ドローンの利活用における機体の選定指針

2022-02-14

機体の分類とバリエーション

ドローンという呼称は、遠隔操縦もしくは自律航行する無人航空機を指しています。飛行方式による分類としては、「回転翼型」と「固定翼型」、またその両方の特徴を持ち合わせた「VTOL(Vertical Take-Off and Landing aircraft:垂直離着陸機)型」があります。一般的にドローンと呼ばれるものの多くは、回転翼機のうち、3つ以上のプロペラを有する「マルチローター型」の機体であることが多いですが、マルチローター型が広く普及している理由として、空中でホバリング(停止)することが可能である点や、3次元のあらゆる方向へ自由に移動することができる点が挙げられます。例えば、建物点検の際には複雑な移動や停止を伴いますが、このような飛行を固定翼型で遂行することは困難であり、マルチローター型が最適な選択といえるでしょう。

一方、固定翼型は回転翼型に比べてエネルギー効率が良いため、長時間、高高度の飛行に適しています。長距離の物流、大気測定などの気象調査、広範囲にわたるリモートセンシングなどが活用に適した領域と言えます。固定翼型は、離発着の際に滑走路を必要とするデメリットがありますが、VTOL型は垂直離発着のためのプロペラを固定翼に搭載することによって、その弱点を補っています。

ドローンのサイズは、要求される使用環境とペイロード(搭載機器の重量)に応じて決定します。例えば、屋内の狭隘部や障害物が多い屋外環境では大型ドローンを使用することは困難であるため、小型の機体やマイクロドローンと呼ばれる超小型ドローンが活用されています。一方で、搭載したい測定機器の重量や寸法が大きい場合、あるいは物資を運搬する用途では、機体は必然的に大型になります。

昨今のコンシューマー向けドローンの多くは、機体に純正のカメラなどが組み込まれている場合が多く、機体サイズと重量が最適化されています。もし運用者が自社開発の測定機器などをドローンに搭載したい場合には、任意の機器を搭載できる汎用性のあるドローンを選択する必要がありますが、ドローン市場における選択肢はさほど多いとは言えず、結果的に機体サイズが想定以上に大型になってしまうケースがあり、注意が必要です。

図1 利活用分野別ドローンの種類および搭載デバイス例

利活用目的に応じた選定フロー

ドローンを飛行させる主な目的としては、画像などのデータ取得や、遠隔における人間の代替作業が挙げられますが、その目的を遂行するためにドローンには何かしらのデバイスを搭載することになります。ドローンの活用において重要なことは、機体の選定だけでなく、搭載するデバイスの性能や使用法を正確に理解することです。例えば、搭載機器として最も一般的な可視光カメラは、空撮分野のみならず、測量、点検、監視、警備など多岐にわたって利用されますが、それぞれの用途に即した画像分解能を満たすカメラを選定しなくてはなりません。すなわち、用途に適したカメラの画素数、センサーサイズ、レンズなどの仕様を理解して選定する必要があるということです。

農業や林業などでは、さまざまな波長域の情報を取得できるマルチスペクトルカメラが利用されますが、分析対象とする波長域を計測できるカメラを正しく選定するだけでなく、測定機器が正しいデータ取得を行うための撮影条件があることなど、適切な運用方法もあわせて理解することが重要です。

ドローンの利活用を検討する上では、まず業務における目的を明確化し、使用する環境を定義することが重要です。そして、その要件を満たす搭載デバイスを正しく選定し、運用可能な飛行性能やサイズを満たす機体を選定するという手順で検討しましょう。

図2 ユースケースに適した機体選定のフロー

期待されるセンサー技術の向上

ビジネスでドローンを運用する際に最も重要なことは、適切な安全管理、つまり正しいリスクアセスメントを実施することです。そのためには、選定したドローンの性能限界を理解して運用すること、言い換えるなら、フライトコントローラーやGPS受信機などの重要な構成部品の性能を把握することが肝要です。

これからのドローン利活用においては、自律飛行の高度化が進んでいくと考えられます。すでに、精密農業や測量分野では、事前に設定したフライトプランに基づいた自律飛行による業務が実運用されていますが、工場やプラントなどの非GPS環境下における完全な自律飛行の実現もそう遠くはないでしょう。

周辺地図作成と自己位置推定をリアルタイムに行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術や、精度の高い衝突回避センサーは、高度な自律飛行を可能にする重要なキーであり、センサー技術に秀でた日本の製造業は世界をリードできる分野だと言われています。

ドローンの性能や技術は日進月歩であり、まだ実装されていない技術動向を把握することも、ドローンの導入検討において重要な観点だと考えられます。

図3 ドローンの飛行性能を決定づけるセンサー関連技術

執筆者

古賀 心太郎

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email


その他のインサイト/ニュース

6 results
Loading...
Loading...
We unite expertise and tech so you can outthink, outpace and outperform
See how