【日本と英国のコネクテッドホーム/スマートデバイス調査結果】~コロナ禍を踏まえた消費者意識の変化~

2021-11-02

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前回は、サーキュラーエコノミーを巡る原則と戦略について最新動向をお伝えしました。今回は、コネクテッドホーム/スマートデバイス市場における消費者の最新動向を考察いたします。

コネクテッドホーム市場における商機を狙う大手プレーヤー

コロナ禍の影響により全世界的に在宅時間が増加した2020年以降、スマートホーム市場を牽引する大手プレーヤーは、新たな消費者ニーズの開拓を狙っています。インターネット大手企業が今年米国にオープンしたリアル店舗では、自社が提供するハードウェア製品やロゴ入りのアパレル製品を販売するだけでなく、家庭を模したコンセプトルームでスマートホームを体験できるような仕掛けを用意して注目を集めました。こうした中、消費者側の意識にはどのような変化が起きているのでしょうか。今回は、日本と英国におけるコネクテッドホーム市場に関する最新の消費者調査を用いて、ライフスタイルの変化を考察した上で、ビジネス機会創出に向けたエネルギー事業者側の対応への示唆をご提示します。

日本におけるコネクテッドホーム意識調査

PwC Japanでは、一般家庭における消費者2,000名を対象としたコネクテッドホーム/スマートデバイス意識調査を実施しました(2020年5月)。意識調査の結果、コネクテッドホーム/スマートデバイスともに消費者意識が前回調査時点と比べて高まっており、コロナ禍による在宅時間の増加により光熱費への意識が高まっていることが分かりました。

① コネクテッドホームの普及率ならびに導入検討中の割合が増加

コネクテッドホームのサービスについて導入を検討中の層は31.3%存在していることが明らかになり、前回調査時と比較し約11ポイント上昇しました。また、利用に関する普及率は16.1%(同約10ポイント上昇)となりました。

図表1 コネクテッドホームに関するサービスの利用状況

② スマートデバイスの認知度が上昇

スマートデバイスにおいては、「スマートホームアシスタント」(前回比7.8%増)、「スマートホームセキュリティ」(前回比7.9%増)などを中心に、全てのキーワードで認知度が上昇していることが明らかになりました。

図表2 スマートデバイスに関するキーワードの認知度

③ コロナ禍による在宅時間の増加により光熱費への意識が高まる

コロナ禍を受けて関心度合が高まった分野として、大半(84%)の回答者が健康管理を挙げています(優先度1位~3位の合算値)。健康管理に続き、関心度合が高まったのは、仕事・収入(同41.7%)、光熱費/食費(同24.2%)、防災/危機管理(同22%)、娯楽/エンターテイメント(同17.5%)となり、リモートワークや在宅時間の増加による家計への影響、安全対策や余暇の過ごし方に関心が高まったといえます。

図表3 コロナ禍での関心事項

英国におけるコネクテッドホーム意識調査

海外におけるコネクテッドホームへの消費者意識はどのような変容を見せているでしょうか。コネクテッドホーム先進国である英国において、PwC英国が同様の調査を実施しました(2021年1月、英国内2,000名を対象)。調査の結果、コロナ禍を受けたエネルギー消費への意識の高まり、ネットゼロへの関心の高まり、低炭素メニューへの需要の高まりが判明しています。

コロナ禍の影響により、全体の43%が以前よりもエネルギー消費への意識が高まったと回答しており、前回調査時(2020年5月)の30%から13ポイント増加しました。上記43%を全体とした場合、97%は供給者乗り換えや消費パターンの見直しなど、なにかしらの行動変容を検討したことがあると回答しています。

ネットゼロについて認識していた56%を全体とした場合、実に93%が目標の達成に関心を示しています。

社会・環境意識が高い需要家(全体の29%)を全体とした場合、73%が低炭素メニューに対して料金体系と同等またはそれ以上の重要性を感じており、27%は低炭素エネルギーのために上乗せ料金を払っても構わないと感じています。

コネクテッドホーム市場における成功要素と海外事例

コネクテッドホーム市場における日本や英国の消費者における意識変化を踏まえて、エネルギー事業者が問うべき質問は3つ存在します。

自社ブランドが需要家にとって魅力的に映るためにどのような差別化を行うことができるか。

料金体系以外に、どのような価値提供を通じて市場ポテンシャルを掴むことができるか。

社会・環境意識の強い需要家が有する高い期待値を満たすためにどのようなビジネスモデルを創造すべきか。

例えば、英国の独立系エネルギー事業者は、消費者動向の変化を上手くとらえることで、2015年の設立以降に急成長を実現しています。全メニューにおいて再エネを活用することにより環境性の高さを打ち出し、環境意識の高い顧客を獲得し、家庭向け太陽光パネル、蓄電池、EVなどを組み合わせて活用することで、年間の電気代を5万円程度下げるといった画期的な料金メニューを提案しています。そこで使われるテクノロジーがコネクテッドホームとリアルタイムプライシングです。コネクテッドホームでEVを含む家庭内機器を制御するとともに、リアルタイムプライシングによる顧客にフェアな料金メニューを導入することで、エネルギー費用の削減の提案・生活スタイルの見直しなど顧客の行動を促す仕組みを取り入れています。

このように、電力価格と連動して、多様なホームIoTデバイスおよび分散型電源をコントロールすることを可能とし、kWh販売にとらわれないサービスプロバイダーを目指しています。消費者意識の変化をいち早く捉え、コネクテッドホームの付加価値を高めていると言えます。

執筆者

佐野 慎太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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