設置を検討している企業向けのサポートも提供しています。

詳細はこちら

執筆者

藤川 琢哉

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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三善 心平

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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荻野 創平

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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橋本 純

パートナー, PwC税理士法人

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塩原 翔太

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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