
『セキュリティ・クリアランス制度』法制化の最新動向と日本企業が取るべき対応【第4回】ガイドライン及びQ&Aの公表
2025年5月2日付で公表された「重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)」、「重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(行政機関編)」及び「適正評価に関するQ&A」の概要を解説します。
不確実な時代、企業が持続的成長を遂げるために必要なのは、自ら変わっていくことです。
PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)が2024年6月7日に開催した「Technology Day 2024-生成AIやテクノロジーをビジネスにどう活かしていくか-」のBreakout Session 5「Business Model Reinventionをもたらすテクノロジーの効果的な活用方法」では、PwCコンサルティング上席執行役員パートナーの三山功と福田健、執行役員パートナーの濱田隆、マネージャーの霜田理沙の4名が登壇。企業が生き残るために必要な新しいビジネスモデルを構築する方法について議論を繰り広げました。
(左から)福田 健、霜田 理沙、濱田 隆、三山 功
登壇者
三山 功
PwCコンサルティング合同会社 上席執行役員 パートナー
福田 健
PwCコンサルティング合同会社 上席執行役員 パートナー
濱田 隆
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー
霜田 理沙
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー
講演冒頭、PwCコンサルティング執行役員パートナーの濱田隆は、企業の存続とビジネスモデルに関する「50%」「52%」「45%」という3つの数字を取り上げました。
「最初の『50%』とは、S&P500企業の平均年齢(S&P500に組み入りし続けている年数)が、1980年の37年から、2023年は17年に半減していることを指します。つまり、グローバルトップ企業の顔ぶれが、短い期間で大きく変わっているのです。次の『52%』は、2000年にFortune500に選ばれていた企業のうち、2023年までに倒産あるいは買収されている割合を示しています。そして最後の『45%』は、PwCコンサルティングがグローバルで毎年実施しているCEO意識調査の最新の結果で、実に45%のCEOが、同じビジネスモデルを続けていると、10年後に自社は存続できなくなると答えています。しかも日本ではこの数字はさらに高くなり、なんと7割近いCEOが存続を危惧している状態です」(濱田)
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー 濱田 隆
こうした背景を踏まえて、PwCコンサルティングでは企業のビジネスモデルを変革する支援として、Business Model Reinventionを推進しています。Business Model Reinventionとは、不確実な現代において、企業が収益を上げ続けるために必要なプロセスやビジネスルールに変革をもたらすアプローチを指します。
Business Model Reinventionを実行するにあたっては、企業の価値創造を根本的に変えるテーマを見つけ出し、そこに向けた最小単位のMinimum Viable Product(MVP)を作り、成長させていくアプローチを取ります。PwCコンサルティングでは、今後10年で成功できるビジネスモデルを調査するため、グローバルで成功している企業の分析を実施。その結果を、次に示す6つの「Business Model Reinventionタイプ」に絞り込みました。
6つのタイプとは、サブスクリプション型で顧客に価値を提供する「Anything as a Service (XaaS)」、製品をインターネットに接続することで価値を生み出す「フィジカル/コネクテッド製品」、物理的な形を必要としないソフトウェア化された資産「デジタル製品」、顧客接点の変革で新たな販売チャネルを生み出す「チャネル・ディスインターミディエーション」、テックジャイアントのビジネスモデルでもある「エコシステム/プラットフォーム」、そして、企業自身が顧客に提供する価値の形を再定義する「バリューチェーンの転換」となります。
「この6つのタイプのいずれかに分類される場合もあれば、複数のタイプを組み合わせた新しいモデルが生まれることもあります」(濱田)
続いて、戦略コンサルティング部門でFuture Design Labに所属する三山功から、Business Model Reinventionにおける戦略的なMVP開発の重要性について説明がありました。
企業がBusiness Model Reinventionを推進するには、単に新事業を考えてそれを始めればいいというわけではないと、三山は話します。
「その企業の収益構造を大きく変えるビジネス変革を実現するためには、多くのことを同時に考えなければいけません。最初に重要なのは戦略であり、未来のデザインです。未来の産業モデルを優れたデザインにして、それを実現すると、自社の業績や財務はどう変化するのか。そこまでセットで考えて、MVPを作っていく必要があります」
PwCコンサルティング合同会社 上席執行役員 パートナー 三山 功
MVPをソリューションとして設計する際、自社のメインストリームで進めるか、あるいは別のKPIを持った特命チームで実行するのか、または外部のスタートアップと組むのかは判断に迷うところです。そのため、PwCコンサルティングではそういった組織作りや外部との提携、M&Aも含めた総合的な支援を提供することを意識していると、三山は説明します。
これを受けて濱田が、6つのBusiness Model Reinventionタイプの筆頭に挙げていたXaaSについて、新しいビジネスモデルを作っていくために必要な論点を説明しました。
XaaSビジネスモデルを構築するためには、戦略に始まり、顧客に価値を提供するためのサービスのデザイン、カスタマーサクセス、開発、運用体制の構築、そしてそれらのベースとしてのITインフラやデータの管理といった幅広い領域のデザインが必要とのこと。その実現には、社内のIT部門はもちろん、課金管理を担う経理部門、法規制対応のための法務部門など、さまざまな部署を巻き込み、連携しなければいけないことが分かります。
「XaaSビジネスの開発は、ビジネスを企画してからIT部門が開発をスタートさせるという世界ではありません。ビジネス部門とIT部門が同時に考え、連携して開発を進める必要があります」(濱田)
テクノロジーの面では、どんな視点が必要でしょうか。SaaSの構築を例に、PwCコンサルティングのマネージャー霜田理沙は、次のように説明します。
「売切りモデルからSaaSへのシフトを考えたときに必要なアーキテクチャは、一貫したプラットフォームです。SaaSでは、クライアント向けのフロントの部分をはじめ、バックの顧客管理と分析、複数の商材をサブスクリプションで管理するシステム、そして企業の会計、経理のシステムなどがデータ連携しなければならないからです」
次に上席執行役員パートナーの福田健は、Business Model Reinventionの実施において、戦略立案からサービスの完成まで、さまざまな部門の人を巻き込む際にどんな苦労があるかを三山に質問しました。
三山は、うまくいかなかったケースを紹介しました。「ある企業は新事業を始めるにあたり、別の企業と資本提携をするスキームを計画しましたが、経営陣と現場で資本政策やガバナンスの具体案を詰めることができずに、計画が止まってしまいました。これは全方位の準備を進めなかったため、“点のビジネス”で終わってしまった失敗の例です」。
濱田も同意し、「Business Model Reinvention実現のための方法論に、『このパターンが絶対』というものはありません。クライアント企業ごとに置かれている状況が異なりますから、毎回打ち手を変えてチューニングを繰り返す方法が、一番近道だと思います」と話します。
その上で、新しいビジネスを始めるときに、いきなり連結子会社を作って外に出してしまう方法は、社内の各部門との連携が難しくなって頓挫するケースが多く見られると指摘します。「できれば社内で小さく始めて、各部門との連携を取って進めながら、成果が出たところで次の形に変えるアプローチがお勧めです」(濱田)
霜田もサブスクリプションのプラットフォーム開発プロジェクトで、IT部門と顧客管理の事業部門との連携がうまくいかず、失敗した経験があると打ち明けます。「業務部門とIT部門のあいだで、顧客管理の範囲の認識にズレがあったために、要件定義の段階で齟齬が発生してしまったことがあります」。
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 霜田 理沙
三山は、失敗を恐れず、Business Model Reinventionを成功に導くためには、MVPをポートフォリオで考えるべきだと語ります。「新しいビジネスの方向性に対して、1つのMVPがうまくいかなくても、全て中止にするのはよくありません。ポートフォリオの考えに基づいて、リスクとリターンの異なる複数のMVPチームを走らせるようなマネジメントのスタイルがカギを握ると考えています」。
濱田は、「『失敗バンク』を作り、そこにチームが解散したプロジェクトを入れておけば、後に伝承することができるという話をよくクライアントとします。過去にだめだったとしても、将来使えるテーマが出てくるかもしれません。そのとき、失敗情報を資産としておけば、お金をかけずに再起動することができます」と語りました。
また技術的には、小さな開発を複数動かす際、「マイクロサービスアーキテクチャ」が有効だと霜田は話します。SaaSを例に取ると、核となる中心部分にサブスクリプションのプラットフォームを置き、その周辺にユーザー向けのインターフェースや課金などの個別システムとの連携する部分を都度マイクロサービスとして加えていく考え方です。失敗した際は、個別のマイクロサービスはそのまま次の開発で使うことができます。
「マイクロサービスは身軽なので、発想を活かして小さな開発を繰り返しやすくなります」(霜田)
次に福田は、三山が率いる「Future Design Lab」における未来創造について聞きました。企業がBusiness Model Reinventionを考える際、どのくらいのスパンがかかるのかが疑問だったといいます。
それに対して三山は、「10年後をターゲットに、そこからバックキャストし2、3年後に導入するビジネスを構想する企業が6、7割程度、残りは例えば20年後以降の未来をターゲットにして、そこからバックキャストすると何が必要かを考えます。特にエネルギーや自動車などの産業は、それくらい長期で目標を考えることになります」と答え、実際の未来創造から戦略策定までの期間は、3~6カ月になると明かしました。
さらに福田は「私も参加したことがありますが、かなり盛り上がります。何か参加者の心に火をつけるポイントはあるのでしょうか」と問いかけます。
PwCコンサルティング合同会社 上席執行役員 パートナー 福田 健
三山は、「参加者に議論をしていただくときに、心が奮い立つような未来をイメージできるようテーマや仕掛けを施します。ただし、あまりにも現実と離れてしまっても共感を集めることはできません。その辺のバランスを取りながら、現実のビジネスとの接続性を重視して、議論が進むようにコントロールすることが重要です」と答えます。
濱田は、実現性と同時に、スピードも重要だと指摘しました。「未来創造の議論は、区切りを設けなければ永遠に続いてしまいます。企業にとってはファーストステップとして、できるだけ早く結論を出すべきだと思います」
三山も「この不確実性の高い世の中で、企業のニーズはできるだけ早く、ビッグピクチャーから形のあるサービスに落とすことが肝要です。現在の構築期間をさらに短縮していきたいですね」と語りました。
福田は最後に、PwCコンサルティングがBusiness Model Reinventionを推進する理由や意義を3名に尋ねました。
「未来の産業や社会の中で成功するビジネスを、時空間を圧縮して実現までつなげていくのがBusiness Model Reinventionの目的です。この実現には総合力が必要です。PwCコンサルティングのケイパビリティをフルに活かし、Business Model Reinventionによって未来とクライアントをつないでいきたいと思います」(三山)
「小さくMVPを始めていくことが正攻法だと思っています。それだけなら、他社でもできますが、PwCコンサルティングの強みは、総合ファームとしての豊富な人材です。戦略からIT、会計監査、税務まで、新しいビジネスによって生じるあらゆる事業環境の変化に対応できるメンバーが揃っています」(濱田)
「今日お話ししたように、Business Model Reinvention実現には非常に複雑なプロセスが必要です。それに対応する複雑なアーキテクチャを作るための支援をすることが、テクノロジーチームの使命です」(霜田)
まとめとして福田は、「まさにBusiness Model Reinventionは、陸上の十種競技のように総合力が大切だと分かりました。新規事業に取り組んでDXを推進される企業の方は、ぜひ私たちとディスカッションさせていただければと思います」と話し、講演を締めくくりました。
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