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世界的な脱炭素化の流れの中で、自動車産業は重要な変革期を迎えている。EUは電池の設計・性能・安全性からリサイクルまでを包括的に規定する電池規則(Battery Regulation)を制定し、その中でバッテリーのカーボンフットプリント(CFP)の算定・開示を義務付けた。また、EU域外からの輸入品を対象とする炭素国境調整措置(CBAM)が導入され、鉄鋼やアルミなどの素材を対象に炭素排出量の報告が義務化されており、自動車業界にも間接的な影響が広がっている。さらに、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)や日本のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)によって、環境・社会情報の開示要請は一層強化されている。
こうした規制強化に伴い、自動車メーカーはサプライヤーにプロダクトカーボンフットプリント(PCF)の算定と情報共有を求めている。しかし、多層構造で複雑なサプライチェーン全体の環境負荷を正確に把握することは容易ではない。個別対応には限界があり、企業間でのデータ連携を可能にする「産業アーキテクチャ」の構築が不可欠だ。
その鍵となるのが、Catena-XやOuranosといったデータスペースである。Catena-Xは欧州発の自動車業界向けデータスペースで、素材調達から製造、流通まで環境データを共通ルールのもとで共有できる仕組みを提供する。一方、Ouranosは日本の自動車業界でPCF算定やデータ連携の仕組みを検討中であり、今後の基盤整備に向けた重要な動きとして注目されている。データスペースを活用することで、各社は自社データの主権や機密性を確保しながら必要な情報のみを安全に連携でき、サプライヤーへの個別調査や独自フォーマット対応といった非効率な作業を削減しつつ、サプライチェーン全体でのPCF算定精度向上やトレーサビリティ強化を図ることができる。さらに、こうしたデータスペースは需給変動や調達リスクの兆候をいち早く把握するうえでも有効であり、半導体不足のようなサプライチェーン寸断への備えにもつながる。
今後は日本の自動車業界が、国際的な連携やデータスペース活用を踏まえ、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル実現と高度化する情報開示要請に的確に対応していくことが求められる。筆者自身も、自動車業界やデータスペースの動向把握から、PCF算定基準の策定支援、業務フロー整備、データスペースとの接続支援に至るまで、一貫で企業のGHG排出量の可視化・管理高度化を支援することで低炭素な製品・サプライチェーンの実現と競争力向上に貢献していく必要があると感じている。
※本稿は、日刊自動車新聞2026年1月15日付掲載のコラムを転載したものです。
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