エネルギー安定供給へのスマートシティの貢献

2022-02-01

脱炭素化の潮流とエネルギー安定供給の課題

現在、日本を含む世界120カ国以上が今世紀半ばまでのネットゼロ・エミッションを宣言しています。これら国々による温室効果ガス排出量は全世界排出量の3分の2以上に相当します。欧州グリーンディールを皮切りに、国際石油資本をはじめとするエネルギー企業各社がカーボンニュートラルの方針を相次いで打ち出し、今ではユーティリティや製造業などあらゆる産業界に脱炭素化の波は広がっています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした景気後退下にあっても、脱炭素化の流れはとどまることなく、むしろ各国・地域のグリーンリカバリー政策によって、その進展は加速しています。2021年11月に英国で開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、気温上昇を1.5℃以内に抑える目標や、国際排出枠取引のルール、石炭火力の段階的削減が確認されるなど、カーボンニュートラルに向けた国際的枠組みは進捗を示しました。

このように、脱炭素化の流れは進んでいますが、一方で、昨今再認識させられるのがエネルギー安定供給の問題です。一次エネルギーの構成が化石燃料から再生可能エネルギーに徐々にシフトしていく一方で、経済が成長し、人口が増加し続けるアジアを中心としてエネルギー需要は旺盛です。企業の上流資源開発への投資が抑制されると、長期的に需要と供給がバランスされても、短期的には需給が逼迫することが懸念されます。冬場の寒波によるエネルギー需要の増加や、地政学を含めた供給面での制約など、いくつかの要因により需給バランスが崩れると、国際市場価格に影響が出ます。昨冬のようにLNGスポット価格の高騰が日本の卸電力価格に影響を及ぼし、結果として人々の家計に影響を与えるようなことにもつながります。日本はエネルギー自給率が11.8%と他国と比較しても低い水準にあり(2018年、OECD加盟35カ国中34位)、国内エネルギー供給は国際エネルギー市場の影響を受けやすい構造と言えます。

図1:主要国の一次エネルギー自給率比較(2018年)
図1 主要国の一次エネルギー自給率比較(2018年)

※IEA「 World Energy Balances 2019」の2018年推計値、日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2018年度確報値。表内の順位はOECD35カ国中の順位
出典:経済産業省資源エネルギー庁「2020—日本が抱えているエネルギー問題」

スマートシティのエネルギー安定供給への貢献

エネルギーの安定供給に向けては、スマートシティがその役割を担うことができるかもしれません。スマートシティに、デジタル技術を活用したエネルギーマネジメントのシステムを導入することで、エネルギー消費の効率化や再生可能エネルギーの地産地消を促進し、エネルギーの安定供給に寄与することが期待できます。例えば、バーチャル・パワー・プラント(VPP)やディマンド・レスポンス(DR)など需給をバランスさせる仕組みをスマートシティに取り入れ、発電量が需要を上回る昼間の時間帯に太陽光発電により蓄電池で需要を作り、需要の増える夜の時間帯で蓄えられた電力を使用することで、経済的でより多くの再生可能エネルギーの導入が可能となります。また、建物や家屋のエネルギー需要を、省エネと屋根上などに設置する太陽光発電で賄うZEB(ネットゼロ・エネルギービル)やZEH(ネットゼロ・エネルギーハウス)の普及や、輸送部門での充放電設備の整備含めたEV導入と再生可能エネルギーとの組み合わせなど、技術面での進展とともにエネルギーの自給自足を促す取り組みが広がってきています。また、蓄電池を活用した施設間での再生可能エネルギーを融通することで需要のピークを軽減したり、停電時に電力を供給したりするなど、町や地域でエネルギーの自給自足を目指す動きも始まっています。

国際エネルギー機関(IEA)によると世界人口の50%以上が集中する都市部において、全世界CO2排出量の約70%が排出されていますが、今後投資を増やし対策を講じることができれば2050年までにその90%の排出削減が可能であるとのことです。環境省によると、日本でも現在(2021年12月28日時点)、514の自治体が2050年までのカーボンニュートラルを表明しており、その目標達成に向けた道筋を描き始めています。地域に適したエネルギーマネジメントのシステムがスマートシティに取り入れられることで、再生可能エネルギーの導入拡大や地産地消が促進され、国が掲げるネットゼロの目標達成とエネルギーの安定供給という2つの課題が解決に向かうことが期待されます。

図2:2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明自治体
図2 2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明自治体

出典:環境省「ゼロカーボンシティ一覧図(表明都道府県地図、表明自治体数・人口グラフ他)(2021.12.28)」

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