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2021-04-20
前編では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大をきっかけに、企業や組織において従前のオペレーションとリモートワーク環境下でのオペレーションの間に「歪み」が生じていること、歪みを特定する手法としてプロセスマイニングが有効であることを紹介しました。後編では、歪みを補整する際に着目すべきポイントと、プロセスマイニングにより可視化された結果をもとにした分析の例を紹介します。
プロセスマイニングにより可視化されたオペレーション上の課題を分析し、業務効率性の視点から応急処置を施すことはもちろん重要です。しかしそれだけでなく、適応力・事業継続の思想(危機や変化のタイミングにおける業務継続レベルや業務品質の確保)を組み込んだ業務再設計・見直しまでを行うことが、ポストコロナ時代を見据えると非常に意義のある取り組みになると筆者は考えます。特に、「リモートワークにより表面化した歪み」は、これまでオペレーションに内在していた事業継続力の脆弱性があぶり出されたものと捉えることができ、今回の事象を教訓として生かす意味でも、今手を打つべき重要性が非常に高いと言えます。その点、プロセスマイニングは人別の業務の内容や処理量、所要時間といった、人的リソースを切り口とした現状・変化を可視化することができるため、業務の再設計や見直しを進める上での客観的な材料として有効に機能するでしょう。
加えて、前編で述べたとおり、可視化範囲外の業務にも目を向けることがとても重要です。例えば、IT外処理を表計算ソフトで行っている場合、使い勝手がよい反面、人別にブラックボックス化(見えない化)されやすく、かつ自由度の高さからオペレーション上のミスも生じやすい特性があるため、事業継続の観点から改善の必要性が高いものと考えられます。ここは、プロセスマイニングによる可視化結果を入り口にして的を絞りつつ、可視化範囲、非可視化範囲の合わせ技で分析を加えていくことが肝要と考えます。
以下は、可視化された結果をもとにした分析の例です。
可視化した結果、人的リソースに偏りがある業務(特定の社員への業務の偏り)が特定されたとします。これは、業務の難易度から来る属人化や受け取り手の不足といった状況が起因していると考えられますが、事業継続の観点から見ると「事業継続上のクリティカルパス」と捉えることができます。一部の業務手続きが人的リソースに起因してボトルネックとなり、変化が発現した際の事業継続(継続可否・継続レベル/操業度)に影響を与えるからです。そのため、そのような業務を一つ一つ丁寧に紐解きながら、ナレッジ・ノウハウの共有に向けた対応が必要と考えられます。
デリバティブ決算処理を一人の担当者が担う体制を組んでいるが、人事異動/担当替えのたびに継承/改良されてきた表計算ソフトをベースに処理を行っているため、一つ一つの処理の意味・必要性を理解している担当者が限られており、リモートワークにおける負荷分散/役割分担/処理の日程変更を検討する際の足かせに。
営業部門において、書類の事務処理を紙ベースからPDFでの管理に急きょ変更したものの、書類の受取先である事務部門で、PDF内の情報を手作業でシステムに入力する手間が追加で発生するといった事務負担のしわ寄せが生じた。また、リモートワークのみでは事務処理が追い付かず、出社対応を組み合わせながら継続せざるを得なくなり、結果的に事務部門に業務負荷が集中することに。
コロナ禍以前と比較して所要時間が減少した業務(判断/意思決定)が特定されたとします。一見すると喜ばしいことかもしれませんが、変化への対応法を検討するのに十分な時間を確保できず、「拙速な判断」を行ってしまっている可能性があります。すなわち、変化が発現した場合に業務品質の低下を招くウィークポイントとなる恐れがあると言えます。事業継続力の観点から、判断・分析に必要な時間の確保、判断・分析に必要なインプットの適時性・十分性の確保といった対応が必要です。
また、従前のオペレーションと比較して所要時間が増加した業務が特定されたとします。これは歪みの中でも自覚症状として捉えやすく、すでに業務効率化の範疇で応急処置がなされているかもしれません。ただし、変化が起きた場合でも従前のやり方に固執してしまって所要時間が増加しているものについては、代替戦略や工夫・学習能力を組織的に向上させていくことが事業継続戦略上、重要となります。
多種多様な複数の書類を見ながら分析/判断を行わなければならない決算業務においては、取り扱う書類が、紙面を前提としたレイアウト(例:A3横書きで数字と説明でびっしり)となっているものが多い。それらは画面上での一覧性に乏しく、他部門との連携/確認や紙面のみで保管されている過去資料の閲覧の必要性もあることから、出社対応が多くなり、リモートワークと出社の併用が決算のリードタイムを増加させてしまう。
印刷した紙面上で確認/検証を行っていた承認行為について、リモートワークにより画面上で電子的に認証を行うこととなったが、紙面上で行っていた時と同様の検算や検算結果の記録の保存、これまでのフォームへの固執から、確認/検証に費やす作業時間が膨れ上がることに。結果的に形式的な確認/検証とせざるを得ず承認行為が形骸化してしまい、手戻りが頻発して総所要時間が増加することに。
オペレーションにおける歪みの補整に際しては、業務の効率性はもとより、そこに事業継続の視点を加えることで、事業全体の継続方針や部門のミッションに立ち戻った議論を可能とします。リモートワークによって、組織への帰属意識の低下や、所属する意味の希薄化(遠心力の高まり)が見受けられる昨今、従業員がこれまで司ってきたオペレーションを尊重しながらも、時代の変化に応じて適した形へと変革していくことは、そうした状況への処方せんとしても期待することができるでしょう。
今回のパンデミックに端を発した業務改革の機運に対して、DXの重要性が多く取りざたされています。しかし付け焼き刃的にデジタルソリューションを導入することがゴールになってしまっては、自社に適したオペレーション変革の在り方を見失ってしまい、後々の軌道修正が難しくなることが考えられます。今こそ、事業継続の視点から足元を見つめ直し、業務の再設計を進めていくタイミングと言えるでしょう。
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