地域イノベーター対談

地域中小・スタートアップ企業の成長に向けた人材活用の鍵

  • 2026-01-23

「地域から1,000億円規模の企業を生み出す」オニオン新聞社の挑戦

千葉市を拠点に地域活性化・デジタルマーケティング・D2C(Direct to Consumer)支援を展開する株式会社オニオン新聞社は、企業の新規事業開発を伴走支援し、Web制作や広告運用、ブランド構築などのソリューションをワンストップで提供。地域社会の持続的成長に貢献する「グロースベストパートナー」として、地域創生のモデルづくりに挑戦しています。今回は、代表取締役社長の山本寛氏に企業への伴走支援を通じた地域企業の未来について伺いました。

なぜ、いま「副業人材*」に注目すべきなのか―副業人材獲得のリアルな声

*本対談における副業人材の定義:専門性が求められる課題領域に対し、高度なスキルを持ちながら就業頻度を抑えて関与する人材を指す

山谷:山本さんはこれまで千葉県を中心に数多くのスタートアップや中小企業を支援してきました。一方で、ご自身でも新規事業として地産商品の海外展開に挑戦し、複数国で販路開拓を進められています。中小企業における新規事業成功のポイントについてお聞かせください。

山本:ポイントの1つは、優秀な人材の獲得にありました。当社では当時、地産商品を海外に展開した経験がなかったので、自分たちで調査を重ね、手探りで進めていました。同時にさまざまな課題に対応できるスキルセットを持った人材を探していましたが、なかなか見つからずにいたのです。そんな時に副業人材の活用に取り組んだところ、短期間で課題解決の糸口を見いだすことができました。

山谷:新規事業の立ち上げフェーズでは必要なスキルセットが曖昧なことから、正社員雇用で体制を固めることには一定のリスクが生じます。そのため、柔軟な選択肢を持つことが重要だと感じます。副業人材の活用に至った考え方について、地域企業の観点ではいかがですか。

山本:優秀な人材をスタートアップ・中小企業が正社員として雇用するのは難易度が高いと感じました。感度の高い人材は東京の企業に集中する傾向があり、地域の中小企業・スタートアップ企業が獲得するチャンスは限られています。そこで、大企業に勤める優秀な人材を副業形態で獲得することを考えました。特に、新規事業はフェーズごとに必要な専門性が目まぐるしく変わるため、その時々の課題に合わせて最適なプロフェッショナルを柔軟に活用できる副業という形が、結果的に事業のスピードを加速させてくれるのではないかと考えました。

成果を最大化する副業人材戦略―プロ集団を成果に導く2つのマネジメント術

山谷:複数のプロフェッショナル人材を「課題に応じて」活用することで、コストを抑えつつ短期集中で成果を出されたのですね。一方で、複数の高度人材が関わるとなると、情報共有の不足やコミュニケーションロス、既存社員との連携など、マネジメント面での難しさも生じるかと思います。チームとして機能させるために、何か工夫した点はありますか?

山本:そこが一番の肝でした。工夫した点は主に2つあります。1つ目は、「役割とゴールの徹底的な明確化」です。各人材に「この課題を、この期間で、ここまで解決してほしい」というミッションを具体的に提示し、期待値のズレが起きないようにしました。2つ目は、「社内へのナレッジ移転の仕組み化」です。副業人材のスキルはあくまで外部のものですから、プロジェクトには必ず当社の社員が関わるようにし、専門家からノウハウを吸収して社内に蓄積する体制を構築しました。彼らを単なる業務委託先ではなく、「コーチ」と位置付けることで、既存社員のスキルアップにもつながり、組織全体の成長を促すことができたと感じています。

田中:「役割の明確化」で副業人材を中心に短期的な成果を出しつつ、「ナレッジ移転」を組み込むことで組織全体の成長を促すという点は、まさに外部人材活用の成功の秘訣だと言えますね。

企業の成長を、地域の力へ。持続可能な地域創生への提言

2025年3月撮影

山谷:ここまで、地域企業の人材獲得・活用における考え方を伺いました。ここからは、地域企業が人材獲得・活用を通じてプロジェクトを推進した先の世界観についてお聞きしたいと思います。

企業の成長が地域を潤し、豊かになった地域がまた企業の成長を支える。そうした「成長の好循環」こそが、持続可能な地域創生の鍵だと考えます。地域企業の成長が地域活性に還元される上で重要なことがありましたら教えてください。

山本:地域から都市圏やグローバルに出ていくことも重要ですが、地域にいる意味や意義を明確にすることが重要と考えています。なぜこの地域で事業を行うのか、そのビジョンを語ることのできる企業こそが多くの共感を呼び、応援される企業となるからです。このように地域企業が成長していくことで、地域貢献にもつながるのではないかと考えます。オニオン新聞社はこのような考えの下、地域企業のグロース支援を行い、地域から1,000億円規模の企業を生み出すことを目指しています。

山谷:企業の成長が地域活性にもつながるような状態をつくっていくためには、地域企業を取り巻く多くのステークホルダーへの呼びかけも必要だと感じます。その一例として、国や地域自治体に期待することがあれば教えてください。

山本:人材を獲得する企業側だけでなく、働く側への支援も必要です。例えばですが、国や自治体の補助金制度が適切な形で浸透すれば、副業人材の獲得も加速すると思います。都心と地域の賃金格差はなかなか埋まりづらいですが、地域で働くインセンティブが一層感じられる仕組みを作るといったような、国や自治体が地域企業と人材の双方を支援する仕組みを整えることで、より活発な交流が生まれると考えます。

企業側は「稼ぎながら地域貢献したい」という動機を人材側に訴求できるようになりますし、国や自治体が人材側にも支援の幅を広げていくことで、高度人材の地域企業への関与も増えてくるのではないでしょうか。

山谷:まずは、「地域企業の成長に携わること」の魅力を世の中に浸透させていき、おのおのの立場でできることに取り組んでいきたいですね。

最後に、地域の中小企業・スタートアップ企業、ならびに地域創生に関わる方々に向けて、メッセージをお願いします。

山本:地域企業には、都市部の優秀な人材の獲得や受け入れに積極的に取り組んでほしいです。

事業の立案フェーズにおいては、創業者の思いやアイデアが発端となることもあるかと思います。しかし、企業が成長したフェーズでは、課題に対して専門的な知見や経験を持つ、各領域のプロフェッショナル人材の力が必要不可欠です。

国や自治体、その他経営支援機関には、地域企業の人材獲得が加速するような制度・仕組みの検討をぜひお願いしたいです。そして私たち自身も、地域から日本、ひいては世界を驚かせるような成功事例を一つでも多く創り出していきたいです。

田中:企業、人材、そして支援機関が一体となって成功事例を創り出す、その熱意の連鎖こそが地域創生の原動力なのだと改めて感じました。本日は大変示唆に富むお話をありがとうございました。「地域企業の成長が加速し、地域が活性化される」、そんな社会の実装に向けて私たちも可能性を模索していきたいと思います。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

主要メンバー

田中 大介

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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川端 勇備

マネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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山谷 理絵

シニアアソシエイト, PwC Japan有限責任監査法人

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