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2021-12-07
PwC Japanグループは2021年10月22日、メディア関係者の方を対象に、パネルディスカッション形式のセミナー「パワーシフト~エンタテイメント&メディア業界における力学の変容~」を開催しました。当日は社外からも登壇者をお招きし、活発な議論が繰り広げられました。
当日の様子を振り返る連載の第2回は、第1回でご紹介した「グローバルと日本におけるエンターテインメント&メディア業界の概況」の解説を受けて、PwC Japanグループ エンタテイメント&メディアセクター リードパートナーの原田雄輔が、経済産業省コンテンツ産業課長の高木美香氏、エイベックス・テクノロジーズ株式会社代表取締役社長の岩永朝陽氏の御二方にご意見を伺い、またPwCコンサルティング マネージャーの谷口大輔とともに「消費者行動の変容」について話を進めていく様子をご紹介します。
高木 美香 氏
経済産業省 コンテンツ産業課長
2002年に経済産業省入省。2008年から2012年にかけて、「クール・ジャパン」の海外発信や、コンテンツ・デザイン・ファッションに代表される「クリエイティブ産業」育成施策の立ち上げおよび推進に携わる。
その後は、新興国向けの通商政策や国際標準化政策などの「国際ルール形成」施策を担当し、2018年から現職。創造性を活かした新しい未来づくりがライフワーク。
東京大学経済学部卒業、スタンフォード大学MBA/MA in Education修了。
岩永 朝陽 氏
エイベックス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長
1999年よりシリコンバレーのベンチャー企業でECサービスの立ち上げに参画。
帰国後、日立にてシステム開発、外資系企業にて放送・VOD関連のエンターテインメント事業でプロダクトマネージャーとして9年、さらに海外ゲームパブリッシングなどを経て、2018年 株式会社 aNCHORの代表取締役に就任。
2019年4月エイベックス株式会社 執行役員。
2019年5月エイベックス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長に就任。
原田:
「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック」からの分析で、領域ごとの成長率やリカバリーの違いが見えましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や、今後注目している領域などあればコメントいただけますでしょうか。
高木:
COVID-19の影響を最も受けているのは、やはりライブエンタテイメントだと思います。コンテンツ産業課ではコンテンツ産業を全般的に見てきていますが、その多くがデジタル化されていくなかでも、ライブエンタテイメント市場はずっと伸びてきていました。2019年には、その市場規模が6,000億円くらいになったのですが、2020年に約8割減少し、およそ5,000億円が失われました。今年に入って復活してきてはいるものの、厳しい状況は変わりません。一方、これまでほぼゼロだったオンラインライブ市場が、昨年450億円くらいの市場規模になったという統計があります。リアルなライブが元通りになったとしても、このオンラインライブという新しい市場がなくなることはないと思います。ゲーム空間内で実施するなど、新しい動きも色々と出てきています。
また、VRが伸びているという解説がありましたが、VRもCOVID-19の影響を受けて成長が加速した側面が強いと考えています。現在は特にゲームの分野で伸びていると思いますが、VRの技術は医療や製造現場など用途が多岐にわたるため、この先もっと大きくなるのではないかと思います。
岩永:
VRについては私たちも色々な可能性は感じているものの、解説であったとおり、市場としてはまだまだ小さく、難しい面があります。映像配信に関しては、これまではライブを普通に撮影して配信するだけであり、会場で体感するライブには絶対にかないませんでした。それが、VRやその他の最先端技術を使うことでしか表現できない演出などができてくると、収益も一緒に伸びていくのではないかとみています。
原田:
ありがとうございます。リアルとバーチャルのそれぞれの特性をいかに生かして価値を高めていくか、というところが高木様と岩永様の共通の見方だったように思います。
谷口:
ここからは、近年の「消費者行動の変容」に焦点を当て、“見る”、“遊ぶ”、“聞く”、“読む”の変化をデータの側面から見ていきたいと思います。
まず、“見る”についてです。グローバルで消費者は急激にOTT(動画配信)サービスを受け入れるようになっており、COVID-19の影響を受けた2020年には対前年比26%の成長となりました。新たなトレンドとしては、PVOD(プレミアムビデオオンデマンド)という封切り間もない映画を配信する高付加価値のサービスが注目されています。地域別でみると、北米がOTTサービスの総収入の43%を占める巨大な市場となっており、続いてアジア大洋地域が30%となっています。
日本についてみると、グローバル同様OTTサービス市場の拡大が継続しています。SVOD(サブスクリプションビデオオンデマンド)の方がTVOD(トランザクショナルビデオオンデマンド)より高い成長率であるのも同じですが、日本はSVODの成長率がグローバルより若干低く、TVODの成長率は若干高めとなっています。
原田:
OTTのビジネスの今後についてはどう見られているでしょうか。
岩永:
日本のOTTに関しては、近年マルチデバイス対応が進んだと思います。これまでは、家族でSVODを利用してテレビで見られていたのが、個人のスマホで見られるようになり、都度課金のTVODも伸びてきたように思います。今後は、個人の見たいものに対応できるよう、専門チャンネルも増えてくるのではないかと思っています。
谷口:
続いて‟遊ぶ“について見ていきます。COVID-19による行動制限下において、消費者は大いにゲームを楽しみました。グローバルでは2020年に対前年比14.7%と大幅な伸びを示しています。特にモバイルを中心としたソーシャルカジュアルゲームの収益が規模および成長率ともに大きくなっています。先ほどの高木様のお話にもありましたが、コミュニケーションや音楽ライブの参加などがゲームの世界の中で行われるようになってきたのも最近のトレンドとして注目されます。
データ消費量の観点から見ていくと、ビデオが最大で、全体の78%を占めていますが、成長率で見るとトップはゲームで、35%を超える伸びが予測されています。特にモバイルゲームの成長や、モバイルにおける5Gへの切り替えが成長を後押ししていると考えられます。
ゲームの世界の中では、フィジカルからデジタルへの移行が大きく進んでいます。小売店におけるPCとゲーム専用機を合わせたゲームのフィジカルな販売はマイナス成長となっていますが、オンライン上での販売や追加ダウンロードコンテンツ、定額制サービスなどのデジタルでの販売は引き続き高い成長となっています。またモバイルを中心としたソーシャルカジュアルゲームの規模や成長率が大きくなっています。従来型ゲームの収益が最大だった米国でも、2020年にソーシャルカジュアルゲームの収益が従来型ゲームの収益を上回り、グローバル全体としてモバイルゲーム市場の勢いと可能性を感じさせます。
日本もモバイルを中心としたソーシャルカジュアルゲームの収益が規模および成長率ともに大きくなっています。日本のモバイルゲームは、中国、米国に次ぐ世界3位の大きな市場ですが、日本で収益を上げたモバイルゲームのトップ10のうち8本が日本発信と、比較的国内に閉じた形となっているのが特徴です。また、ゲームのフィジカルな販売が比較的根強く残っているところも日本のゲーム市場の特徴として挙げられます。
eスポーツ分野にも少し触れたいと思います。eスポーツは、グローバル全体で2019年から2025年にかけて年平均13.2%と、ゲーム分野の中でも特に高い成長率を示しています。日本は他国と比べ少し出遅れていますが、その分25年までに年平均22%という高い成長率が見込まれています(詳しくは「eスポーツビジネスにおける海外市場への挑戦―日本企業への提言―」をご確認ください)。
原田:
ゲームに関連したビジネスにおける特徴的な動きや、この先狙っていきたいようなところなど、コメントをいただけますでしょうか。
岩永:
定額制でどのゲームでも遊んでいいというような「サブスクリプション」サービスが出てきています。ユーザーがどのような動きをするのか、ずっと遊んでもらえるのか、今後のビジネスの成長に注目しています。もう一つは「ブロックチェーンゲーム」において、個人が生活していくためのお金を、ゲームをしながら稼いでいくというゲームを超えたような概念が、東南アジアを中心に広がってきていることに注目しています。例えばゲームの中で武器を売ったり、バトルで勝ったりなどして得られるゲーム内のコインが仮想通貨と結びついています。競馬のゲームを例に説明すると、お金のある人が馬主となり、時間のある人がその馬を飼育したり、レースに出したりすることを請け負うなど、役割の分担とともにコインのやり取りが発生し、それをリアルマネーに換金できるのです。お金が稼げるというのは非常に魅力的ではありますが、どこかのタイミングで何らかの規制が作られていくとは思います。
原田:
「Play to earn」と言われる概念ですね。リアルとバーチャルの世界の掛け合わせという話が、まさに色々なところで起きていますね。
岩永:
今までだったらバーチャルの世界だけで終わっていたものが、ゲームに金融のレイヤーが入ってくることで、経済に陸続きで直結するというのが、「ブロックチェーンゲーム」で見られる事象であると感じています。
次回は、「消費者行動の変容」の“見る”、“遊ぶ”、“聞く”、“読む”のうち、残りの“聞く”、“読む”についての変化をご紹介します。
約20年にわたりエンタテイメント企業やメディア企業、ハイテク製造業など幅広い業種のクライアントに対し、全社規模の業務改革における構想策定からシステム導入、改革実現による効果創出までさまざまな支援業務に従事。また、アジアを中心に日本企業の海外プロジェクト実行支援も数多く手掛ける。
現在はエンタテイメント・メディア業界のリーダーとして、クライアントに対する全社的なデジタルトランスフォーメーションを支援。
クライアントの課題解決のため、従来のコンサルティングワークに加え、PwC Japanグループの他法人と連携したサービス提供にも注力している。
ITおよびコンサルティング業界の立場から、インターネット事業(BtoC/CtoC)、自動車部品メーカー、工作機械製造、人材サービス、建設資材メーカー、電設資材卸、ハウスメーカー、航空運輸、製薬、総合商社、レース製造などさまざまな事業領域のクライアントに対し、営業、生産、販売、人事、会計、ITなど幅広い業務領域におけるBPRやIT導入を推進した経験と、自社における組織マネジメントや事業運営の経験を活かし、「事業・組織・業務・ITの変革」の構想策定から実行実現までを一貫して支援することを得意とする。
新しいソリューションモデルを考案し、特許出願した上で新規事業の企画から立ち上げをリードした経験も有し、近年はポイント事業やEコマースなどのインターネット事業の統合や資本業務提携などにも注力している。
製造、金融、メディアなどの幅広い業界で、業務改革・組織改革を中心とした各種プロジェクトに従事。業界・ソリューションを問わないオールラウンドなコンサルタントとして活動している。
近年は、メディア/コンテンツ業界について、激動する環境下での事業戦略とその推進のためのマネジメントの在り方に焦点をあてて活動している。
クライアントワーク以外では、PwCグローバルエンタテイメント&メディア アウトルックの日本における中心メンバーとしても活動し、周辺領域を含めた情報発信を行っている。
※法人名、役職は掲載当時のものです。
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