ドローン活用における体制構築のポイント

2021-12-07

体制構築のポイント

ドローンを安全に、そして効果的に活用できる体制を構築するためには、以下のようなポイントに注意する必要があります。

役割ごとに求められるケイパビリティの定義

企業においてドローン事業を支える体制に必要な役割、それぞれが担う役割、求められるケイパビリティを定義します。

  • 事業企画者、営業・渉外担当者、運航管理者などの役割に応じて、想定されるミッション、期待するアクションを定義します。
  • 役割ごとに求められるケイパビリティのレベルを定義します。

ドローンの活用にあたって必要な役割は、主に事業企画者、営業・渉外担当者、運航管理者などに分類されます。また、それぞれが求められる役割に鑑みると、組織が獲得すべきケイパビリティは多岐にわたると言えます。ビジネスにおいてドローンを活用するには、安全確保が大前提となるため、安全なオペレーション設計やリスク管理といったケイパビリティも重要になります。

ドローンの活用にあたって必要であると想定される役割および、その役割が持つべきケイパビリティは以下の図表の通りです。

  役割 主なケイバビリティ
事業企画者
  • ドローン事業の事業構想・事業計画を策定して推進する
  • 全体管理(プロジェクト管理)
  • ビジネス(事業構想・計画策定、業界・法規制への理解)
  • 組織(組織設計・管理)
営業・渉外担当者
  • 営業担当は、サービスの提案をはじめとした
    営業活動を担当する。また、操縦者とともに飛行に関する自治体・関係各所との調整をする
  • 渉外担当は、省庁・自治体との連携を担当する
  • ビジネス(営業活動、業界・法規制動向への理解)
運航管理者
  • ドローン事業の安全な運航体制・オペレーションを整備して運航を管理する
  • オペレーション(オペレーション設計、運航管理)
  • リスク管理(リスク分析・対応検討)
  • 組織(組織設計・管理)
保守担当者
  • ドローン事業の安全な運航のためドローンの機体などの保守を担当する
  • テクノロジー(ドローンの機体に関する知見)
操縦者・補助者
  • ドローンの操縦を担当する。補助者は目視外飛行にて飛行経路全体を見渡せる位置で操縦者を補助するなど、安全な運航をサポートする
  • テクノロジー(ドローンへの理解や操縦技術、データ分析)
  • リスク管理(リスク分析・対応検討)

ドローン活用に必要な体制の検討

ドローンの活用にあたって必要な役割とケイパビリティを踏まえ、体制の在り方を検討します。

体制を構築する初期段階においては、ドローンを取り巻く技術的および法規的環境や、企業内のケイパビリティなどの内外の将来的な変化を想定する必要があります。そのうえで要員計画を策定し、実態に合わせて定期的に計画を見直していくことが求められます。また、自社でのケイパビリティ確保が困難である場合は、外部委託を検討する必要があります。

※外部委託先の選定については「ドローンベンダー選定の要諦」を参照

必要なケイパビリティが組織に不足している場合、以下のような課題が生じる可能性があるため、注意が必要です。

例1)
事業企画者に事業構想・事業計画のケイパビリティが不足している場合、検討事項の網羅性、内容の蓋然性、事業の採算性が担保できないことが想定され、事業推進に課題が生じる可能性があります。

特に、物流領域などにおいてドローンを活用する場合は採算性が課題となるケースが多く、事業構想・事業計画のケイパビリティが重要です。

例2)
運航管理者にリスク管理のケイパビリティが不足している場合、事故などの不測の事態に適切に対応できない可能性があります。ドローン特有のリスクを見極めたうえで、緊急事態における対応能力向上のため、操縦者と運航管理者、補助者との連携など実践的な訓練を計画し、実行することが肝要です。

組織の人的リソースの状況によっては複数の役割を兼任させることもあり得ますが、その場合も求められるケイパビリティを満たす必要があります。

人材開発・育成計画の策定

企業内のドローン活用に係る人材育成計画・キャリアパスを検討します。

  • 目指すケイパビリティと現状のレベルとのギャップを把握します
  • ケイパビリティのギャップの解消に向けた育成施策を検討します
  • キャリアパスイメージを検討します

キャリアパスをサポートする研修・訓練の充実は人材定着の観点から特に重要であり、企業の事業に合わせて検討していく必要があります。

研修・訓練の検討において重要なポイントは3つあります。

  1. 安全性を確保するための育成
    a. 実地での研修・訓練機会をできる限り提供すること
    b. 実地研修を受講するだけでなく、操作・運航管理のスキル定着を確認するスキームも組み込むこと
    c. ドローンを安全に活用するスキルに応じた人事評価制度を設計・導入すること
  2. 飛行レベル・飛行エリアに応じた研修・訓練内容の見直し
    a. 目視内飛行のケースはプロポ・GCSの操作の研修・訓練が中心となるが、目視外飛行のケースは運航管理システムの扱いも研修に組み込むこと
    b. 飛行エリアにより想定リスクが異なるため、リスクマネジメントの研修内容を必要に応じて見直すこと
  3. 研修・訓練の取り組み状況や評価結果を管理するシステムの導入
    a. スキル評価などの結果については、ドローンを活用する現場担当者に共有をすること

業務委託管理の重要性

ドローンの活用に必要な体制の構築にあたり、外部委託を行う場合は委託先を選定するだけでなく、選定した委託先を適切に管理することも重要です。

外部委託先を管理する必要があるという意識が欠如し、外部委託先への依存度が高くなると、該当業務のブラックボックス化が進み、結果として内部へのノウハウの蓄積ができず、品質に見合ったコストで調達できているかどうかわからなくなるなどの弊害が生じる可能性があります。

外部委託先を適切に管理するためのポイントは以下の通りです。

委託先の管理体制

委託先管理をする運航管理者などの担当者は、前述の幅広いスキルを必要に応じて習得しながら、委託先を適切に管理する意識を持つ必要があります。
また、委託先との強固な信頼関係を構築するために定期的にコミュニケーションをとり、事業を推進する一員である意識を持たせることも重要です。

委託先の管理ルール

外部委託する業務に適用可能かどうか、必要に応じて見直しを行います。外部委託管理に関する一般的なルールが既に社内にあったとしても、ドローン業務に関する特性が考慮されていない場合は形骸化する可能性があります。

委託先の業務管理・評価

ドローン関連の業務をベンダーに丸投げすべきではありません。委託した業務を企業側の担当者が理解し、業務委託先の業務を管理し、評価することを意識してください。

執筆者

山崎 徹

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email


その他のインサイト/ニュース

6 results
Loading...
Loading...
We unite expertise and tech so you can outthink, outpace and outperform
See how