【交遊抄】挑戦の専門家 井野貴章

2023-12-26

日本経済新聞2023年12月20日寄稿
PwC Japan有限責任監査法人
代表執行役  井野貴章

日本には変革が必要で失敗を恐れぬ挑戦と覚悟が重要という。ではどうやって。教えてくれたのが車椅子バスケットボール男子代表を率い、東京パラリンピックで銀メダルに導いた及川晋平さんだ。

出会いは2020年3月。業界全体にコロナ禍でのリモート監査への不安が漂っていたころだ。良く生きることについて見つめなおす職員も多かった。私は強い組織を作りたくて、及川さんと会った。向上心の強い彼の金言に感銘を受け、以降、交遊を深めてきた。今では「ぺーさん」と親しみを込めて呼んでいる。

16歳で骨肉腫と闘い右脚を義足に変えた彼は「人には可能性が絶対にある」と言う。だから「その人の可能性を見つけられるまで対話する」。その結果、彼のチームは身を削る努力で技術を磨き、エースと若手が切磋琢磨(せっさたくま)し、歴史に残る金字塔を打ち立てた。彼らは自由にならないことに挑戦する専門家だ。弱さがあるのは挑戦しない自分の方だと気づかされた。

ペーさんの挑戦は続く。バスケ振興のため「聖地をつくりたい」。そして全ての個が輝く「インクルーシブな世界を実現したい」と熱く語る。私も日本企業の変革に貢献したい。人の心を奮い立たせる彼とともに私も挑み続けようと思う。

(いの・たかあき=PwC Japan有限責任監査法人代表執行役)

※本稿は、2023年12月20日に日本経済新聞に掲載された記事を転載したものです。
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※法人名、役職などは掲載当時のものです。

執筆者

井野 貴章

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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