過大支払利子税制

 

読み方:かだいしはらいりしぜいせい

定義

過大支払利子税制とは、法人の各事業年度の対象純支払利子等の額(日本の課税対象所得に含まれる支払利子等は除かれます)が調整所得金額の20%を超える場合には、その超える部分の金額については、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金不算入とし、翌事業年度以後7年間繰り越して一定の限度額まで損金算入を認めるというものです。

支払利子を損金に算入することにより税負担を圧縮する租税回避が可能となるため、主要先進国では支払利子の損金算入制限措置を強化する傾向にあります。さらに、主要先進国では、租税条約において利子の源泉地国免税制度の導入が進められていますが、わが国の租税条約の改正でも、国際的な投資交流の促進の観点から、源泉地国免税制度への進展が考えられます。しかしながら、利子の源泉地国免税制度のもとでは、過大な支払利子により税負担を圧縮する租税回避行為による税源浸食(Base Erosion)が一層懸念されることになります。

関連者への利子の支払いを通じた租税回避行為を封ずる措置として、①過大な利率の制限措置(移転価格税制)、②資本に対して過大な負債の利子の損金算入制限措置(過少資本税制)、③所得金額に比して過大な支払利子の損金算入制限措置、等の手法が考えられますが、過大支払利子税制は、③の、所得金額に比して過大な支払利子の損金算入を制限する措置です。

以下のいずれかに該当する場合は、本制度の適用はありません(適用免除基準)。

① その事業年度における対象純支払利子等の額が2,000万円以下であること

② 内国法人および特定支配関係がある他の内国法人の対象純支払利子等の額の合計額から対象純受取利子等の額の合計額を控除した残額が、所得の金額の20%以下であること

本制度は、法人の2013年4月1日以後に開始する各事業年度から適用されています。2019年度税制改正においては、第三者への支払利子も本制度の対象とする、調整所得金額の計算上国内外の受取配当等の益金不算入額を足し戻さない、損金不算入額を調整所得金額の20%(従前50%)に引き下げる、上述の適用免除基準について、①関連者純支払利子等の額1,000万円以下→対象純支払利子等の額2,000万円以下にする、②新たに企業グループ単位の適用免除基準を設ける、などの改正が行われています。

また、2022年度税制改正により、(1)恒久的施設を有する外国法人に係る恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得、および(2)恒久的施設を有しない外国法人に係る国内源泉所得、についても本税制を適用することとされました。

法人のその事業年度に係る支払利子等について、本制度と過少資本税制(外国法人の場合は「恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入」制度)の双方が適用となる場合には、利子等の損金不算入額のうちいずれか大きい金額に係る制度が適用されます。

本用語解説は2022年6月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。また、本用語解説は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。