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2022-08-24
従来の内燃機関車における二酸化炭素(CO2)排出量削減の規制分野は、製造から利用・走行、回収・リサイクルというサプライチェーンの中で、主に利用・走行時の排出量規制が中心だった。一方、自動車のBEV(バッテリー式電気自動車)化が進むと、利用・走行におけるCO2排出量はゼロとなることから、サプライチェーン全体のCO2排出量で評価することが重要となり、削減の視点は利用・走行からLife Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント=LCA)へと変化する。本稿では、LCA規制の中でも運用面で重要となる「製品LCA」に着目し、制度化の動向やその背景を考察する。
LCAは、企業または事業所全体を評価する「組織LCA」と、車種ごとに製品を評価する「製品LCA」に大別される。前者は、組織単位のサプライチェーン全体の環境評価で、企業価値・株価向上などの観点で一部企業では導入が進んでいる。後者は、同じくサプライチェーン全体が対象だが、製品個々の環境性能の評価を示す。企業単位のCO2排出量は製品ポートフォリオや生産台数などに依存するため、組織単位での評価のみでは環境性能を単純に比較できず、上限値などの規制もかけにくい。一方、製品LCAの視点を織り込むことで、製品単位で何を改善すべきか、一歩踏み込んだ議論が可能になるため、LCAの着眼点が組織LCAから製品LCAへシフトしつつある。
LCAの取り組みで先行する欧州では、製品LCA視点での規制化の動きが活発になっており、BEVの主要部品であるバッテリーを規制する「電池規則」導入検討が進められている。本規則案では、まずカーボンフットプリントの記載義務が規定され、将来的にはライフサイクル全体での上限値の導入が予定されている。また、バッテリーのリサイクル率や製造時のリサイクル材料の含有義務規定も検討されているが、ここには欧州地域としての調達戦略が背景にあると考察される。バッテリー資源はアジアに多く存在するため、資源に乏しい欧州が、大量に電池資源をEU域内に流入させ、留めることで資源競争に勝ち抜くという戦略的な狙いが読み取れる。
製品LCA規制に先駆けてOEMは製品LCAの自主開示を進めている。標準原単位を用いたCO2排出量計算が主流だが、より実態に近いLCA計算を実施するためには、サプライヤーを含めた個別企業のCO2排出量を考慮する必要があり、分散型のデータ流通基盤を活用する動きが着目される。既に欧州では、独自動車OEMによって安全な企業間データ交換を目指すコンソーシアムが設立されており、カーボンニュートラルをトリガーにデータ流通基盤を用いた新しいデータ活用が進められようとしている。
今後、カーボンニュートラル規制によりデータのオープン化が加速すると、データ流通プラットフォーム(PF)がビジネスモデルや収益構造を変革させる可能性がある。また、CO2排出量やバッテリー情報などを記録・共有するPFができれば、規制対応にとどまらず新しいビジネス価値を生みだすことも予想される。日本の自動車産業は、欧州を基点とした大きな動きに対して、グローバルでの電池サーキュラーエコノミーシステムやサプライチェーン構築に積極的に関与し、新しいデータ利活用の可能性やビジネス機会を模索していくことが重要となるのではないだろうか。
※本稿は、日刊自動車新聞2022年8月22日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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