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経済キャスター
小谷 真生子 氏
PwC Japan グループ代表
木村 浩一郎
SDGsの道しるべ
パートナーシップで切り拓くサステナブルな未来
SDGs達成に向けた取り組みは、人類全体が進むべき道を探りながら歩んでいく長い旅路です。持続可能な成長を実現するためには、多くの企業や組織、個人が連携しながら変革を起こしていく必要があります。対談シリーズ「SDGsの道しるべ」では、PwC Japanのプロフェッショナルと各界の有識者やパイオニアが、SDGs17の目標それぞれの現状と課題を語り合い、ともに目指すサステナブルな未来への道のりを探っていきます。
経済キャスターの小谷真生子氏とPwC Japanグループ代表の木村浩一郎がSDGsの現状と課題、そこでのPwCの役割について語り合う対談後編では、2030年の目標達成に向けて求められるイノベーションと新たなリーダーシップ、取り組みを前進させる「共感」の重要性について対話を繰り広げます。
小谷氏:
前編ではESG投資の潮流がSDGsに向けた取り組みを後押しする可能性についてお話ししましたが、それでもあと10年弱のうちに積み残した課題を全て解決するのは難しいのではないかと思います。SDGsの達成に少しでも近づくためには、何が必要でしょうか。
木村:
まずはイノベーションです。SDGsは既存の対策の延長線では達成できず、パラダイムを変えるイノベーションが必要であることは、誰もが認識するところだと思います。問題はそれをどう起こすかということですね。
小谷氏:
PwCとしては、イノベーションの実現にどう貢献されるのでしょうか。
木村:
クライアントのイノベーションを支援するという面と、自分たちがイノベーションを起こすという面と、両方あります。クライアントに対しては、さまざまな領域でプロフェッショナルサービスを提供するメンバーファーム間で協働し、PwCのグローバルネットワークのリソースや知見も生かしながら、多面的なサポートをしています。PwCによるイノベーションの一例としては、監査法人が長年かけて築き上げてきた信頼性の高い財務諸表監査の実績を非財務情報へと広げ、ステークホルダーへの信頼できる情報開示の仕組みづくりをしていくといったことが挙げられます。
また、イノベーションを生み出すためにはテクノロジーの活用が不可欠であり、それを使いこなせる人材を育てることも必要です。そうした観点から、PwCの職員・スタッフはもとより、社外のビジネスパーソン、さらにはこれから社会に出ていく子どもたちのデジタルリテラシーを高める取り組みなども進めています。
小谷氏:
デジタルリテラシーの向上を通じてイノベーションを促進するということですね。そう考えると、デジタルデバイドの問題は深刻ですね。子どもたちにIT教育の機会が十分に与えられていない国や地域ではイノベーションが起きず、さらなる分断を招いてしまいます。
木村:
そのとおりだと思います。ユニセフが2020年3月に世界150カ国以上の若者4万人を対象としたオンライン調査の結果を発表しましたが、これによると若者の3分の1が現在の教育では将来仕事に就くためのスキルを準備できないと感じているということでした。この結果を受けて、PwCはユニセフと協働し、教育の機会を十分に与えられていない数百万人の若者にITスキルを身に付けてもらう活動を進めています。
小谷氏:
PwCのビジネスモデルからすると、子どもたちの教育支援は直接的な収益につながるわけではありませんよね。
木村:
私たちとしては、将来のビジネスに対する危機感から取り組んでいる、本業に直結した活動だと考えています。というのも、私たちのビジネスはデジタル人材が確保できなければ成り立たないからです。テクノロジーは、変革と成長を実現するイネーブラーです。AIによる定型作業の自動化など、テクノロジーを活用することで、人間はより高度な価値を生み出す仕事に専念できるようになります。そのためにはテクノロジーをイネーブラーとして使いこなせることが前提となりますが、入社後に1からトレーニングするのでは間に合いません。社会に出る前の段階からデジタルスキルを身に付けておくこと、さらに言えば、社会人になってからもテクノロジーの進化についていけるよう継続的にアップスキリングに取り組むことで、デジタル時代に価値を生み出し続けることが可能になるのです。その機会を提供することはPwCだけでなく産業界全体の課題であり、企業や国の競争力向上に直結する問題だと思っています。
小谷氏:
SDGsの達成にはコレクティブインパクトが不可欠と前編でうかがいましたが、こうした協働のためには、これまでの利益追求型の企業経営とは異なるリーダーシップが求められるのでしょうか。
木村:
不確実性の高い世界で幅広いステークホルダーを巻き込んで変革を起こしていくためには、新しい形のリーダーシップが必要です。PwCではこれからのリーダーに求められる資質を「6つのパラドックス」として定義しました。「グローバル思考のローカリスト」「清廉な策士」「謙虚なヒーロー」「戦略的な実行者」「テクノロジーに精通したヒューマニスト」「伝統を尊重するイノベーター」の6つです。
小谷氏:
いずれも対照的な要素が入っていますね。私も多くの経営者とお会いしてきましたが、これら全てを兼ね備えた方はなかなかいないような気がします。
木村:
そうかもしれません。ただ、ADAPTとして示したような複雑な社会変化の中では、過去の経験や常識だけでは正解を導き出すことができません。これまでの成功体験が通用しなくなるのです。言い換えれば、必ずしも経験豊富であればリードできるわけではなくなってきます。そこで、一見相反するような資質を兼ね備え、対極にある視点から物事をとらえ直しながら、変化の中でも柔軟かつスピーディーに組織をリードしていけることに価値が生まれます。
小谷氏:
確かに、「若い者には任せておけない」とは言えない時代ですね。上場企業が20代の若手社員をCEOに抜擢するといったケースも出てきていますし、特にデジタルの活用ということを考えると、年齢や経験に頼るよりもテクノロジーに精通している人に任せた方が成長を加速できるのかもしれません。
木村:
そうですね。パラドックスの全てを兼ね備えるのはハードルが高いにしても、こうした相反する資質を多様な人材でカバーするという方法もあるでしょう。多様性というとジェンダーや国籍を発想しがちですが、同様に世代のダイバーシティ&インクルージョンも重要です。私も自戒を込めて社内に伝えているのですが、当社ではパートナーと呼ばれる最上位の職階が最も危機感を持たなければならないと思っています。経験にあぐらをかくことなく、常に知識やスキルをアップデートしなければ、置いていかれてしまうでしょう。デジタルネイティブの若い人たちから年長者まで、あらゆる世代の人材が活躍できることは組織にとって大きな力になります。
小谷氏:
リーダーの多面性や組織としての多様性はイノベーションにもつながりますね。
木村:
そのとおりです。また、SDGsの達成や社会課題に取り組むにあたって立場の異なる幅広いステークホルダーと連携する際にも、多様な人材がもたらす多角的な視点は非常に重要になります。
リーダーの多面性や組織としての多様性はイノベーションにもつながります。
小谷氏:
ここまでのお話をうかがうと、この混沌とした時代の中で、さまざまな要素、人材、プレーヤーを結びつけながら未来へ向けて前進させようとしているPwCの姿が見えてきます。
木村:
そのようにご理解いただけるとうれしく思います。ADAPTに示したように、現代社会では非対称と分断がますます進んでいます。一方で、SDGsに象徴される持続可能な開発に関する課題は、全人類に共通するものです。共通の課題にともに取り組んでいくためには、立場や利害の異なる人たちが共感できるポイントを見いだす必要があります。
小谷氏:
なるほど、単に違いを寄せ集めるだけではなく、そこに共感が生まれなければ物事は動かせませんね。
木村:
はい、企業が自社の利益追求から社会や地球環境といった課題へと目線を切り替え、アクションを起こしていくには、新しい価値観に対してしっかりと納得感を持てなければなりません。社内外のステークホルダーと議論や対話を繰り返し、共感を醸成していくことが求められるのです。そうした共感が積み重なって初めて、コレクティブインパクトが実現できるのだと思います。PwCにはプロフェッショナルサービスファームとして、産官学の幅広いクライアントや協業パートナーと連携して課題を解決してきた実績と、そこで培った信頼があります。それを生かして多様なステークホルダー間の共感づくりに貢献することが、私たちの果たすべき役割だと考えています。
小谷氏:
SDGsで言えば、17番目のゴール「パートナーシップで目標を達成しよう」に当てはまりますね。
木村:
パートナーシップ力はPwCの大きな強みですので、まさにそうですね。加えて、多岐にわたる専門領域のプロフェッショナルを擁していますから、その他の16のゴールについてもいろいろな形で貢献できることがあります。このシリーズでは今後その一つひとつを対談を通じてご紹介していきたいと思っています。
小谷氏:
それは楽しみですね。期待しています。本日はありがとうございました。
2030年までにSDGs達成、2050年までにネットゼロ達成──多くの経営者やリーダーは、この大きな課題を前に戸惑いを感じることがあるのではないでしょうか。一方で、ESG投資を追い風とし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により勢いを増した変化を梃子(てこ)にして、取り組みを加速する環境は整いつつあります。小谷さんにご指摘いただいたとおり、PwCはパートナーシップで目標へと前進させる役割を果たすとともに、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というパーパス(存在意義)を体現するためにも、共感と信頼を原動力として人類の共通課題の解決に貢献していきます。(木村)
1965年大阪府生まれ。航空会社を経てニュースキャスターとなり、1998年から約16年間、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト(WBS)」のメインキャスターを務めた。2020年3月から5回にわたって放映されたBSテレ東開局20周年特別企画「SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査~」では、さまざまな角度からの取材を通じてSDGs実現のために日本が果たすべき役割を探った。
1963年生まれ。1986年青山監査法人に入所し、プライスウォーターハウス米国法人シカゴ事務所への出向を経て、2000年には中央青山監査法人の代表社員に就任。2016年7月よりPwC Japanグループ代表、2019年7月よりPwCアジアパシフィック バイスチェアマンも務める。
※ 法人名、役職、本文の内容などは掲載当時のものです。