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編集ツールのコモディティ化や生成AI技術の発達により、従来、コンテンツビジネス関係者が独占してきたコンテンツ制作の「民主化」が急速に進んでいます。実際に地域や年齢、経験に関係なく市販のデバイス・ツールで個人が思い思いに創作できるようになり、多様なコンテンツが数多く誕生しています。
一方で個人向けの配信・共有プラットフォームの充実に伴い、こうしたコンテンツの浸透スピードが爆発的に増大する中、フェイクコンテンツが急速に流通するという事態を招いており、社会問題となっています。このことから、コンテンツの信頼性、つまり来歴*1や真正性*2を確かめる方法に対するニーズはコンテンツ消費者、IPホルダーの双方から求められていると言えるでしょう。
コンテンツ消費者にとって、情報の真偽や信頼性を判断する際に極めて重要な要素となるのは「情報の発信元が誰なのか」です。動画サイトやソーシャルメディアのような任意のプラットフォームで流通する情報については発信元を特定することは難しく、判別することが難しい偽情報の生成が容易になった今、内容だけで真正性を判断することは困難になっています。
そうした中で、近年、コンテンツの信頼性を向上させ、誤情報・偽情報の拡散を防ぐための取り組みが、報道機関などを中心に行われています。その中でも、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)という、主に画像や動画を中心としたデジタルコンテンツの出所や編集履歴を付与・検証するための方法を検討している国際的コミュニティが注目されています。
C2PAコミュニティでは、コンテンツに関連するメタデータの情報を元に、コンテンツがどこから来たのか、どのような編集が加えられたのかについて追跡できるように、公開鍵暗号技術などを活用して第三者が改ざんできないように来歴を記録する技術規格の開発を進めています(図表1)。C2PA規格には、ニュースコンテンツを提供するメディア企業や、コンテンツ編集ツールを開発するIT企業に加えて、コンテンツを共有するプラットフォーム企業など、コンテンツ流通バリューチェーンの各領域を担う世界中の大手企業や組織が参加しており、バリューチェーン全体での技術仕様の標準化を目指しています。
図表1:C2PAの構成要素
C2PA規格に関しては、コンテンツの生成に用いる機材への実装が始まっています。
例えば、撮影機器の画像・映像にC2PA規格の来歴情報を付与し、独自の電子署名を付与する仕組みを導入したり、スマートフォンに対してAIによる生成や加工がなされているかどうかをCP2A規格に基づいてユーザーに示す仕組みが搭載されるなどの取り組みが進んでいます。また編集用ソフトウェアでも、自動的にC2PA規格の来歴情報を付与・作成・編集する機能を実装する製品が出てきています。
コンテンツの放送・配信の領域では、欧州の公共放送を中心にC2PA規格の組み込みが進んでいます。オランダ・アムステルダムで行われる放送関連ソリューションの年次展示会「IBC 2025」では、複数の放送局がC2PAを活用したコンテンツ制作フローが発表されていました。
C2PA規格の導入に際して、コンテンツバリューチェーンの各アクターによって検討する論点は大きく異なっていますが、本稿では、コンテンツを自社IPとして制作し、消費者やビジネスパートナーに提供する企業に焦点を当てます。
コンテンツ制作・提供企業がC2PA規格への適合を検討すべき理由は大きく3つあります。
自社コンテンツをC2PA規格に適応させる場合、自社のビジネスプロセスを正確に分解することが第一歩です。自社のIP戦略などに基づき、どのような来歴情報を顧客やビジネスパートナーに提供していくのかといった提供方針や、C2PA規格に対応するためのポリシーを検討する必要があります。その上で、自社のコンテンツ制作プロセスの中で、C2PA規格で定められている要件をどのように付与するか、また、付与した来歴情報をデジタル署名などによってどのように証明するかを検討することになります(図表2)。
図表2:C2PA規格を適応した場合のコンテンツ制作プロセス
一方、C2PAコミュニティでは、技術仕様が細部まで完全には固まっておらず、検討はいまだ進行中です。コミュニティでのディスカッションの動向を見極めることも必要となりますが、コンテンツ企業側のニーズなどを提言できる状態でもあり、コンテンツの真正性をめぐる国際規格の検討に企業の目線で一石を投じることも可能です。
PwCコンサルティングでは、世界標準となりつつある本規格の導入支援を通じて、クライアントのコンテンツIPの信頼性を高める活動を行っています。こうした支援を通して、信頼性の高いコンテンツ流通を加速させ、コンテンツ業界が持つ潜在性が成長へとつながるような未来を、クライアントとともに築いていきたいと考えています。
*1 来歴(Provenance)=コンテンツの出どころ(いつ、誰が、どのような映像素材を元に作ったコンテンツか)
*2 真正性(Authenticity)=コンテンツの信頼性(海賊版コンテンツ、フェイクコンテンツではないか)
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