ゼロカーボンシティへの取り組み

2022-03-15

ゼロカーボンシティの潮流

日本国内では「2050年までにCO2を実質ゼロにすること」を目指す自治体(ゼロカーボンシティ)が増えており、その数は2022年1月31日時点で534自治体に上っています1

その背景として、世界で気候変動対策の強化が進みつつあることが挙げられます。2021年末のCOP26でも「グラスゴー気候合意」2によって、「気温上昇1.5度以内へのシフト、2030年排出目標の強化、また石炭火力および化石燃料補助金の段階的削減や廃止」が合意されました。また、2022年1月の「ダボス・アジェンダ3」でもサステナビリティへの道のりとして、「各国首脳によるクリーンエネルギーへの移行とDXの加速、またレジリエンスと持続性の向上またグローバルな協力体制」について協議されました。日本の岸田文雄首相はその中で、官民が協働する「新しい資本主義」による「グリーン社会の実現、デジタル化の推進、また投資を引き出す新しい仕組みのデザインや実装の必要性」についての特別講演を行いました。

日本ではCO2の直接の発生源である1次エネルギー消費量に対する再生可能エネルギー比率はまだまだ低いものの(表1)、2050年度のカーボンニュートラル、2030年度に温室効果ガスの排出量46%削減と50%削減への挑戦を表明しました。第6次エネルギー基本計画4のもと、「新しい資本主義」に象徴されるクリーンエネルギー戦略5による経済成長戦略や、5.7兆円規模のデジタル田園都市国家構想6により、地域脱炭素デジタル実装を通して地域創生・活性化の取り組みを進め、今後対象とする自治体数も前述の534から2024年末までに1,000にまで伸ばすことを目指しています。

図表1:日本の1次エネルギー国内供給の推移

表1 日本の1次エネルギー国内供給の推移

出典:資源エネルギー庁 令和元年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2020) 第2部エネルギー動向、第1章 国内エネルギー動向 第1節 エネルギー需給の概要

自治体/地域社会の共通課題と施策

自治体や地域社会は2021年に施行された改正地球温暖化対策推進法7により、施策実施の目標や促進地域の設定基準を設定することや、企業におけるGHG排出量を報告することの義務が規定されました。また、2022年3月1日に閣議決定され、2023年4月1日施行予定の「省エネ法改正案8」はエネルギー使用料の多い企業に対し、非化石エネルギー使用割合の目標設定を義務付けていることから、自治体や企業を含む地域社会全体での脱炭素、そして持続可能な都市・街づくりに向けた構造転換が今後一層加速することが想定されます。

自治体および企業における施策は、①再エネの拡大、②省エネまた電化の促進、③デジタル化による社会における全体のスマート化の推進、が3本柱となります。これらの施策の推進にあたっては、現状の把握、目標の策定、短期および中長期的な施策の策定、管理方法の策定が重要であり、地域社会を含むステークホルダーとともに具体的に進めていくことが肝要です。

しかし一方で、2030年のGHG排出量46%削減、2050年までの実質ゼロのためには、上記①②③だけでは不十分です。④電力以外の熱をはじめとするエネルギー源の脱炭素化、⑤排出せざるを得ないCO2の資源化(カーボンリサイクル)、⑥CO2自体の回収や除去技術の活用、も中長期的な施策に含めていくことが必要になります。

また、持続可能な都市・街づくりには、全ての人を安心・安全で暮らしやすくし、デジタル技術の活用により生活関連質(QOL)を向上させ、にぎわいや活力を創出するためのサステナブルな取り組みが必要です。同時にその取り組みは下記4つの価値への適合が不可欠です。

地域社会で求められる4つの価値

① 安心・安全の提供、レジリエンス向上

  • 定常時、災害時のライフライン(電力、ガス、熱、水、通信など)の安定供給、自然災害の脅威やポストコロナへの対応 (地域の安心・安全と強靭性)

② 地域活性化・経済循環、交流促進・にぎわい

  • 再エネなど地域資源の活用やエネルギーの融通、脱炭素化を前提とした経済活性化、行政・自治体および地域住民を含むステークホルダーとのサステナブルな連携、地域の中からの運用と機能化

③ 生活関連サービス・QOLの向上

  • エネルギーとデジタルが融合し、移動・輸送・物流分野や生活関連サービス分野*とプラットフォーム上で連携し、QOLを向上
    * 医療・福祉・健康、健康、教育・文化、子育て、コミュニティ、農業・食料、観光、金融・決済、保険など

④ デジタル技術やデータの活用による持続的価値創出

  • ユーティリティサービスと組み合わせた多様な生活関連サービスの提供、デジタル技術やデータを活用した地域課題の解決と地域共生による付加価値の創出

図表2:地域社会で求められる4つの価値

表2 地域社会で求められる4つの価値

自治体や地域社会には計画を策定する中で、地域の自治会や住民を含むステークホルダーとの連携を構築し、合意形成するため、エリア/タウンマネジメント手法による運営が新たな取り組みとして期待されています。

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