ストックオプション課税に係る国内法と租税条約の交錯~国税不服審判所平成29年8月22日裁決~

2019-02-21

PwC Legal Japan News
2019年2月21日

今回のニュースレターでは、ストックオプション課税に係る国内法と租税条約の交錯(適用の在り方)について、国税不服審判所平成29年8月22日裁決(以下「本件裁決」といいます)を題材に若干の検討をします。

本件は、日本の居住者であったXが税制適格ストックオプションの権利行使により取得した株式につき、XがA国に出国後(非居住者となった後)に、株式保護預り口座から保管口座へ移管したことにより生じたみなし譲渡に係る譲渡所得課税に関し、国内法及び租税条約の適用による我が国の課税権の範囲が争われた事案であり、本件裁決は、一部日本の課税権を認め、納税者の請求を棄却する判断を下しました。

我が国の税法上、税制適格ストックオプションについては、行使時点では所得税は課されず(租税特別措置法(以下「措置法」といいます)29条の2第1項)、行使により取得した株式が譲渡された時点において、ストックオプションの払込価額(行使価額)と売却額との差額が、譲渡所得として課税の対象になります(措置法29条の2第7項、租税特別措置法施行令(以下「措令」といいます)19条の3第12項)。本件判決は、このように税制適格ストックオプションについて、国内法上は、譲渡時においてのみ譲渡所得課税が課せられるところ、かかる取扱いを租税条約の適用の関係でどのように取り扱うべきか(具体的には、租税条約上の譲渡所得条項を適用すべきか、給与所得条項等を適用すべきか)という点につき判断を示しており、今後のストックオプションをはじめとする様々な報酬形態(株式報酬等)の課税関係に係る国内法と租税条約の適用の在り方に示唆を与えるものと考えられます。

  1. 事案の概要
  2. 審判所の判断
  3. 検討
  4. おわりに

(全文はPDFをご参照ください。)

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