租税条約

 

読み方:そぜいじょうやく

定義

租税条約とは、課税関係の安定(法的安定性の確保)、二重課税の除去、脱税および租税回避などへの対応を通じ、二国間の健全な投資・経済交流の促進に資するものとして、二国間で締結される文書による合意です。2023年10月1日現在、日本は72の租税条約を締結し、79カ国・地域との間で適用があります(注1)。租税条約には、国際標準となるOECDモデル租税条約(注2)があり、OECD加盟国を中心に、租税条約を締結する際のモデルとなっています。OECD加盟国である日本も、おおむねこれに沿った規定を採用しているとされています。ただし、日本が締結した租税条約の内容は、相手国によってさまざまです。

OECDモデル租税条約の主な内容は、以下のとおりです。

1.課税関係の安定(法的安定性の確保)・二重課税の除去

(1)源泉地国で課税できる範囲の確定

  • 事業利得に対しては、源泉地国に所在する恒久的施設(PE)の活動により得た利得のみに課税

  • 投資所得(配当、利子、使用料)に対しては、源泉地国での税率の上限(限度税率)を設定(免税を含む)

(2)  居住地国における二重課税の除去

  • 国外所得免除方式または外国税額控除方式

  • 税務当局間の相互協議(仲裁を含む)による条約に適合しない課税の解消

2.脱税および租税回避などへの対応

(1)税務当局間の納税者情報(銀行口座情報を含む)の交換

(2)滞納租税に関する徴収の相互支援

租税条約は、一部の規定を除き、一般に、所得に対する租税を対象としています(注3)。日本が締結した租税条約の場合、日本側は、所得税および法人税が対象とされ、相手国によって地方税(住民税)も対象とされている場合があります。例えば米国との租税条約では、日本の住民税や米国の州税などは対象とされていません。

租税条約の規定内容が、所得税法や法人税法などの国内法に規定する取り扱いと異なる場合には、租税条約の規定が優先して適用され、所得税法や法人税法などに規定される取り扱いが修正されることがあります。例えば、日本で生じた所得(国内源泉所得)に対する所得税の源泉徴収税率について、租税条約に規定する限度税率または免税が適用される場合には、一定の届け出が必要となります。

近年、日本が締結した租税条約および一部改正された租税条約では、OECDによるBEPSプロジェクトの最終報告書で勧告された租税条約の濫用防止などに関する規定(注4)が盛り込まれているものが増えています。

また、このような規定が、BEPS防止措置実施条約によって、既存の租税条約の規定に代わって、または加えて適用されている租税条約もあります。

(注1)旧ソ連および旧チェコスロバキアそれぞれとの間で締結された租税条約が複数の国に承継されていることから、租税条約の数と、適用される国・地域の数は一致しません。また、租税条約が適用される国・地域のほか、台湾については、実務レベルでの交流関係を維持するための日本と台湾の民間機関の間で作成された取り決めおよびその内容を日本国内で実施するための法令によって、全体として租税条約に相当する枠組みが構築されています。

(注2)OECDモデル租税条約のほか、発展途上国と先進国との間の租税条約のモデルとして資本輸入国(発展途上国)の税収確保を重視する国連モデル条約もあります。

(注3)日本と米国との間では、所得に対する租税に関する租税条約のほかに、遺産、相続および贈与に対する租税に関する二重課税を回避などするための条約が締結されています。

(注4)BEPSプロジェクトにおける次の行動計画において、租税条約に関するBEPS防止措置が勧告されています。なお、「BEPS」とは、Base Erosion and Profit Shiftingの略称であり、「税源浸食および利益移転」と和訳されています。

  • 行動計画2:ハイブリッド・ミスマッチ取極めの効果の無効化

  • 行動計画6:租税条約の濫用防止

  • 行動計画7:PE認定の人為的回避の防止

  • 行動計画14:相互協議の効果的実施

  • 行動計画15:多数国間協定の策定

関連用語

BEPS防止措置実施条約

本用語解説は2023年10月12日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。また、本用語解説は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。