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PwC Japan有限責任監査法人は、サービスの提供報酬を現金の代わりに特産品であるコメで受け取り、そのコメを地域の居場所を運営する団体に寄付するという、経済的価値と社会的価値の両立を目指した商取引の実証実験を行いました。
物品やサービスを購入する際は現金を用いることが一般的ですが、支払いは現金に限るものではなく、金銭的価値が同じである現物を対価として支払いに用いること(以下、現物支払い)も可能です。ところがこの現物支払いは、業績不振などで現金が確保できない場合に、所定の取り決めの下で取引先や従業員への支払いに利用されるといったわずかな事例を除き、日常の取引で活用される事例はあまりないのではないでしょうか。
今回の取り組みでは、私たちが調査レポートの対価をコメで受け取り、地域のコミュニティスペース運営団体に寄付するという実証実験(図表1)を基に、現物支払いを実施するにあたっての仕組みや効果、新たなビジネスの可能性を検討しました。
図表1:実証実験の概要
新たに何かを購入・調達する際には、自社の商品やサービスを販売することで得る現金収入が前提となりますが、現物支払いが可能となれば、どのような変化が生まれるでしょうか。
利益率の低い商品の場合、通常は多くの商品を販売しなければ購入・調達に必要な現金確保が困難になります。そうした際に現物支払いができれば、現金化の労力や時間が節約できることにもつながります。さらに、現物の金銭的価値は原価ではなく、市場価格(売り値)となるため、企業の購買・調達意欲を促進する効果が期待できます。
また、食材や消費財を扱っている企業の場合、労働協定の締結による双方の合意は必要ですが、従業員の給与の一部を自社商品とすることで、より多くの人材の雇用につなげることができるかもしれません。
このように支払い方法が多様化すれば、商品自体が通貨と同等の役割を担うことになり、新規事業やビジネス拡大の元手となるとともに、従来とは異なるエコシステムが形成され得ると予想します。
現物支払いでは、報酬として受け取る現物の用途が明確であることが前提となります。現金であれば、将来の蓄えとすることもできますが、現物の場合は、時間の経過とともに価値が下がる、または使用されずに廃棄されることも予想されます。
今回、PwC Japan有限責任監査法人が提供した調査レポート「おコメの販売・消費動向の調査」の対価として支払われた現物は、関川農事株式会社が生産したコメです。
毎年完売となるところ、地域の居場所スペースへの寄付や地域活性化への貢献という趣旨に共感いただき、合意に至りました。私たちとしても、より多くの方に食していただけるように、幅広い世代を対象としながら、地域とのつながりの強い都市圏のコミュニティスペースを寄付先としました。
本取り組みにおいては、地域との絆を深める出来事もありました。偶然にも寄付先の団体代表の義父が、産地である新潟県村上地域出身だったとのことで、途絶えていた地域と団体代表との縁が再び結ばれたのです。
PwC Japan有限責任監査法人のメンバーも、自分たちが寄付するコメについて関心を持つようになりました。関連するイベントに参加したり、関川農事のコメが使用されているおにぎり店を訪れたりと、現金の取引とは異なる副次的な効果が見られました。
現物を対価とする取引を実現するために重要なのは、マッチングです。基本的には物々交換と同じなので、購入・調達したい商品・サービスと、報酬としたい現物のマッチングが不可欠です。既にお互いの取引のある企業では比較的容易で、例えば、経営幹部の紹介料を押さえたいSaaS企業と、自社のサービスを利用している人材紹介会社との間では、図表2のようになります。
図表2:既存取引のある2社間での取引イメージ
また、支払われる現物を、商品・サービスそのものではなく、譲渡可能な権利とすることで複数間の取引も可能となります。
例えば、図表3のように、ホームページ制作会社が不動産紹介料の対価として、ホームページ制作を支援する権利を不動産会社に渡し、不動産会社は、その権利によって社員食堂の食材を購入するといった形を取れば、3社間での現金を介在しない取引が成立します。
図表3:複数企業間の取引イメージ
複数企業間の取引は煩雑となりますが、AIが最適な組み合わせを導き出し、ブロックチェーン技術を活用して契約を簡便化するなど、スマートコントラクトの法整備が整えば、現存のテクノロジーで現物支払いの仕組みを構築することも可能です。
現金は、何かを得るための媒介物であって、現金そのものにモノとしての価値はありません。しかしながら、インターネット経由でほとんどのものが手に入るようになった昨今、多くの現金を獲得・保有することが目的とされる傾向にあります。
例えば、転売目的の希少品購入が分かりやすい事例です。この行為は、購入した物ではなく、転売による利益を目的としています。その結果、真に必要な人が定価で物を手に入れられないという事態に陥っているのです。
転売は、最大限の利益を出すという経済的価値と、なるべく多くの人に商品を届けるという社会的価値のバランスを保ちたい企業の努力を無駄にする行為と言い換えることができますが、支払い方法が現金に限定されている現在の社会において、このような事象を防ぐことはできません。
現物支払いという選択肢を持つことで、必要としている人に必要なものが届くという当たり前のことが実現できれば、行き過ぎた経済的価値の追求に歯止めがかかり、社会的価値とのバランスを保つ新たなビジネスが創出されるのではないでしょうか。
本実証実験のまとめは以下となります。