スマートシティの実現に向けた産学官のクロスセクター連携の重要性

2022-11-15

地域の持続可能性に対する圧力の高まり

人口流出による市場縮小に加え、デジタル化に伴って業界・業種間や商圏の垣根が消失しつつある中、地方企業は既存のビジネスモデルの破壊に直面しています。また、地方自治体は財源が不足し、労働力不足や医療費高騰、インフラ維持コストの増加、優秀な人材の流出など、多くの解決すべき重要な課題に対応しながら、持続的な都市運営に取り組んでいかなければなりません。都市運営を推進する自治体だけではなく、変化への対応は地域全体の課題であり、産官学のクロスセクターで個々のプレイヤーの変化と地域の変化を同時に起こしていくことが、今後の持続可能性のために必要となっています。

地域社会に求められる持続可能性の視点

2020年5月27日にはスーパーシティ法案が成立し、環境に配慮した持続性と住民の生活の質を高めるためのサービスの変革や都市運営の変革が進んでいます。また、同年12月25日に「自治体DX推進計画」が公表され、関連法案の成立に伴いデジタル化が義務付けられ、都市運営に関する業務の持続性を高めることも必要となっています。デジタル化と並行して、近年の災害に対応するBCP(事業継続計画)の重要性からも、災害に強いまちづくりや対応策のほか、システムのクラウド化やサーバー環境、サイバーセキュリティなどのIT領域での持続可能性も重要性が再認知されてきており、都市の持続可能性の視点はより一層、地域社会の命題として重要になってきています。一方で、環境配慮に関する取り組みや国境炭素税の議論、生物多様性の維持が全世界レベルで進んでおり、一地域であってもこの動きとは無関係ではいられない状況となっています。

  • サービスの持続可能性(Innovation)
    地域社会におけるサービス提供者と受益者の関係性の整理と、地域外との経済的結びつきの強化に伴うサービスイノベーションの持続的な達成
  • 都市運営の持続可能性(Continuation)
    社会福祉や産業振興、インフラ管理に係る地域資源の選択と集中、効率化に伴う地域社会基盤の持続的な維持管理
  • 住空間の持続可能性(Resilience)
    防災や災害時対策、治安維持やサイバー上のセキュリティリスク対策に伴う生活環境の持続的な環境整備
  • 地球環境の持続可能性(Sustainability)
    脱炭素や気候変動問題、地域の自然環境保全などの生物多様性の維持に伴う国際的な地球環境の持続的な保全保護

持続可能な社会の実現に向けた産官学のクロスセクターの重要性

このように、地域社会では持続可能性に関するさまざまな課題が複雑に絡み合っていますが、抱えるテーマが大きすぎたり複雑性が高かったりすることから、単独組織や単独ないし少数の業務担当者を中心として推進する従来の方法では、地域の全プレイヤーが主体である課題を解決に導くことは困難になっています。

多様化する持続可能性の課題解決に向け、自治体内や地域内で産官学の多様なセクターが集結し、ワンチームとなって地域の未来を創り出していく必要があり、統合的な取り組みによる地域の合意形成を促す、共通の認知・評価に基づいた課題と成果の理解が重要です。

このうち、スマートシティを支えるデータ連携基盤や都市OSが特に重要な役割を果たす部分として、共通の認知・評価をするための客観性を担保するデジタル化があげられます。これには業務のDX化が必須であり、それぞれの施策効果の可視化を行うKGIやKPIの適切化と、それぞれの地域に適した産官学で議論・合意された社会的インパクト等の指標が重要です。またBCPや環境配慮の持続可能性を推進する上でも、客観的な計測が必要です。

地域内の活動や実施効果を統合的なデータ基盤や都市OSにより効率的に管理し、適切な情報公開による地域の合意形成や、情報分析に基づく新たな取り組みのアイデアの持続的な創発を進めていくことは、地域がこれからのスマートシティを実現・運用するにあたって必要不可欠な要素です。

地域の産官学のそれぞれのセクターが課題を自分事化し、リーダシップを持って持続可能性にコミットする枠組みを作るためには、コレクティブインパクト※の考え方に基づき、行政をひとつのプレイヤーとした産官学でのチーム組成や、意思決定・合意形成プロセスの透明化に加え、連携を促進し円滑化するファシリテーション機能が重要であり、それらを支えるマネジメントの確立がポイントとなります。

このような地域機能は、デジタル化の加速に伴い、今後の地域社会や行政事業におけるひとつの標準的なモデルとなっていくと考えられます。

※行政や企業、NPOや自治体などの参加者(プレイヤー)がそれぞれのくくりを超えて協働し、さまざまな社会課題の解決に取り組むことで集合的(Collective)なインパクトを最大化すること、あるいはその枠組みを実現するためのアプローチ
https://ssir.org/articles/entry/collective_impact

執筆者

草野 秀樹

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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