新興国展開戦略支援室コラム:離陸するか?インドのスマートグリッド市場(第2回:インドにおけるスマートグリッドイニシアティブ)

2013-11-25

前回述べたように、電力事情の悪いインドでは、これまで改善に向けた取り組みを継続的に行ってきた。先の第11次5カ年計画(2007-2012)では、R-APDRP(Restructured-Accelerated Power Development and Reform Programme)を展開し、配電部門の近代化に取り組んだ。R-APDRPは、人口3万人以上の都市を対象に電力損失を15%以内に削減することを目標とし、SCADA(Supervisory and Control and Data Acquisition)、DMS(Distribution Management System)導入などのIT活用を推進するパートA、高圧配電網の整備などハードウェアを強化するパートB、そのほか取り組みの支援活動を推進するパートCの、3つのパートからなっている。第11次5カ年計画ではインド全土で1,400以上の都市で配電網のIT化が推進され、この取り組みは現在の第12次5カ年計画(2012-2017)でも継続されている。

R-APDRPに代表される送配電ロス改善に向けた取り組みに加え、インドでは送配電網の高度化への必要性が増大している。原油の8割を輸入に頼るインドは、再生可能エネルギーの導入を積極的に推進しており、第12次5カ年計画期間に発電量36GWの設置を計画している。現在12%の再生可能エネルギー(水力発電を除く)のシェアは、今後10年間で20%にまで高まる見通しである。そのため、再生可能エネルギーの出力変動に対応できる安定した信頼性の高い送配電システムを構築する必要性が生じている。

加えて、インド政府がエネルギー安全保障政策および産業育成政策の一つとして推進するNEMMP2020(National Electric Mobility Mission Plan 2020、国家電気自動車計画2020、2012年8月発表)では、2020年までに、二輪および四輪の合計で600~700万台もの電気自動車の導入を目指している。これに対応しうる配電網を整備しなければならない。

このような背景から、インド政府は、2011年11月に電力省(Ministry of Power:MoP)配下に省庁間連携組織であるISGTF(India Smart Grid Task Force)および官民連携組織であるISGF(India Smart Grid Forum)を設置し、インドのスマートグリッド技術の導入に関する本格的な検討を開始した。ISGFは10のワーキンググループ(送電、配電、通信、メーターリング、ロードコントロール、アーキテクチャー、実証・ビジネスモデル、政策・規制、再生可能エネルギー・マイクログリッド、サイバーセキュリティー)より構成され、各分野におけるインドのスマートグリッドの方向性について検討している。
この枠組みでの検討の結果、MoPは2013年8月、今後のスマートグリッド推進の方向性を定めたSmart Grid Vision and Roadmap for Indiaを発表した。この中で、「インドの電力業界を、ステークホルダーの積極的な参加の下、堅牢かつ柔軟で持続可能なデジタルエコシステムに変革し、信頼性の高い高品質な電力をすべての需要者に供給すること」を、インドにおけるスマートグリッド実現のビジョンとして掲げ、2027年(第14次5カ年計画終了年に該当)における7つの分野(電力普及、送配電ロス削減、スマートグリッド導入、政策および料金制度、再生可能エネルギーおよび省電力、電気自動車および蓄電システム、そのほか)での実現目標と、それに至る工程表を示している。今後、その実現を組織的に強力に推進していくために、ISGTFの機能強化やR-APDRPなどの既存のイニシアティブとの統合を進めていくとともに、スマートグリッド導入に対する責任を負う特命機関としてのNSGM(National Smart Grid Mission)を、2014年をめどに立ち上げることが計画されている。

表1. ISGTFが設定した機能分野

また、ISGTF/ISGFはロードマップ策定という長期的な方針検討に加え、従来のR-APDRPのスキームによりインド政府・MoPが費用の50%を負担する支援の下、配電領域(分散発電含む)におけるスマートグリッド・パイロット・プロジェクト実施を計画し、2013年1月、14の配電会社(州電力局含む)によるパイロットプロジェクトを選定した(表1および表2 参照)。

これらのプロジェクトは、第12次5カ年計画期間中に実施される予定であり、一部のプロジェクトでは既にRFPが発行され、プロバイダー選定に着手している。大半のプロジェクトは、送配電ロス削減の手段としてのAMI(Advanced Metering Infrastructure)と、それを活用したPLM(Peak Load Management)による負荷低減に取り組む内容となっている。インドにおいてスマートグリッド市場が立ち上がるか否かは、これらのパイロットプロジェクトで発生する課題とその解消に向けてどのような動きがなされるか、が試金石になってくると言えよう。

表2 . MoPの承認を受けたスマートグリッドパイロットプロジェクト

表2 . MoPの承認を受けたスマートグリッドパイロットプロジェクト

Source ; Industry Discussion, PwC

執筆者

中間 雅彦
PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

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