月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 12月号

2023-01-12

2022年12月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. 連邦予算(オーストラリア)
  2. 2023年予算(マレーシア)
  3. 2022年財政法案(アイルランド)
  4. 2023年予算案(ポルトガル)
  5. 予算 – 暫定ミニマム税、みなし利子控除(NID)一部廃止、ロイヤルティーに係る外国税額控除改正(ベルギー)
  6. 2023年予算(ノルウェー)
  7. IRS、無形資産の国外移転に関するガイダンスを公表(米国)

連邦予算(オーストラリア)

2022年10月25日、連邦予算が公表された。本予算に含まれる税制改正と歳出措置には、過少資本税制の改正案、無形資産に係るクロスボーダー特定支払いの損金算入制限、多国籍企業グループに対する透明性義務の強化、オーストラリア税務当局(ATO)が多国籍企業グループを対象としたコンプライアンス活動を行うための予算増額などが含まれる。これらは、一般的に2023年7月1日以後開始する課税年度、または2023年7月1日以後に行われる支払いに適用されよう(これらの措置の発効日前に、法律案および継続協議が見込まれる)。なお、OECD第1の柱・第2の柱について更なる詳細は示されなかったものの、これらのプロセスへの継続的関与を再確認しており、最終的にこれらの措置を採用する可能性がある。

過少資本税制の改正

主な改正には、以下が含まれる。

  • 負債関連の控除をEBITDAの30%に制限する利益ベースのテストが導入されよう(現行のバランスシートベースのセーフハーバー方式では、負債が調整純資産の60%超の場合に広く利子控除制限)。本新方式では、事業体レベルでのEBITDAテストによる控除否認額は、15年までの繰越控除が可能となる(現在は繰越控除不可)。
  • 現行の独立企業間負債テスト(ALDT)は、事業体の外部(第三者)負債にのみ適用する、より制限的な代用テストに置き換えられよう(現在は、セーフハーバー方式に対する代替テストとして機能し、資本構成が独立企業ベースである限り、(関連者/外部いずれの負債であれ)負債控除を認めている)。
  • 現行のワールドワイド・ギアリング・テストは、利益ベースのグループ比率に置き換えられ、負債控除は、グループ全体の純利子費用のレベル(利益の割合としてのもの)まで認められよう(現行は、オーストラリア企業の負債資本比率をグループ全体のレベルまで広く認容)。

なお、現在の過少資本税制の下で金融機関に分類される事業体は、今次税制改正の影響を受けず、引き続き現行の特定制度を利用することになろう。
本改正は、2023年7月1日以後開始年度(事業年度が暦年の場合は、2024年1月1日以後開始年度)から適用されよう。

低税率または無税の国・地域で保有する無形資産に係る支払控除否認

本予算では、低税率または無税の国・地域で保有する無形資産に係る特定支払控除否認という提案措置に関して、さらなるガイダンスを示している。本措置はまだ立法化されておらず、多くの不明点はあるが、詳細が追加されている。
本予算によれば、本規定は、大規模(連結会計収入10億豪ドル)グローバル企業にのみ適用されよう。また、本規定は、関連者間の支払いにのみ適用されよう。低税率または無税の法域という概念は、税率15%未満(法定税率で判定の可能性)、または十分な経済実体を伴わない税制優遇となるパテントボックス制度を有する国・地域と定義されている。
本予算によれば、本措置は、2023年7月1日以後の支払いに適用されよう。

透明性への取り組み

本予算によれば、大規模グローバル企業である多国籍企業は、ATOによる開示のため、国別の特定税務情報および税務へのアプローチに関するステートメントを作成する必要があるとしている。本措置は、多国籍企業の本拠がオーストラリアにあるかどうかにかかわらず適用されよう。

ATO関連の支出

本予算では、2022-23年からの4年間にわたり、ATOの租税回避タスクフォースに対して11億4千万豪ドルの追加支出を行う。本追加支出は、ATOによる継続的な多国籍企業への取り組みを補完し、検出されたビジネスリスクに係る新たな優先分野の追求を支援するもので、2022-23年からの4年間で28億豪ドルの税収増を見込んでいる。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

2023年予算(マレーシア)

2022年10月7日、財務大臣より、2023年予算が公表された。主要な税制案には、以下が含まれる。

  • 個人の税率 - 以下の課税所得帯の税率改正(2023課税年度から適用)

▶ 50,001リンギットから70,000リンギット(13%から11%に引き下げ)
▶ 70,001リンギットから100,000リンギット(21%から19%に引き下げ)
▶ 250,001リンギットから400,000リンギット(24.5%から25%に引き上げ)

  • 中小企業(MSME)の税率 - 課税所得の最初の100,000リンギットに対する所得税率を17%から15%に引き下げ(2023課税年度から適用)
  • インダストリー4.0の加速償却・控除(100%ACA + 100%所得控除)の強化 – 自動化機器のACAの上限を10百万リンギットに引き上げ、インダストリー4.0要素を含む資産の購入を含むよう強化など(2023年1月1日から2027年12月31日までに受理された申請に適用)
  • 欠損金の繰越期間の延長 – 準備期間が長い産業(林業や水力発電事業など)の未使用事業欠損金は20年(従前は10年)繰越し
  • グローバルミニマム税 - グローバルミニマム実効税率(第2の柱)を導入。適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)を検討(香港、シンガポール、英国、カナダ、スイスでもQDMTTを検討中)(2024年導入予定)
  • 電子インボイスの段階的実装 - 2023 年から段階的に実装。システム開発と一部の納税者とのパイロットプロジェクトを予定(2023年から適用)

以上のほか、優遇税制の新設(二酸化炭素の回収・貯留(CCS)や電気自動車充電設備の製造関連など)や改正/延長もある。

出典:PwC Malaysia, TaXavvy
「月刊 国際税務」2022年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

2022年財政法案(アイルランド)

2022年10月20日、財務省は、9月27日に予算の一部として公表された措置(本誌2022年11月号参照)の法制化に係る2022年財政法案を公表した。改正は主に個人税と生活費にフォーカスしているが、本法案にはR&D税額控除の改正規定その他の特定の事業関係税措置が含まれている。本法案は、年内の署名を見込んでいる。

税額控除

本法案では、R&D税額控除を改正し、新しい国際的な定義に沿うようにし、同税額控除を第2の柱における適格還付可能税額控除の範囲に含めることを目的としている。以下が主な改正事項である。

  • 本新制度は、2022年1月1日以後開始会計期間に遡及して導入見込みである。移行規定の適用により、2022年1月1日以後、遅くとも2022年12月31日までに開始する会計期間について、法人は現行制度に基づく請求が可能である(実質1年の移行期間)。また、2022年1月1日前開始会計期間から繰り越されたR&D税額控除の分割払い(つまり、2回目、3回目の分割払い)について、2022年1月1日以後開始会計期間での請求を認めている(現行制度で繰り越された分割払いを2022年の確定申告で処理可)。
  • R&D税額控除の還付申請について、新たに3年間の定額払い制度が導入されよう。本新制度では、法人はR&D税額控除を現金で定型的に3回に分けて還付申請できる。また、各支払額の一部を法人の他の税債務と相殺可能である。
  • R&D税額控除の上限は適用されないことになろう。
  • 法人は、R&D税額控除のうち、少なくとも最初の25,000ユーロを初年度に支払うよう請求可能である。
  • 法人は、取引開始前の支出について、取引開始後3年間にわたり還付税額控除を申請できよう。

Knowledge Development Box(KDB)制度は、2023年1月1日以後開始会計期間から終了見込みとなっているが、本法案によれば、4年間延長されよう。KDBは、国際的な税環境の変化、特にOECDの第2の柱の合意の一部分である租税条約の特典否認ルール(STTR)の影響を受けることになる。本合意の実施に備えるため、KDBの実効税率は10%に引き上げられよう。本改正は、大臣による開始命令が必要となる。

その他の措置

  • 本法案では、特許権売却に係る課税関係法の技術的改正を規定している。本改正により、特許や出願中特許の完全売却は特許権の売却ではなく、33%のキャピタルゲイン税が課されることが確認された(特許権の売却は25%の法人税)。さらに、特許権のグループ内移転について、特許のグループ内移転同様の救済措置が適用されるよう改正が行われる。
  • 利子制限規定(ILR)について、税務当局が以前公表したガイダンスと本規定を整合させるため、様々な細かい技術的改正が行われた。これらの改正には、新旧混合負債に係る返済の取り扱いの明確化(先入先出法の適用)がある。その他の改正点として、ILR規定で制限された利子の繰り越しと、特定無形資産の提供に係る利子との関係がある(Section 291A(資本控除)関連)。
  • 本法案では、関連貨幣項目の定義に技術的改正を加え、事業法人において、取引債務者や取引銀行口座に関して生じる外国為替差損益は、事業所得の計算に含まれることを確認している。
  • 移転価格ガイドラインの定義が改正され、OECD移転価格ガイドライン2022年版を参照している。

以上のほか、昨年の財政法で導入された、デジタルプラットフォーム事業者に対するEUの新しい税透明性規定(DAC7)のアイルランド法への取り込みに係る改正や、アイルランド赴任者に係る所得税の軽減措置(SARP)の3年延長・年間所得下限の100,000ユーロへの引き上げなどがある。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

2023年予算案(ポルトガル)

2022年10月10日、2023年予算案が議会に提出された。これは、1月の選挙後6月に公表された2022 年予算に続くものである。政権政党が議会で過半数を占めており、税制措置案は制定されると見込まれるが、今後の政党間交渉や官民の関連機関・団体のヒアリングを経て、修正や新たな税制措置の追加の可能性がある。

法人税の改正 – 欠損金

欠損金の繰越は、無期限に認められよう(現在は5年(中小企業は12年))。本規定は、2023年1月1日以後開始課税年度の課税利得に対する税務上の欠損金の控除に適用されよう(2023年1月1日前の課税年度に査定され、控除期間が依然継続している税務上の欠損金にも適用)。税務上の欠損金の控除は、課税利得の65%(現在は70%)に減額されよう。

法人向け優遇税制および支援策

法人の資本化に係るインセンティブ

本予算では、法人の資本化を目的とした新しい税制優遇措置を提案している。適格法人は、適格資本の純増額の4.5%相当額を控除できる。本控除は、資本が増加する課税年度と、それに続く9課税期間に適用されよう。本控除は、各課税年度において、2百万ユーロまたは税務上のEBITDAの30%のいずれか高い額までとなろう。税務上のEBITDAの30%を超える部分は、5年間繰り越すことができる。法人設立や増資時の現金出資、資本への転換となる債務の現物出資、証券発行のプレミアムや資本増となる税務上の利得が適格資本の純増となる(現金/現物の資本減少分は控除)。この新たな税制上の優遇措置が承認された場合、既存の2税制優遇措置(一定の資本報酬/みなし利子控除(2022年12月31日まで引き続き適用)および中小企業向け留保・再投資利得控除(DLRR))は廃止されよう。

電気・ガス費用に係る特別支援

電気・天然ガスの消費に関連して発生/負担した費用・損失で、前課税年度を超える額(資金受領額を控除)について、2022年の法人税課税利得の計算上、それぞれの額の120%の控除が可能となろう。なお、電力・ガスの生産、輸送、流通、商業化、または精製/残留物から得られる石油製品その他の特許燃料の製造に関連する経済活動による売上が50%以上の納税者は除外される。
以上のほか、法人および個人の暗号資産関連の税制改正がある。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

予算 – 暫定ミニマム税、みなし利子控除(NID)一部廃止、ロイヤルティーに係る外国税額控除改正(ベルギー)

2022年10月11日、政府は連邦予算について合意に達した。主な合意内容は、進行中のエネルギー危機への対応、財政赤字の抑制、雇用の活性化などである。本予算には、税制、エネルギー、企業競争に関するいくつかの重要な措置が含まれている。合意された措置は、今後、法律として制定され、必要な議会手続きを経て、官報(Belgisch Staatsblad/Moniteur belge)に掲載され、2023年1月1日に発効見込みである。税制関連では、以下が含まれよう。

  • 暫定ミニマム税が制定されよう。OECD第2の柱のグローバルミニマム税の導入が1年遅れた(2023年1月1日ではなく2024年1月1日に発効予定)ことを受け、現行の「バスケット制度」における税金資産の利用(繰越欠損金の控除など)を70%から40%に引き下げる(最低基準額100万ユーロ超)暫定措置を導入する。本措置は、ベルギーが第2の柱モデルルールを導入するまで適用されることになろう。
  • 大法人向けみなし利子控除制度が廃止されよう。中小企業には、本制度が引き続き適用されよう。
  • ロイヤルティーに係る15%の一括外国税額控除について、実際に適用された外国源泉税に基づく控除に改正されよう。
  • 銀行税・保険税が(全額)税務上控除されなくなり、金融セクターで追加税負担となろう。
  • 著作権関連制度の対象範囲が縮小され、著作権が直接商業化される場合にのみ適用される可能性があろう。

以上のほか、エネルギー関連では、以下が含まれよう。

  • 2023年6月まで(欧州委員会の承認があれば延長)、エネルギーセクターの超過利益課税が導入されよう(2022年1月1日に遡及適用)。
  • ガス・電気に係る6%のVAT軽減税率が維持されよう。また、ガス・電気の消費税が改正見込みである。

出典:PwC, Tax Insights
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PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

2023年予算(ノルウェー)

2022年10月6日、ノルウェーの国家予算が公表された。
法人税関連では、以下の改正が含まれる。

75万クローネ超の給与所得に対する5%の追加雇用主負担金

雇用主は、給与およびその他の手当にかかる雇用主負担金を支払う義務がある。雇用主負担率は、雇用主の所在地によって異なる(税率0%~14.1%)。政府は、75万クローネ超の給与に対して5%の追加雇用主負担を提案している。国の中心地(ゾーン1)の雇用者は、75万クローネ超の賃金に対して19.1%(14.1+5)の雇用者負担金を支払わなければならない。本改正は、2023所得年度からの施行が提案されている。雇用者負担金を含めると、最高税率は2022年の53.9%から2023年には55.8%に上昇する(2023年に約77億クローネの歳入増見込み)。

クロスボーダーの組織再編における継続性要件の撤廃

財務省は、クロスボーダー組織再編における継続性要件の廃止を提案している。規定の簡素化で、クロスボーダー組織再編の実行・管理が容易になる。現在、クロスボーダーの合併、会社分割、株式交換について、一定要件の下で非課税の組織再編を規定しており、その中心的な要件は、その取引が国内および国外で税務上の継続性をもって行われることである。改正後は、クロスボーダー組織再編について、ノルウェーの参加者の税務手続きは、国内における税務ポジションの継続性原則、および出国税規定によって確保される。本改正は、2022年からの施行が提案されている。
以上のほか、石油セクター関連の暫定規定に基づく追加控除(uplift)率の12.4%への引き下げ(2023年1月1日以後の発生コストから)や、天然資源関連所得(陸上風力・水力発電)の課税強化(リソースレントタックスや消費税(0.70クローネ/kWh超での電力販売)などがある。
個人・給与税関連では、配当および株式譲渡益の税率引き上げ(2022年10月6日から。税率22%は変わらないが、調整係数1.60→1.72への引き上げにより実効税率は35.2%→37.84%(法人税率(22%)を含めた最高実効税率は49.5%→51.5%)などや、富裕税の増税(課税ベースおよび税率改正)、社会保険税率の改正などがある。付加価値税(VAT)関連では、電気自動車に対するVAT免税措置の改正(2023年1月から)や、電子ニュースサービスのVAT免税廃止(2023年1月1日から)などがある。
なお、国際企業グループ課税(OECD第1・第2の柱)について、2023年中に規定整備、2024年からの施行を目指している。
このほか、トン数税制の改正や、外国人・外国法人への大陸棚での活動に係る課税についても検討を進めている。

出典:PwC, Norway’s Tax blog
「月刊 国際税務」2022年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

IRS、無形資産の国外移転に関するガイダンスを公表(米国)

2022年9月23日、IRSは、内部文書(Advice Memorandum(AM)2022-003)を公表した。これによると、Section 367(d)の対象となる無形資産のSection 351(適格現物出資)による移転に関して、譲受外国法人が“金銭またはその他の財産”(“boot”)を交付する場合、Section 367条(d)のいわゆるみなしロイヤルティーの前払いはできるが、他の状況ではできないとの結論が出された。したがって、本AMによれば、譲受外国法人は、最初の移転より後にSection 367(d)みなしロイヤルティーの前払いを行うことはできないとの立場である。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

※発行元の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

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