【グループ経営を支えるITシステム】 ~グループ統一システム展開のポイント~

2023-04-27

※2023年3月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

電力・ガスなどのエネルギー業界では、いわゆるSAPの2027年問題もあり、新たなクラウド型ERPソリ ューションへの移行が進んでいます。そしてこれを機に、親会社だけでなく、グループ会社も含めた統一システムの導入を検討するケースが非常に多くなっています。

これまでエネルギー業界では、連単倍率が低く、親会社の連結収支に与える影響が著しく大きかったことや、親会社の機能分担会社であることなどから、グループ経営管理の必要性は低い状況でした。しかし近年、海外事業への積極投資や、トレーディング会社の設立、新規事業開発の活発化などにより、経営管理の視点も親会社単体からグループ全体最適へとシフトしています。このようなグループ経営を支える基盤として、グループITシステムの再構築が求められているのです。

グループ経営を支えるITシステム構成のパターン

グループのITシステム構成は大きく以下の2つのパターンに分類され、自社の事業運営スタイルに適した型を選択します。

【パターン1 グループのERP統合】

自動車などの製造業では、グローバルで生販統合し、リアルタイムで生販調整を行うことが不可欠です。そのため、これを実現する手段として、会計・調達・販売機能を中心とするグループのERP統合(グループ共通ERPシステム導入)がなされています。主に外資などのグローバルトップダウン型企業では、この型が採用されています。

【パターン2 統合データベース構築】

これまで事業・地域・個社の独自性を尊重していた企業においても、昨今のグローバルオペレーションの加速に伴い、統合データベースを構築し、各社ERPから、仕訳明細レベルの情報を収集するなど、グループ全体を“1つの会社”とみなし、経営環境の変化を迅速に捉えることが可能な仕組みを採用するケースが増えています。

図表1 グループITシステム構成のパターン

電力・ガスなどのエネルギー業界では、事業特性に加え、比較的規模の小さい子会社も多く、親会社と同様の機能・コスト負担は過剰であることや、特に海外は地域統括会社を起点とした案件単位での投資も多いことから、パターン2が適合するケースが多いかと思われます。共通ERPシステムを展開する範囲を慎重に見極めたうえで、統合データベースによりグループの経営状況をタイムリーに把握する仕組みを構築できるかが肝要です。

グループ展開・定着化を成功に導く3つのポイント

①グループ全体で管理すべき経営情報の見極め

グループ情報連携基盤で一元管理するトランザクションやマスタを定義するにあたっては、グループ経営において管理すべき情報や粒度を定義することが重要です。そのためのアプローチの1つとして、まずは現状の経営報告書やデータ構造をベースに、BIツールなどでクイックに経営情報を可視化することが考えられます。実際に経営報告など業務試行することで、経営層やユーザ部門から具体的な要望を受け、その後の要件定義を手戻りなく進められ、かつ早期に効果を体感することが可能です。

②業務改革の推進

システム導入はあくまで手段に過ぎず、業務改革こそが真に重要です。エネルギー業界では、独自の商慣習や顧客ファースト視点から、複雑固有な業務・機能が多い印象ですが、これら現行に対するFit Gap分析ではなく、あるべき姿に対するGapを認識し、業務改革を並行して推進することが求められます。PwCJapanグループでは、“Fit to Standard”を実現している国内製造業やグローバルエネルギー企業の利用実績も豊富なグローバルベストプラクティスを組み込んだ標準業務テンプレートを活用することで業務改革点を抽出し、改善に向けて取り組みます。

③子会社の巻き込み

子会社の実態は、親会社が認識している以上にバラバラであるケースが多々見受けられます。親会社にシステムを導入してから子会社とのコミュニケーションを始めるのではなく、プロジェクトの早期から子会社を巻き込み、グループ標準を共同で作り上げることが重要になります。これにより子会社でも自分事化され、円滑な導入につながります。

PwC Japanグループでは、事業特性を踏まえた最適なグループ経営管理の制度設計、およびそれを支えるITシステム構築において豊富な実績があります。ぜひお問い合わせください。

執筆者

福本 悠

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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