所得合算ルール(IIR)

読み方:しょとくがっさんるーる(あいあいあーる)

定義

所得合算ルール(Income Inclusion Rule:IIR)とは、多国籍企業グループのうち、年間総収入金額 7 億5,000万ユーロ以上である企業グループについて、その子会社等の所在する国・地域ごとに算定される国別実効税率が最低税率(15%)を下回る場合に、原則として最終親会社の所在地国において、その子会社等の税負担が最低税率相当に至るまで課税するというルールです。

日本においては、2023(令和5)年度税制改正において、グローバルミニマム課税のルールのうち、IIRに係る法制として「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(法人税法第二編第二章)」が導入され、2024年4月1日以降に開始する対象会計年度(最終親会社の連結財務諸表に係る会計期間)から適用されています。諸外国においても、例えば欧州では2024年1月1日以後に開始する対象会計年度よりIIRを適用する国があるなど、その後も順次IIRを導入する国・地域が増えています。

IIRは、導入する際にはOECDのモデルルールやコメンタリー等により示されている世界共通のルールに従い法令化することとされており、OECDが適格と認めたIIRを導入する国は、OECDのウェブサイトでも公開されています(Central Record of Legislation with Transitional Qualified Status https://www.oecd.org/en/topics/sub-issues/global-minimum-tax/central-record-of-legislation-with-transitional-qualified-status.html)。

IIRは、最終親会社が作成する連結財務諸表において連結子会社となる法人(構成会社等)および、一定の要件を満たす持分法適用会社(共同支配会社等)を対象として計算を行うことになります。

IIRの基本的な計算プロセスは以下のとおりです。各計算プロセスについて、詳細な計算ルールが定められています。

  1. 構成会社等ごとにGloBE (Global Anti-Base Erosion)所得および調整後対象租税額を算定します。
  2. 構成会社等の所在地国別に集計し、国別実効税率(GloBE所得の合計額を分母、調整後対象租税額の合計額を分子として得られる割合)を算定します。
  3. 国別実効税率が基準税率(15%)を下回る国・地域について、その差分の割合(トップアップ税率)を算定します。
  4. その国・地域ごとに、GloBE所得の合計額から一定の金額(実質ベースの所得除外)を控除し、トップアップ税率を乗じた後、構成会社等ごとのトップアップ税額を算定します。
  5. 最終親会社(または一定の場合には中間親会社)が、各構成会社等に対して有する持分の割合(帰属割合)を、その構成会社等のトップアップ税額に乗じて、最終親会社に帰属するトップアップ税額を算定します。

参考)

本用語解説は2025年10月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。また、本用語解説は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。