{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.text}}
PwC税理士法人編
PwC税理士法人パートナー
浅川 和仁 監修
2026年6月24日、欧州委員会は、EUの直接税の枠組みを簡素化・合理化するための包括的な提案である「Tax Omnibus(税制オムニバス)」を公表した。本提案では、利子・ロイヤルティ指令(IRD)、合併指令(TMD)、親子会社指令(PSD)、租税回避防止指令(ATAD)、租税紛争解決メカニズム指令(DRM)、および超過源泉税の迅速かつ確実な救済(FASTER)指令の6つの既存指令を改正する。欧州委員会は、この改正の狙いを納税者のコンプライアンス費用の削減、陳腐化・重複したルールの排除、およびEU域内市場の競争力向上としている。この改正に伴う委員会の影響評価によれば、本提案によりコンプライアンス関連費用は年間約66億ユーロ削減し得るとし、そのうちIRD・PSDの全額免税措置だけで年間約53.4億ユーロの納税者負担軽減が見込まれているとしている。
IRDについては、「関連会社」の判定に係る現行の25%の最低保有要件が撤廃され、出資比率にかかわらず利子・ロイヤルティの支払いに対する源泉税免除が認められることとなる(資本参加基準を議決権基準に置き換えるという加盟国の選択肢も削除)。他方で、二重非課税を防ぐためのセーフガードが導入され、受領者で法人所得課税が行われない(またはゼロ税率の)第三国に所在し、源泉地で源泉税が課されていない場合には、源泉地国が源泉税を課すか損金算入を否認することが求められる。このセーフガードは、受領者が適格国内ミニマム課税(QDMTT)の対象である場合や第2の柱の適用対象グループに属する場合には適用されないが、最終親会社(UPE)が適格な「サイド・バイ・サイド制度」を有する国・地域(現時点では米国のみ)に所在する場合には依然として適用され得る。TMDについては、簡易合併や分社型分割(divisions by separation)を対象に含めるよう範囲が拡大され、EUモビリティ指令との整合性が図られる。また、クロスボーダーの組織変更(cross-border conversions)(登記上の本店移転等)に関する新たな章が導入される。PSDについては、おおむねIRDの変更を反映したものとなっており、「親会社」の判定に係る最低保有要件(10%)が撤廃され、出資比率にかかわらずEU域内の配当等が源泉税免除および資本参加免税の対象となる(法的形態を問わず年金機関にも適用拡大)。また、持株会社の利用を通じた富裕税・所得税の回避防止を目的とする国内の租税回避防止措置を明示的に維持している。さらに、投資家には利益の分配日から還付請求のための期間として少なくとも2年間が与えられ、還付は請求後原則として1年以内に行われる(期限徒過の場合は利息が付される)。DRMについては、複数の手続的改善策が導入される。「影響を受ける者」の定義が明確化・拡大されるほか、従来、関係する複数の加盟国の権限ある当局に対して申立てを「同時に」提出することを要件として求めていたが、その「同時」の意味(同日提出を要するのか一定の猶予を認めるのか)をめぐり各国で解釈が分かれていたことから、「最初の提出から30暦日以内」という明確な申立期間に置き換えられる。あわせて、申立ての不備を是正するための期間として納税者に30日が与えられる。これらは手続的な性質のものであり、本指令の適用範囲を第2の柱関連の紛争に拡大することは想定されていない。FASTER指令については、加盟国が迅速手続へのアクセスを拒否できる事由を定める第11条が改正され、IRDまたはPSDに基づく全額源泉税免除が請求されることのみを理由に、加盟国がFASTERの迅速手続(源泉地での軽減または迅速還付)へのアクセスを否定できないこととされる。
ATADの改正は本パッケージの中でも特に重要であり、利子制限ルール(ILR)、外国子会社合算税制(CFCルール)、一般租税回避防止規定(GAAR)、ハイブリッド・ミスマッチ・ルールに変更を加えるとともに、ATADの枠組みの中にEU全体での新たな研究開発(R&D)控除を導入するものである。第2の柱の導入以降、CFCルールをはじめとする一部のATAD規定が多国籍グループにとって義務の重複や二重課税を生じさせてきたとの認識のもと、ATADの改正案はこれらの重複の解消を目指している。ILRについては、EBITDAの30%という閾値が義務化され、加盟国はこれより低い閾値を適用することができなくなる(なお、オランダは、現在24.5%の閾値を適用している)。また、300万ユーロのデミニミス・セーフハーバーが義務化され(指令の発効から3年以内に義務化し、その後はインフレに応じて毎年自動的に金額を調整する)、関連企業からの借入ではなく借り手自身の活動資金に充てられる低リスクの第三者ローンは適用除外とされる。グループ・エスケープ・ルールや繰越制度も義務化され、EBITDAが大幅に(50%)低下した場合の景気循環に対応するセーフガードや、防衛関連の借入費用の一時的な除外ルールも追加される。CFCルールについては、第2の柱指令の適用対象となるEU法人を、軽課税子会社に係るCFCルールから除外する措置が導入される。ただし、この適用除外は、UPEが適格なサイド・バイ・サイド制度を有する国・地域に所在し、かつCFCがQDMTTの対象でない場合には適用されない。あわせて、中小企業をCFCルールから除外する新たな免除も導入され、所得帰属方式については「モデルB」(人為的な租税回避の取決め・取引に着目する取引アプローチ)を廃止し「モデルA」(受動的所得を対象とする事業体アプローチ)を唯一の方式とすることとされる。GAARについては、源泉税や第2の柱のトップアップ税を含む、法人に課され得るすべての直接税に一貫して適用されるよう範囲が拡大される。他方で、ハイブリッド・ミスマッチにおいて、輸入ハイブリッド・ミスマッチ・ルールは、過度に複雑であるとして全面的に廃止される(主要なハイブリッド・ミスマッチ・ルール(第9条(1)(二重控除)と(2)(控除・益金不算入))は引き続き有効)。新設されるEUのR&D控除は、ATADの枠組みの中に最低基準として即時費用化制度を導入するものである。R&Dに直接用いられる設備・機械その他の有形資産に係る適格な資本的支出について全額損金算入を認め、支出が生じた事業年度または以後4事業年度のいずれかにわたって控除を請求できる(なお、対象は有形資産への資本的支出に限られ、人件費や消耗品、無形資産は対象外である)。
Tax Omnibusと同時に、欧州委員会は、DAC1からDAC9までのすべてのDACを単一の法令に見直す提案も公表した。事業者にとって最も影響の大きい変更は、DAC6(クロスボーダー・アレンジメントの報告)、DAC7(デジタルプラットフォームによる所得の報告)、DAC4(国別報告)とDAC9(トップアップ税情報申告の中央申告)に係る通知の相互関係、そしてDAC6と第2の柱の関係に関わるものである。DAC6については、「クロスボーダー・アレンジメント」の定義の見直しにあたり、第2の柱の適用対象となる多国籍グループに対する限定的なカーブアウトが導入される。また、カテゴリーAの基準(hallmark)はその一般的な性質を理由にすべて削除される一方、新たにD2「実体性」基準が導入される(その基準はまだ定義されていない)。報告対象となるアレンジメントの定義は、実施が可能なものに限定する形で簡素化され、報告期限は最初の実施段階以後30日以内から90日以内へと延長される。DAC7については、物品販売に係る現行の30取引の上限が撤廃され、金額基準が2,000ユーロから3,000ユーロへと引き上げられる。DAC4とDAC9については、重複する通知を削減するため、統一様式を用いた申告構成事業体または報告事業体による単一の通知が導入される。さらに、納税者番号(TIN)の検証ツールが新たに開発されており、年間最大7,000万ユーロの節約につながる可能性がある。
これらの提案はいずれも、EU理事会における全会一致を必要とし、立法過程において交渉・修正の対象となる。加盟国は2028年12月31日までに国内法へ転換し、原則として2029年1月1日から適用される予定である(IRD・PSDの適用範囲拡大や自己評価規定等の重要な変更は2037年1月1日からという大幅に繰り延べられた適用となる予定である)。公開討議における初期の反応からは、難しい交渉が予想される。オランダを含む複数の加盟国は財政上の圧力に直面しており、ドイツはATADと第2の柱により決着済みと考えられていた租税回避の議論を簡素化によって再燃させかねないとの構造的な懸念を提起している。7月から理事会議長国となるアイルランドは、オムニバスについては作業を前進させることを目指す一方、DAC見直しとは異なり年内の合意を目標とはしておらず、DAC見直しを優先して2026年末までに合意する見込みである。
Source:PwC, Global Tax Policy Alert
2026年6月1日、OECDは、移転価格ガイドライン第7章(グループ内役務提供)の改訂に関する公開協議を開始した。意見提出の期限は7月22日、公開協議は11月に予定されている。本作業の目的は、第7章を第1章から第3章までと整合させ、基礎となる原則を変更することなく実務的な事例を追加することにあるとされている。もっとも、実際には、詳細な「正確な描写(accurate delineation)」分析、拡張された便益テスト、株主活動とスチュワードシップ活動のより明確な区分、役務と無形資産の境界に関する詳細な指針、コストプラス法を超えた方法選択、パススルー・コストの取扱い、役務に特化した文書化の期待、そして21の新たな設例が記載されており、実質的な大幅な書き換えとなっている。なお、低付加価値役務(LVAS)の取扱いは変更されていない。また、本ドラフトはまだコンセンサスに基づく指針ではない点に留意が必要である。提案された第7章は、便益テストを直ちに適用するのではなく、まず当事者間の商業上・財務上の関係と経済的に関連する特徴を分析することを求める「正確な描写」の枠組みを中心に再構築されている。これは、グループ内役務が一般に一方的アプローチで価格設定できる定型的取引であり、役務提供者または受領者のいずれかを当然に検証対象当事者とすべきである、という暗黙の前提をOECDが明確に否定するものである。便益テストについては、いくつかの重要な明確化が図られている。(1)便益は保証される必要はなく、役務提供開始時点で合理的に期待されれば足りること、(2)複数年のデータが便益の合理的な期待の評価に役立ち得ること、(3)便益テストと独立企業間の対価は別個の分析であり、価格が独立企業間価格でないことのみを理由に役務が否認されるべきではないこと、(4)テストは各受領事業体のレベルで適用されるべきこと、が明確化されている。便益は、収益増加の見込み、費用の削減、製品・業務プロセスの改善等、さまざまな形で生じ得るとされ、戦略的助言や研修、事業変革のように価値が時間の経過とともに顕在化する役務についても便益が認められ得る。また、本ドラフトは「株主活動」を「スチュワードシップ活動」と区別し、後者は便益を生じさせるものとされ得るとした上で、上級経営者の活動が自動的に株主活動となるわけではないことを確認している。価格設定の指針はコストプラス法を超えて拡張され、コストベースの方法が当然に最適とされるわけではなく、CUP法(独立価格比準法)に関する新たな指針が示されるとともに、高度に統合された役務や独自の価値を有する役務には利益分割法が適し得るとされている。パススルー・コストについては、純粋な支払代理機能にはマークアップを付さず、提供者が価値を付加する場合にはマークアップが認められる。なお、株式報酬の取扱いは未解決のままとされている(注)。さらに、役務に特化した新たな文書化の指針が導入されているが、これは強制的なチェックリストではなく、重要性に応じた条件付きのものとされている。これらの改訂は、グループ内役務の価格設定と文書化の方法を近代化するものであるが、紛争の根底にある概念的な枠組みを見直すものではなく、便益テストにおいて、立証責任は依然として納税者にある。プリンシパルや地域統括会社(HQ/Regional-HQ)、シェアードサービスセンターを運営する多国籍企業にとっては、実体重視(substance-over-form)の分析による厳格な描写、便益テストに関するさらなる立証の要求、コストプラス法の原則的否定、そして株主・スチュワードシップ活動の境界の明確化が、特に実務上の影響を持つことになる。多国籍企業は、現行の取決めを本ドラフトに照らして検証し、役務コストの配分方針を見直すことが求められよう。
(注)2026年6月4日、シンガポール税務当局(IRAS)は移転価格ガイドライン第9版を公表し、グループ内役務のコストプラス取決めにおいて、株式報酬(SBC)は、それが(a)実際に発生したもの、(b)未請求のもの、(c)請求されていないが会計基準に従い計上された(notional)もののいずれかを問わず、独立企業間マークアップの適用上シンガポール事業体のコストベースに含めなければならないことを明確化した。一方で、賦課年度2026年(所得年度2025年)以降、上述(b)および(c)のSBCを役務所得の計算から除外することを認める特例措置も導入されている。
Source:PwC, Global Tax Policy Alert / International Tax News
2026年6月4日、コロラド州は、原則として全世界ユニタリー合算申告(worldwide unitary combined reporting)を採用し、10年間の「ウォーターズ・エッジ選択(water's-edge election)」を認める法律を制定した(注1)。本法律では、C法人の資産・給与の80%以上が米国外の所在地に配賦される場合に当該法人をユニタリー合算申告から除外する「80/20ルール」も廃止する。これらの変更は、2027年1月1日以後に開始する課税年度から適用される。これは、従来の「6項目中3項目」のユニタリー判定基準(形式基準)を憲法上の原則の表明(実質基準)に置き換えた2024年の法律(2026年から適用)に続く、コロラド州のユニタリー合算申告制度における重要な転換点となる。既存の法律のもとでは、設立地や本拠地(domicile)を問わず、ユニタリー事業を構成するC法人の関連グループのすべての構成員がユニタリー合算グループとして申告することが求められるが、この例外として80/20ルールが設けられていた。このルールが廃止されるため、2027年から、米国で設立されておらず連邦連結申告にも含まれない法人については、単体ベースの損益計算書を米国会計基準(US GAAP)に適合するよう調整した上で「連邦課税所得」を算定することとなる(その計算には源泉地を問わずすべての所得が含まれ、米国源泉所得やECI(米国事業関連所得)に限定されない)。なお、ユニタリー合算グループの構成員の純所得に、当該構成員が米国株主である他の構成員に係るサブパートF所得またはCFCテスト純所得(NCTI)が含まれる場合には、これらは全世界ユニタリー合算申告から除外される。ウォーターズ・エッジ選択は、新設されるC.R.S. 第39-22-303条(8.5)に基づき、2027年1月1日以後に開始する課税年度から行うことができる。この選択を行った場合においても、ユニタリー合算グループは、米国で設立された国内法人、資産・給与の20%以上が米国の州・コロンビア特別区に配賦される「逆80/20」法人、DISC・輸出貿易法人、および租税回避を目的として外国の法域で設立された構成員について、その純所得と按分要素の全額が考慮される。(タックスヘイブン)リストに掲載された法域での設立は租税回避目的を示すという反証可能な推定が働くが、納税者はIRC第7701条(o)の経済的実体ドクトリンを満たす理由を証明することでこの推定を覆すことができる。さらに、米国との包括的租税条約を有しない国の居住者である構成員が、無形資産または役務関連活動から純所得の20%超を稼得し、それがユニタリー合算グループ構成員の按分対象所得から控除される場合等には、関連する所得と按分要素も考慮される。この選択は、期限内に提出される当初申告書で行う必要があり、選択を行った年とそれに続く9年の合計10年間の拘束力を持つ。10年の期間満了後の翌年には、納税者が書面による撤回を行わない限り、さらに10年間自動的に更新されたものとみなされる。また、グループは、州税法・政策の予見不能な変更による重大な困難を理由とする合理的事由を示すことで、満了前に選択の撤回または撤回した選択の復活を申し立てることができる。あわせて、本法律では、2027年1月1日以後に開始する課税年度から、タックスヘイブンのリストからリヒテンシュタインを除外する(注2)。
(注1)カリフォルニア州では、AB-1790(2025–2026年会期、審議中)において2028年からウォーターズ・エッジ選択を全廃して義務的全世界合算へ移行することを提案している(経過措置あり)。
(注2)コロラド州は、2025年特別会期立法(H.B. 25B-1002)により、香港・アイルランド・リヒテンシュタイン・オランダ・シンガポールをタックスヘイブンとして追加していた(2026年から適用)なお、FDDEI(Foreign-Derived Deduction-Eligible Income)控除額の連邦課税所得への加算も求めている)。
Source:PwC, Tax Insights
CBAMは現在、鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、水素、電力等、EUに輸入される特定の製品に適用されている。欧州委員会は、その対象範囲を2028年1月1日から、鉄鋼・アルミニウムを多く含む180の川下製品(downstream products)にまで拡大する提案を公表した。2026年初頭以降、CBAMは確定フェーズで運用されており、対象となる原材料および(半)完成品の輸入者は、内包される温室効果ガス排出量を報告し、CBAM証書を提出することが求められている。今回の拡大は、バリューチェーンに沿った炭素リーケージと回避を防止するため、鉄鋼またはアルミニウムを高い割合で含む製造品を対象に加えるものである。追加される180の川下製品には、平均して約79%の鉄鋼・アルミニウム含有率を持つ、加工金属、機械・産業機器、車両および部品(ギアボックスやエンジン等)、家電製品(洗濯機や冷蔵庫等)、金属建設機器等が含まれる。これらの製品の輸入者は、拡大が施行されればCBAM証書の要件の対象となる。CBAM規則を改正するこの提案は通常立法手続に従うため、EU理事会と欧州議会の双方による採択が必要である。理事会は2026年6月12日に本件に合意しており、議会での採択の後、交渉を経て正式に採択される見込みである。提案が正式に採択された後、対象範囲の拡大は2028年1月1日から効力を生じる。企業は、該当する場合にはCBAM証書の購入等の準備を始めるとともに、2028年以降に50トンを超えるCBAM対象物品の輸入が見込まれる場合には、遅延を避け確実に遵守できるよう、早期にCBAM申告者の登録を申請することが重要である。
Source:PwC, Netherlands
その他、海外税務ニュースを含む当法人発行ニュースにつきましては、https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/tax-news.htmlをご参照ください。
本ニュースは、各国の税制改正の動向をお知らせする目的で、各国のPwCメンバーファームが作成する速報ニュースや各国省庁等のホームページ掲載の情報等を翻訳してお伝えしています。税制改正案の段階の情報が多いため、最終的な法制度につきましては、専門家にご確認くださるようお願いいたします。
{{item.text}}
{{item.text}}