「営業秘密」の保護と利活用

第1回:競争優位性の維持向上に不可欠な営業秘密保護対応

  • 2025-05-29

現代のビジネス環境において、情報は極めて重要な資産であり、企業の競争優位性を支える基盤となっています。「営業秘密」は、企業が持つ独自のノウハウや技術情報、顧客リストなど、事業運営に不可欠な情報を指しますが、その情報保護はしばしば軽視される傾向にあります。本インサイトシリーズでは、複数回にわたり、営業秘密の重要性と課題、そして効果的な対策、営業秘密の利活用などについて解説します。

Section3: 営業秘密保護は経営課題としてとらえるべき

営業秘密はいったん漏えいしてしまうと、取り戻すことはできず、営業秘密の構成要素である“非公知性”が失われてしまい、競合他社に競争優位性の追随を許してしまうなど、直接的な経済的損失および間接的な影響を企業にもたらします(図表4)。

図表4:営業秘密漏えいに伴う影響

営業秘密を競合会社に漏えいさせた訴訟において、損害賠償請求額が億単位となる場合や、民事・刑事で訴訟となる事例もあります。さらに漏えいが事件として報道されてしまうと、株価が大きく低下するなどの影響も考えられます。

このように、企業にとって営業秘密の漏えいは、長年かけて築き上げた競争力の源泉や企業価値を一瞬にして喪失しかねない深刻な経営課題となりうるものです。それにもかかわらず、多くの企業では営業秘密保護については経営課題として認識されておらず、明確な戦略や予算配分が不足しているケースが頻繁に見受けられます。これを改善するためには、経営層レベルで営業秘密保護をリスク管理の一環として位置付けることが重要なのです。

まとめ

営業秘密は企業の競争優位性を支える重要な資産であり、その保護は不可欠です。サイバーセキュリティや個人情報保護に注力する一方で、営業秘密保護が軽視されることが多く、特に内部不正による情報漏えいが深刻なリスクとなっています。

営業秘密の漏えいは、企業の競争力を大きく損なう可能性があるため、経営層はこれをリスク管理の一環として重視し、戦略的に対応することが求められます。企業全体で一貫した保護対策を講じることで、競争優位性を維持し、持続可能な成長を実現することができます。

PwCでは、企業が直面する多様なリスクに対応するためのコンサルティングサービスを提供しています。営業秘密保護についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者

藤田 恭史

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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橘 了道

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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