無形資産取引に係る移転価格裁判例の検討~残余利益分割法の適用が争点とされた裁判例等を中心に~

2018-11-30

PwC Legal Japan News
2018年11月30日

経済のグローバル化が進み、多国籍企業による国境を越えたグループ内取引が増大することにより、移転価格税制の問題が重要なものとなっています。特に近年では特許権、商標権、著作権等の知的財産権やノウハウを含む無形資産の移転又は使用に係る取引が増加しており、移転価格税制上もかかる無形資産取引に対する適用が大きな論点となることが見受けられます。

無形資産は、独自性・個別性(基本的な製造販売等の活動だけでは生み出すことのできない利益の発生に貢献する独自の機能等)を有するという特徴があるため、無形資産に係る国外関連取引については、比較対象取引を選定することが困難であり、伝統的な独立企業間価格の算定方法である基本三法(独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法)が機能しない場合があると考えられます。このような無形資産取引に対しては、取引の一方当事者のみが重要な無形資産を保有する場合に用いられる取引単位営業利益法(TNMM) や両当事者に重要な無形資産が存すると認められる場合に用いられる残余利益分割法(RPSM)等の適用が考えられますが、その適用の可否及び具体的適用の在り方については、納税者と課税当局との間で見解の相違が生じる場面が見受けられます。

現在、OECDが公表したBEPS対策のための方策に基づき、無形資産取引における独立企業間価格の算定方法(比較対象取引を特定することが困難な場合におけるDCF法及び評価困難なHTVIに係る取引に係る所得相応性基準)の導入等の国内税法の改正に係る議論が進められている ところですが、RPSM(残余利益分割法)の適用に係る争点は今後も実務上問題となり得ることから、本ニュースレターでは、無形資産取引に対してRPSMが適用された主な裁判例・裁決例を簡単に紹介すると共に、裁判例等を踏まえた実務上の留意点について説明します。

  1. 無形資産取引と移転価格税制
  2. 残余利益分割法の適用が争点とされた裁判例・裁決例等の概要
  3. 裁判例・裁決例を踏まえた実務上の留意点
  4. おわりに

(全文はPDFをご参照ください。)