【サステナビリティ経営を企業価値につなげるために】 ―統合思考に基づく価値創造プロセスの可視化―

2023-12-18

※2023年11月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

環境・社会価値と経済価値の両立の時代

サステナビリティへの関心は世界中で年々高まっています。PwCが2021年に実施した「第25回世界CEO意識調査」において、世界のCEOの33%が自社の成長に対する脅威として、「気候変動」について「非常に懸念している」または「極めて強く懸念している」と回答しました。また、PwCが2022年に実施した「サステナビリティに関する意識調査」では、商品購入の際に、環境・社会への配慮を意識している日本の消費者は44%に上るという結果となりました。

社会の変化や消費者および投資家からの要請の高まりに伴い、環境や社会に対する取り組みは、単に法令対応のためのものから、企業の社会的責任として対応すべきものへ、さらには企業価値の前提となるものへと進化しています。そのため、企業には環境・社会価値を経済価値との「トレードオフ」ではなく、長期的な企業価値向上を見据えて両立可能な「トレードオン」にすることが、今まさに求められています。

日本企業のサステナビリティに係る取り組みの課題

このような背景から、企業の価値創造に結びつく環境・社会の重要課題を特定して解決に取り組む企業や、統合報告書などで非財務情報の開示を強化する企業が増えています。

一方で、日本企業のこのような取り組みに対して、一部の投資家は「WHATを並べているだけで、肝心のWHYが見えてこない」と満足していません。企業の収益性や成長性は株式市場で適正に評価されず、PBR (株価純資産倍率)が1倍割れするなど、それぞれの取り組みが企業価値の向上につながっている企業は多くないのが現状です。

そして企業経営者からは、サステナビリティの取り組みに関して、下記のような疑問の声が上がっています。

  • サステナビリティの取り組みは企業価値向上につながるのか
  • サステナビリティに関する将来財務へのリスク・機会として何があり得るのか
  • 現在設定している非財務指標やKPIは適切なのか

欧米先進企業からの示唆 ―統合思考に基づくアプローチ―

ここで、先駆者たちの対応を確認したいと思います。PwCが2018年にサステナビリティ先進企業22社を対象に行った調査の結果からは、欧米の企業群は非財務指標を形式的に設定しているのではなく、将来の財務価値向上へのつながりを明確に理解した上で、環境や社会に関する取り組みを推進していることが明らかになっています。これは2013年にIIRC(International Integrated Reporting Council︓国際統合報告評議会)が発表した「統合報告フレームワーク」の中で提示された「統合思考」という考え方と合致します。

「統合思考」では、経済活動の前提としての社会があり、さらに社会が成り立つ前提として環境があると考え、企業の価値創造に不可欠な「6つの資本」として、従来からの財務資本に加えて5つの非財務資本を定義しています。

  • 財務資本
  • 非財務資本
    • 製造資本(工場設備、サービス拠点など)
    • 知的資本(特許、ノウハウなど)
    • 人的資本(経営者、従業員など)
    • 社会・関係資本(取引先、消費者、地域住民など)
    • 自然資本(大気、水、生物多様性など)

そして、財務・非財務資本を投入して、商品・サービスなどのアウトプットを生産するという企業活動において、各資本を毀損することなく、増強・維持しながら企業価値を創造することを目指しています。上述の先進企業では、この「企業価値向上⇒各資本の増強⇒再投資」の考え方を組み込んだ経営管理を実施し、好循環のプロセスを回すことができています。

価値創造プロセスの可視化

価値創造の好循環プロセスを実現するためには、まずは「6つの資本」に関係する企業活動と将来の財務価値向上までの因果の連鎖(インパクトパス)を可視化することが起点となります。これまでブラックボックスであった因果の連鎖(インパクトパス)を可視化することで、環境や社会に対する取り組みと企業価値向上のつながりが明らかになり、納得性の高い独自の価値創造ストーリーに基づく経営判断や情報開示が期待できます。

PwC Japanグループでは、「6つの資本」に関係する企業活動と将来財務へのつながりと影響を包括的に可視化するSustainability Value Visualizerというツールを独自に開発しました。これにより抜け漏れなく、かつ効率的にクライアントの価値創造プロセスを可視化することが可能になります。

また、可視化した結果を踏まえて、サステナビリティ戦略の策定から経営管理、社外コミュニケーションまで幅広く支援するサービスを提供しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

インパクトパスの 概要

さらにご興味のある方は、下記のサイトをぜひご覧ください。

【将来財務へのインパクト可視化支援︓Sustainability Value Visualizer】
https://www.pwc.com/jp/ja/services/sustainability-coe/sustainability-management/finance-impact.html

【サステナビリティ経営支援サービス】
https://www.pwc.com/jp/ja/services/sustainability-coe.html

執筆者

宮本 幸治

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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