銀行検査プロセスの再構築の方向性:銀行主導による協働的監督アプローチ

  • 2025-09-02

銀行検査プロセスの再構築の方向性:銀行主導による協働的監督アプローチ

本稿はPwC米国の金融規制の専門チームが提供するもので、今後の金融機関への監督アプローチのあり方と、それを受けた金融機関による自律的なリスクガバナンス、リスクマネジメント体制について考察しています。

米国において金融機関に対する監督のスタンスに変化が見られます。

すなわち、客観的な情報を基にテクノロジーを活用することで透明性ある監督を実現するだけでなく、リアルタイムでのモニタリングで先回りしてリスクを捕捉し、事前対応型のリスク管理の実現を目指すというものです。
これは、日本の監督機関とも共通する考え方だと言えます。

また、金融機関による自律的な統制を基礎としたリスクアペタイトフレームワークの下でのリスクの自己認識と改善活動は、3つのディフェンスラインモデルのあり方を考える上でも参考になるでしょう。

現状の監督アプローチの課題

  • 手続き・文書化への偏重
    面談などの手続きの履行と膨大な文書化作業に重点を置いており、検査官と銀行職員が実質的なリスク評価よりもプロセスの完遂に時間と労力を費やす傾向がありました。
  • バックワードな検査アプローチ
    現場の検査は、事案の事後検証や対処療法的な指摘に偏る傾向がありました。
  • 定性的、検査官による裁量的な判断
    検査官は銀行に対し、長年続けてきた非公式な業務慣行の文書化・正式化、重要度を考慮しない画一的対応、そして実質よりもプロセスを重視した監督所見への対応を求める傾向がありました。

今後の監督および金融機関による自律的統制のあり方

  • リスクアペタイトに基づく自己リスク認識とその対応(資源配分の最適化)
    銀行自体が、戦略、リスクアペタイト、規制期待に合致したリスク問題の特定、優先順位付けを行い、改善に向けて構造化への青写真を描くため、課題管理行動計画(Issue Management Action Plan、IMAP)を作成・管理します。
  • 先回りによるリスク捕捉(監督、金融機関ともに)
    監督業務において、リスク管理の本質的な内容、銀行戦略、リスクアペタイトについて前向きに議論され、予測モデルが銀行の将来を見据えたリスクシナリオを設計できるよう支援します。
  • テクノロジーを活用した客観的評価基準の適用
    AIを活用したモニタリングツールが統制テストの結果や生じた問題の発生確率などを客観的かつ効率的に業績指標として評価します。生成AIが銀行内部の課題記録、監査所見、改善計画を分析することで、従来の詳細な監査手続きに代わる継続的モニタリング、銀行・当局間の協働対話に基づく新たな監督プロセスを実現します。
  • 自浄作用を持つ金融機関の自律統制活用
    監督当局は信頼に基づき、銀行が自ら問題を検知・管理する仕組みを運用します。一方、銀行は自行の規程類や慣行が法令要件などを遵守しているかを検討・分析することで浮かび上がった自行の課題について、重要度や影響度に応じて優先順位付けし、根本原因、具体的改善行動、執行責任、期限などを整理する自己評価システムを構築します。

Reimagining the bank examination process

: A collaborative, bank-led approach

( PDF 344.95KB )

執筆者

辻田 弘志

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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