VRゴーグルで実現するハイブリットワーク時代の新しいコミュニケーション―PwCあらた有限責任監査法人PwC入所式の事例―

2023-04-24

PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)では、コロナ禍における感染症対策や移動制限が緩和された現在でも多くの職員がハイブリッドワークを利用し、通常業務における会議はもちろんのこと、研修や新規入所者のオリエンテーション、社内イベントの大半はオンラインで開催されています。

現在、オンラインでのコミュニケーション手段としては、PC、スマートフォン、タブレットなどを活用したウェブ会議が広く浸透しています。PwCあらたは2022年12月、前年に引き続いてメタバース(仮想空間)上で入所式を行ったのですが、今回は初めての試みとして全新入職員にVRゴーグルを送付した上で開催しました。

今回はその実現に向けた取り組みや、コミュニケーションツールとしてのVRゴーグルの可能性について紹介します。

背景、問題(課題)

在宅勤務には、通勤・移動時間を短縮することでワークライフバランスを保ちやすく個人の作業に集中できるという利点もありますが、会議外において職員同士が偶発的に接する機会や会話、雑談が減るため、従来の「つながり」を感じられないケースも見受けられました。

新入職員にとっては入所以来1度も対面で会ったことのないメンバーや上司と働くこととなり、「分からないことを気軽に聞くことができない」などの課題あり、一方の既存職員にとっても「新入職員が何に困っているかをキャッチしづらい」などの課題がありました。結果として不十分なオンボーディング*プロセスとなり、新入職員のエンゲージメントが下がる可能性があります。

そこで、デジタル時代に向けたテクノロジーの導入、カルチャーの醸成を推進しているアシュアランス・イノベーション&テクノロジー部(AIT)は、ハイブリッドワークを推し進める組織において、どのようにデジタルの力を活用すればオンボーディング中の新人職員の心理的負担を緩和し、既存職員のエンゲージメント意識を醸成できるかを研究することとなりました。

そのような中、2022年12月の入所式は新型コロナウイルス感染症の第8波が懸念される状況下にあったこともあり、前年同様リモートで実施することが早々に決定しました。

2021年にもメタバース上での入所式を開催していたことから、今回も入所式の演出や空間構築はでき上がっていました。そして今回は、それぞれの自宅にいながらもPwCあらたの一員となったことと、一緒に入所した仲間がいることをよりリアルに体感してもらえるよう、そして何より「温かく迎え入れられている」と感じてもらえるよう、全新入職員にVRゴーグルを装着してメタバース入所式に参加してもらうこととしました。

しかし、100人を超える新入職員が参加するメタバース入所式にVRゴーグルという新たな技術を導入するにあたり、以下の表のとおり、いくつかの課題がありました。

それぞれの課題を解決するためには、人事、総務、IT、法務などの関係部署が一体となって対応する必要がありました。

* 新入職員が早期にPwCあらたに馴染み、パフォーマンスを発揮できるようになるための取り組み

課題項目

課題内容

課題への対応

VRゴーグル技術の習得

新入職員全員に対して、入所してから入所式までの限られた時間で、VRゴーグルの使い方を伝えなければならず、説明・サポートの不足により混乱が生じるリスクがあった

充実したガイドラインを整備すると同時に、部内にVRゴーグルチャンピオンを育て、サポート体制を構築した

健康面のフォロー

VRゴーグルは今まで経験したことない体験ができる一方で、VR酔いなど、健康への影響が出るリスクがあった

PCからの参加といったVRゴーグル以外の参加方法を用意・周知することにより、体調への影響が生じるリスクがある時は、VRゴーグルの利用を中断できる環境を用意した

セキュリティリスク対応

IT部門が集中管理できず、VRゴーグルからPwCの機密情報が漏れるというセキュリティ上のリスクがあった

個人情報の取り扱いなどの情報セキュリティルールを整備し、管理オペレーションの整備を通じた堅牢な情報セキュリティ管理体制を整備した

当日の様子

入所式当日は運営チームが想定していた以上にスムーズに進行し、ほとんどの新入職員がVRゴーグルを使用してメタバース入所式に参加することができました。

メタバース入所式の会場に足を踏み入れた新入職員からは次々と歓声が上がり、VRゴーグル越しに見える新しい入所式を実現できたという手応えを感じた瞬間でした。

今回のメタバース入所式のテーマは“植物”。“種”となった新入職員は水路や葉っぱの道をくぐり抜け、たどり着いた先の華やかな入所式本会場にて同期やリーダー達に会えるという空間を演出しました。

入所式終了後、執行役が新入職員と同様にVRゴーグルを使用してメタバース上に登場し、新入職員と交流する機会を用意しました。突然表れた執行役のアバターに、新入職員のアバター達が押し寄せ、握手やハグをしたり、ハイタッチを求めたりする列ができました。実世界で執行役たちとハグをするのはなかなか勇気がいることですが、アバターをフィルターにしたことで心理的な障壁が下がり、場所や立場を超えた新しいコミュニケーションを産み出せました。

参加者からのコメント(抜粋)

  • メタバース入所式というとても現代的なイベントに参加でき、2度とない素晴らしい経験になった。

  • とても新鮮で、新しい取り組みを積極的に行うPwCあらたならではの一面が見えたような気がする。

  • 入所式終了後に執行役の方々とメタバース空間で握手することができ、遠い存在だと思っていた役員を身近に感じて、改めて自分がPwCあらたの一員になったということを実感できた。

  • 執行役の方々が、メタバースでの入所式を楽しんでいらっしゃる様子が印象的だった。

効果・結論(今後の予定)

メタバース入所式を終え、新入職員の反応を検証したところ、組織やリーダー達との一体感を実感してくれたようで、エンゲージメントを醸成することができました。また、先端テクノロジーを活用し、新しい取り組みに積極的にチャレンジするというPwCあらたの特長を体験してもらうこともでき、今回の取り組みには運営チームが期待していた以上の効果がありました。

VRゴーグルを標準コミュニケーションのインフラとして利用するためには、ゴーグルの軽量化、VR酔いへの対策、情報セキュリティの強化、既存のITインフラとの統合など、さまざまな課題があります。しかし、外部ベンダーとも連携しながら課題解決を図り、一体感を感じられるように今後もVRゴーグルの導入を進めていく予定です。

これからもハイブリッドワークを推し進める中で、多様な働き方をする人たちに組織に所属する一体感を感じてもらおうと、VRゴーグルを活用したメタバース入所式を実施したことは有益だったと考えています。今後もPwCあらたはハイブリットワークを採用する組織における人財育成やネットワーキングの課題を解決すべく、従業員エンゲージメント向上のためのテクノロジー活用を模索していきます。

執筆者

荻野 創平

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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高 潤玉

マネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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